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おせち料理を介護食で提供するためのポイント

2023/01/11

私たちの文化に根付いたゴールデンウィークやクリスマス、近年ではハロウィンといった季節イベント。年に一度しかない特別なイベントはつい気分が高揚してしまいますよね。
中でも多くの日本人に深く根付いた季節のイベントは、やはりお正月ではないでしょうか。
近年では年末年始にかけて休むことなく営業するお店もあり、ややなじみが薄れているお正月の風物詩に「おせち料理」があります。
若い世代ほどおせち料理って一体何?と思われる方も多いのでは。
高齢者の世代には「おせち料理」はお正月を代表する非常に身近な存在です。しかし食事の介護を必要とする高齢者は食事のADL低下により、「おせち料理」を楽しみにくくなっているのが現状といえます。
こで今回は、食事のADLが低下した状態でも介護食としておせち料理を楽しむためには、食材をどのように工夫すれば良いか食事のポイントについて紹介します。介護施設や在宅介護の現場でも高齢者にお正月らしい気分を味わってもらうためにぜひご参考にしてください。

介護を必要とする高齢者は食事が大きな楽しみ

一般に高齢者は、年齢を重ねるごとに老化の影響を強く受けるようになります。

歩く機会が少なくなることで、同じ空間での生活が増え、外部の刺激が少なくなる中で高齢者の多くの方が「何よりもの楽しみ」なもののひとつが食事です。食事摂取には五感に刺激を与え、季節を感じることができます。

高齢者ほどなじみの深いお正月の「おせち料理」

「おせち料理」と聞けば、私たちは何をイメージするでしょうか? 恥ずかしながら私は小さな頃からおせち料理というものにあまり馴染みがなく「お重に入ったモノ」という印象しかありませんでした。近年では有名店や老舗料亭が販売する豪華な食事という印象を持つ方も多いのではないでしょうか。

しかし本来のおせち料理は漢字で「御節」と書き、奈良時代に季節の節目を祝い神々を祀る五節供の行事として中国から伝わり3月3日や5月5日といった節句のお祝いに食べる料理をいい、それが次第に1月1日の元旦の節句を象徴する料理になったとみられています。(所説あります)

使う料理や食材に様々な縁起物としての理由があり、まさに新年の始まりを祝う料理として私たちの文化に深く根付いてきました。

数十年前まで、年末年始は皆自宅で過ごすのが慣例でお店も営業していないのが一般的であったため、おせち料理を年末から準備し正月の間にそれを少しずつ食べるのが当たり前の時代が現在の高齢者が過ごしてきた時代であり、高齢者にとっておせち料理とは正月という季節を強く想起させるなじみの深い行事であり、長年食べ慣れた思い出深い食事である方が多いのです。

おせち料理は高齢者には不向き?

高齢者は老化の影響により食事に関するADLが低下するほか、健康上の理由からも控えることが望ましい料理が多くなりがちです。それにより楽しみである食事の満足感を十分に味わえなくなる状態にも陥り、生活への意欲が低下することがしばしばあります。

おせち料理はお正月の間の数日間に渡って食べられるように作るものであることからも高齢者にとっては不適切ともいえる側面もあります。

塩分濃度が高いものが多い

おせち料理で使われる食材、作られる料理には一年の幸せを願う縁起物としての意味合いが強く見られますが、傾向としては塩分濃度が高い食材、料理が目立ちます。

数の子、かまぼこ、田作り、昆布巻き、伊達巻きなど、おせち料理を代表するといっても過言ではないラインナップには正月中の保存食としての意味合いもあり醤油や塩、砂糖を多く含むものがほとんどで、高齢者が食べるには適していません。

硬い食材が多い

おせち料理には介護食にはあまり適さない硬さの食材が多く使われています。

高齢者は噛む力が衰えた方や、歯が不安定な方がしばしばおられ、通常のおせち料理を食べると噛み切れない、硬すぎて歯が折れるなどの事故を起こすリスクが考えられます

特に筑前煮に使われているレンコンやゴボウといった根菜、手綱こんにゃくで使われるこんにゃくが噛み切れないことからのトラブルに繋がります。

誤嚥のリスクがある

おせち料理の定番メニューには、誤嚥のリスクになる食材が多く含まれています。高齢者が誤嚥しやすくなる原因は料理の水分含有量が少ないこと、食材が小さいことで噛んでも食塊を形成しにくいなどが考えられます。

おせち料理には伊達巻き、焼き魚、栗きんとんなど食材そのものの水分含有量が少なく噛んでいるうちに口腔内がパサパサしやすいものや、田作り、黒豆、数の子のように食材のひとつひとつが小さいため噛んでも食塊になりにくいものがあります。

高齢者がこれらを食べると嚥下が難しくなるだけでなく誤嚥のリスクは飛躍的に高まると考えてもよいでしょう。

介護を必要とする方におせち料理を提供するメリット

ここまでの説明を見ると、介護を必要とする高齢者にはおせち料理は提供しない方が安全で確実だと思われるでしょう。

確かに安全面で考えると提供しないことが最も安全ですが、それは日常の食事でも同じことで、どのような食事でも誤嚥のリスクは付きものです。しかし高齢者の健康のため、生活を楽しんでもらうため、介護職員は食事によって生じるリスクに十分配慮しながら提供しています。

では、おせち料理を高齢者に提供した場合にメリットについて考えてみましょう。

おせち料理は先述の通りお正月を象徴する料理であり、お正月は私たち日本人にとってピンと少し背筋が伸びるような特別な日です。逆にお正月だからこそのんびりという気分になる方もいるかもしれません。仮に元旦にいつもと同じ料理を提供すればそこに特別感は生まれません。例えば鏡餅を飾るなどの正月飾りを施す、お正月ならではのテレビ番組を視聴するなど、お正月っぽさを出すことは十分可能でしょうが、「お正月ならではの料理が出る」に勝るお正月感を出せる演出は他にないでしょう。

介護施設や在宅介護の現場でもお正月ならではのおせち料理を高齢者に提供することは高齢者に季節感を提供するだけに留まらず、「今日はお正月だ」という強烈な刺激のひとつになります。高齢者を介護する現場では、介護を必要とする方々だからこそおせち料理を食べてもらえるよう工夫する意識が必要といえるでしょう。

高齢者が食べやすいおせち料理のポイント

では、介護を必要とする高齢者が美味しく、かつ安全におせち料理を食べられるように介護職員が工夫したいポイントをご紹介します。

塩分濃度をおさえる工夫

介護が必要な高齢者でも安全におせち料理を楽しむために最も重要なことは、塩分濃度を減らすことです。 おせち料理を高齢者に提供するとはいっても、従来のおせちのように連日食べるものではなく、元旦や三が日の間に提供することで、お正月らしさを味わってもらうことがもっとも大切です。ですので保存が効く等は考えずに、高齢者が食べやすい塩分濃度を第一に考えるべきです。

数の子の場合はしっかりと塩抜きをし、かつお節をまぶして風味を良くするなど、塩や砂糖に頼らない味付けの方法を工夫しましょう。

食材を柔らかくする工夫

レンコンやゴボウといった根菜は繊維質豊富で、高齢者の健康のためにも積極的に摂取していただきたい食材です。おせち料理では筑前煮に多く使われています。ですが介護食としては「硬い」を理由に避けられがちな食材です。

もちろん高齢者が噛み切れないほどの硬さは避けるべきですが、レンコンやゴボウの硬さは調理の工夫で柔らかくすることが可能です。
ひとつは、下茹でする時間を多めにとることです。レンコンやゴボウは、変色防止に酢を加えた湯で2~4分ほど下茹でするのが一般的です。この時間はシャキシャキとした食感を失わないようにするためですが、咀嚼に不安がある高齢者が食べるものとなるとやはり柔らかい方が良いでしょう。下茹での時間を5~7分程度とると高齢者でも食べやすい硬さになりますし、程よい硬さは噛むと脳への刺激にもなります。ある程度の硬さが欲しい時は、それぞれを食材のサイズを小さめにすることです。レンコンは薄切りに、ゴボウはひと口大よりも気持ち小さく刻むことで食感はそのままに高齢者でも嚙み切りやすく仕上がるでしょう。

誤嚥を防ぐ工夫

水分含有量が少ない食材は、唾液量の少ない高齢者には食塊が形成しづらく、誤嚥の大きなリスクになります。 焼き魚やかまぼこ、こんにゃく、田作りなどは高齢者の嚥下状態に合わせて、誤嚥を防ぐための手立てが必要です。この際に最もしてはならないことは「小さく刻むこと」です。水分の少ない食材をいくら小さく刻んだところで水分量は増えませんし、なおさらに食塊を形成しづらくします。余計に誤嚥リスクは高まり、誤嚥を防ぐ方法としてはまったく適していません。

ではどう水分量を増やせばよいかですが、おすすめなのは餡をかけることです。おせち料理に合ったお吸い物やダシを水溶き片栗粉でトロミをつければ手軽に餡が完成します。しかし水溶き片栗粉はデンプン質のため唾液に含まれている酵素により分解されてしまい、時間とともにトロミが失われます。

高齢者の嚥下状態によっては水分そのものを誤嚥することにも繋がりますので用いる際は注意しましょう。なるべくトロミを維持したい場合は水溶き片栗粉ではなく、市販のトロミ剤を活用するとよいでしょう。ダシの水気にほどよく粘りを与え、食材ともよくなじむことで食べやすく嚥下しやすい状態を作れます。 咀嚼、嚥下が可能な高齢者の場合は必要以上に小さく刻む、ミキサーにかけるなどは最後の手段と考え、なるべく食感や喉越しを楽しめるよう最大限に工夫しましょう。

レシピの一例

ここで、おせちの特別感を演出しやすい料理を一部紹介します。お正月も通常通りの食事であるならば、一品添えるだけでもお正月らしい雰囲気を味わうことに役立つでしょう。

嚥下しやすい伊達巻き

【材料】(1人前)
  • 卵    1個
  • はんぺん 20g
  • 砂糖   小さじ1
  • みりん  小さじ1
  • 白だし  少々
  • 水    大さじ1
【作り方】
  • ① 材料をすべてミキサーにかける。ボウルに入れブレンダーにかけてもよい。
  • ② フライパンに油を敷き中火で予熱。
  • ③ 混ぜた生地をフライパンに流し入れてフタをし、弱火で15分ほど蒸し焼きにする。
  • ④ 焼きあがったら巻きすで巻き、荒熱が取れたら冷蔵庫で冷やす。

ゆずの香る紅白なます

【材料】(1人前)
  • 大根 50g
  • 人参 10g
  • ゆず 少々
  • 酢  小さじ1
  • 砂糖 小さじ1
  • 塩  少々
【作り方】
  • ① 大根、人参は皮を剥き千切りにする。ボウルに入れ塩を軽く振り、ラップをかけレンジで1分加熱する。荒熱を取ったあと水気をよく絞る。
  • ② 酢、砂糖、塩を器に入れレンジで30秒ほど加熱。調味液がなじむと共に酢の刺激が柔らかくなる。
  • ③ 大根、人参に調味液を合わせ、冷蔵庫で冷やす。
  • ④ 盛り付け時に提供時にゆずの皮を削り入れると風味が立つ。

レトルト介護食を活用するのも

高齢者の食事を楽しい時間にするために介護職員は様々な工夫を凝らしていますが、人手不足等でどうしても調理の時間が取れない!という事業所もあることでしょう。それでもお正月くらいは高齢者に特別感を提供してあげたい…と考えるのであれば、レトルトを活用するのもひとつの手段です。レトルトといっても介護食として開発されたものを用いることで噛みやすさ、飲み込みやすさ共に高齢者の嚥下状態に配慮されていますので安心して活用できます。

多くのメーカーから出されている筑前煮をそのままお出しするも良し、炊くのに手間がかかる黒豆を、金時豆で代用するも良し。介護食を活用するというアイディア次第で特別な食事に時間を割けない介護事業所でもお正月の特別感を演出することは可能です。

NDソフトウェアではレトルト介護食として「UAA食品 美味しい防災食・非常食」をご用意しております。UAAとは「ウルトラ・アンチ・エイジング」のことで、実に5年以上もの長期保存を可能にした防災食、非常食としてご活用いただけます。高齢者様の食事ADLに合わせてやわらか食、ムース食など多様なラインナップを取り揃えているほか、カロリーや塩分に配慮したカロリーコントロール食もご用意しておりますので多くのご利用者様にお食べいただくことが可能です。

常温でも美味しく食べられることを大切にしておりますので、調理の際の手間はほとんどかかりません。筑前煮や金時豆、米粉を使用したドーナツ粉など様々なメニューをご用意しておりますので、煮しめや伊達巻きの代わりやアレンジとしても活用可能です。

おせち料理等の特別なお食事を提供したい!、長期保存が可能なレトルト食を備えておきたいという事業所様はぜひお気軽にご相談ください。

▼UAA食品 美味しい防災食・非常食

まとめ

時代背景は移り変わっていますが、お正月が1年で特別な日であることは私たち皆共通ではないでしょうか。 高齢者のお正月にとってなじみの深かったおせち料理を提供することは、食事を通してお正月を実感していただくことに役立てるとともに、楽しく食事をする、お正月の思い出を話すなど心身に良い影響を与えるきっかけになるかもしれません。

高齢者の食事の安全には配慮した上で、積極的におせち料理の提供を考えてみましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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