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NDSコラム

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災害時の人手不足に!
介護施設が知っておきたいメンタルサポート

2020/08/17

2020年7月に熊本県を中心に大きな豪雨被害をもたらした「令和2年7月豪雨」による災害はまだ記憶に新しく、まだまだ復興はこれからです。被災された皆様におかれましては心よりお見舞い申し上げるとともに一日も早い復興をお祈り申し上げます。介護施設でも利用者が水害により亡くなられるなど筆舌に尽くしがたい被害が出ました。心よりご冥福をお祈りいたします。

2011年の東日本大震災の際に指摘されましたが、災害後の被災地は介護施設をはじめ様々な業種が人手不足に陥ります。職員が減ってしまう、他業種と人材の取り合いになってしまうなどの理由で、介護事業所はさらなる人材不足に悩まされています。さらには災害という非常時への対応で介護職員のモチベーションの低下に繋がることが指摘されており、メンタルへのダメージからうつ、離職に至ってしまうことも懸念されています。介護施設や事業所で働く職員には災害時には適切なメンタルサポートが重要です。今回は介護施設、事業所で働く職員への災害時に必要なメンタルサポートについて解説します。  

災害時、介護施設は人手不足に

介護施設や介護事業所は慢性的な人手不足が常に悩みとして挙げられています。それが災害発生時にはさらに人手が減ってしまう傾向があります。理由としては大きく次の2つが考えられます。

被災した職員が戻ってこない

災害が発生し、被災してしまった職員が他の地域に避難するなど職場のある地域を離れることを余儀なくされ、戻ってこなくなることがあります。結果、介護施設や事業所は人手不足になり業務の負担は増してしまうことになります。

建築特需で人材の取り合いになる

災害から復興に向けて動き出す際、建物の復旧への需要が爆発的に高まります。これを建築特需といいます。建物やインフラを復旧させていくには大勢の人員が必要になるため、建築業界やその他の業界においても人材不足となり、人材の取り合いが発生してしまいます。結果として介護業界の人材不足に拍車がかかることになってしまうのです。  

被災時の非常時対応が介護職の大きな負担になる

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被災地の介護施設、事業所はさらなる人手不足により業務の負担が増すことで職員への心身的負担も増すことが懸念されていますが、さらに被災時の非常事態への対応が続くことにより介護職の精神的負担が大きくなってしまうことが指摘されています。
入所型の介護施設では、被災時に電気や水道、土砂崩れによる道路の分断などライフラインが途切れた場合、利用者の食事や飲料水の確保や生活用水の確保が緊急の課題として挙がってきます。限られた資源の中で利用者へのケアを提供するなど非常に心身に負担のかかる環境にさらされてしまいます。在宅介護サービスの介護事業所おいては利用者の安否確認やサービス調整なども必要になります。また双方ともに人手不足の中緊急事態への対応を行うため場合によっては事業所に泊まり込む形となり何日も家に帰ることができないまま対応を続けていくケースも見られます。
こうした緊急事態への対応が長期化すると職員に強いストレスがかかり、その結果大きな精神的負担がかかってしまうといわれています。また長期化した非常時の対応が復旧し通常業務へと戻った際、今まで張りつめていた緊張の糸が急激に切れることで無気力状態に繋がる例もあることが指摘されています。こういった例は災害が引き金となりますので介護施設や事業所内だけで解決できる問題ではありません。  

大きな心身の負担が介護離職に繋がる

介護施設や介護事業所の職員は被災時の人手不足の中、緊急事態の対応で強いストレスがかかり大きな心身の負担があると指摘されました。心と体に大きな負担が継続的にかかってしまうことで介護の仕事を続けていく意欲を失わせてしまうだけでなく、バーンアウトというすべてにおいて無気力な状態になってしまうほか、うつ状態に陥ってしまうこともあります。その逆に精神的な高揚感が続いてしまい興奮状態が抑えられなくなるなど精神的に追い詰められる環境になってしまいます。このような精神機能の低下を招くと最終的には介護の仕事を辞めてしまうことに繋がり、さらなる人手不足に陥ってしまうのです。  

介護離職防止には防災準備とメンタルサポートが重要

介護施設、介護事業所で働く職員の心身の安定を保ち離職を防いでいくには災害が発生した場合を想定した事前の準備がまず重要です。緊急事態への対応で心身に大きな負担がかかることの一つにライフラインの確保や安否確認があると先述しましたが、前もって対策を講じ、十分な備えをしておくことでいざという時に慌てることなくある程度心に余裕を持って対応することができます。
しかし災害時の対応は職員の心に強い負荷がかかる状態であることは変わりません。介護施設、介護事業所は職員が過酷な状態の中を働いているという認識を持ち、メンタルへのダメージを注意深く把握する必要があります。少しでも職員の心のケアを図ることができるよう対策したうえでメンタルケアを実施し、心身の安定を保つことができるようサポートすることが重要です。  

災害時に備えて介護施設事業所で備えておきたいこととは?

いつ起こるか分からない災害に備えて介護施設、事業所が事前に備えておきたいことは 以下のことが一例として挙げられます。  

食事、飲用水の確保

ライフラインが途切れた場合、電気、水道、ガスなどが使えなくなるおそれがあります。しかしそのような状態であったとしても利用者の健康を守るためには食事と水分が必須です。これらの準備が不十分なギリギリの状態での対応は職員の心の余裕を失くすことに繋がり、メンタルの不調を招きやすくなります。ライフラインが途切れたことを想定して3日~1週間程度は維持できるだけの食事と飲用水を確保しておくことで職員のメンタルへのダメージを軽減することができます。UAA食品美味しい防災食・非常食なら加熱不要で開封後、常温のままおいしく食べられるため、非常時に職員の大きな負担軽減に繋がります。さらに5年以上の長期保存が可能なため災害時に備えた食料の備蓄として最適です。  

ハザードマップの確認、安否確認対象者を把握しておく

災害発生時、事前に避難誘導先の確認や安否確認を行わなくてはならない利用者を把握しておくことが重要です。事前の準備が不十分な場合「対応はこれでいいのかわからない」「誰を確認すればいいのかわからない」といった状態で対応に追われることになります。この「わからない」という不安が職員のメンタルの不調を招きやすくなります。事前に確認しておくことで迅速な対応ができるだけでなく、やるべきことが明確になっていることが職員の安心感に繋がるのです。  

避難訓練や緊急対応など十分な研修を行っておく

先述した「わからない」という不安な心理状態は職員のメンタルに大きなダメージを与えます。さらに災害という非常事態は不慣れであることが当然であり、十分な研修を行うなどして事前準備をしておかないと職員はパニック状態に陥ってしまうこともあります。災害など非常事態を想定した訓練、研修を行っておくことで職員の行動指針ができ、心の安定を保ちやすくなります。  

介護施設、介護事業所が実施したい職員へのメンタルサポートとは?

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災害発生時の非常事態に対応する職員へのメンタルサポートは非常に重要です。基本的な対応としては管理職が職員の状態を注意深く観察し、対応するラインケアが必要ですが、事業所の規模によっては管理職がすべて把握するのは困難な場合もあります。その際でも職責者、リーダーなどの役職にある職員が状態の観察、把握に努め、管理職に報告相談を行うようにしましょう。もちろん管理職は職責者、リーダーの状態の把握に努めることが重要です。災害時におけるメンタルサポートは介護施設、事業所内だけでは解決が困難なことも多いです。専門医によるメンタルサポート、自治体への相談なども利用しつつ介護職だけでなくリーダーや職責者、管理者の負担を軽減させていくことが大切です。
強いストレスから心身を守るためにはストレス源の除去が必要な対応となりますが、災害による被災時はそれ自体がストレス源であり簡単に除去できるものではありません。だからといって「しょうがない」で済ませてしまうのはなく、ストレス源が分かっている分ストレス緩和についても話しやすいと前向きに捉えて対応にあたりましょう。  

休息をしっかり確保する

災害発生時の対応では人手不足もありいつも以上に激務になることが想定されます。その状態が長く続いてしまうと職員への負担が増し続けて心身機能の低下を招きます。強いストレスを緩和するためには、激務である中でもしっかりと休息の時間を確保することが大切です。働きながら休む、休みながら働くのではなく働く時間と仕事から離れで休める時間をはっきりと分けることでストレスを緩和させることができるように職員全員で取り組んでいく必要があります。  

コミュニケーションを欠かさない

職員は激務に追われてしまうことで心の余裕がなくなります。まして災害という非常事態は不安やつらい気持ちなどでなおさらに余裕がなくなっている状態でしょう。管理職、リーダーなどの職責者、同僚など全員で密にコミュニケーションを取り、心の負担感の分散やつらい気持ちを素直に吐き出すことができる環境を作ることがとても重要です。「みんなが大変だから」「あなただけじゃない」という雰囲気を作ってしまわないように注意が必要です。業務中1時間に5分程度の短時間でもよいので顔を合わせ、飴玉や果物など甘いものを食べながら話す機会を設けると気分的に落ち着いた話ができるでしょう。  

非常事態に応じた業務量にする

介護施設、介護事業所は利用者の生活を支えるのが業務である以上、災害時であったとしても外せない業務がたくさん存在します。物資が不足していたり人員が足りなかったりといった非常事態においても通常と同様の業務をこなすことは、職員の心身に大きなダメージを与えてしまうことでしょう。災害という非常事態においては利用者と職員双方の健康、命を守ることが何よりも大切です。状況に応じてではありますが、緊急性の低い仕事、重要性の低い仕事を積極的に省いて業務負担を減らすことは、職員のメンタルサポートに大いに有効でしょう。普段から災害時に備え業務の優先度、重要度の位置づけなどの見直しや記録類をICT化し負担を軽減するといった事前の対策が重要です。  

まとめ

震災や大雨などの災害時は地域外への避難により介護職員が不足することや、建設特需の影響で人材の取り合いが発生するなど介護施設、介護事業所は深刻な人手不足に陥ることが指摘されています。少ない人手で業務をこなしながら安否確認やライフラインの確保など非常事態の対応は職員の強いストレスとなり、心身機能の低下からうつや離職に繋がることが懸念されています。介護施設、介護事業所は職員の心身の安定を保ち離職に繋がらないように防災への備えと職員へのメンタルサポートへの手立てを十分に講じることが重要です。大切な利用者や職員の健康を守るために、万全の備えをしていきましょう。  

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参考URL:
災害対策マニュアル

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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