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NDSコラム

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ユニバーサルデザインとは?高齢者施設での環境整備ポイント

2020/10/01

高齢者や障がい者に配慮した環境整備として「ユニバーサルデザイン」という言葉がよく聞かれるようになりました。介護施設にもユニバーサルデザインを取り入れていくことで、多くの高齢者や障がい者が快適かつ元気に過ごせることができると期待されています。しかし、同じような言葉に「バリアフリー」という言葉がありますが、両者の違いとはどのようなものなのでしょうか。

そして、ユニバーサルデザインを高齢者施設の環境整備に取り入れていくにはどのような工夫ができるのでしょうか。今回は「ユニバーサルデザインについて」と「介護施設での環境整備ポイント」について解説していきます。

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは、「普遍的な」「汎用・万人向けの」デザインのことです。
1980年代、アメリカのロナルド・メイスによって提唱された考え方で、「特別な製品や調整無しで、最大限可能な限り、すべての人々に利用しやすい製品、サービス、環境のデザイン」を定義としています。
特別な形やデザインを指すのではなく、どのような人にでも使いやすいものを考えるという概念であるといえます。
例えば道路の側溝の溝幅が大きなものでは、ハイヒールの方や杖歩行の方はヒールや杖先を落としかねません。車いすの方も前輪が溝に取られてしまい思うように動けなくなるかもしれません。そこですべての方に安全であるように溝の幅を小さくするという工夫がユニバーサルデザインです。
ほかにも人間工学を応用してどのような方でも使いやすい形状である、非力な方でも扱いやすいようテコの原理を応用するなどもユニバーサルデザインといえます。

バリアフリーとの違い

ユニバーサルデザインと似た言葉に「バリアフリー」というものがあります。バリアフリーとは、主に高齢者や障がい者などの社会的、生活弱者に対して生活に障害となる物理的な障壁を取り除こうとする考え方です。「バリア」=障壁をフリーにするという意味ですね。
例として玄関の段差を跨ぎやすいように段差を小さくする、車いすの方が階段を使わなくてよいようにスロープを設置するなどです。
バリアフリーが高齢者や障がい者等の弱者を対象にしているのに対し、ユニバーサルデザインは高齢者や障がい者も含むすべての人が使いやすい、分かりやすいことを目的としています。

双方ともに共通する理念に「優しさ」「思いやり」があり、多くの方に使いやすいものを目指すユニバーサルデザインと高齢者、障がい者等であっても安全、安心に使える街づくりを目指すバリアフリーは、共に人権の問題としても捉えられています。つまり人種や性別、年代の枠を超えてすべての人が使いやすいよう工夫しデザインする配慮、物的環境だけでなく偏見や差別などの心の障壁、社会的障壁をも無くそうとする意識など、人とモノ、人と人の隔たりを無くそうという考え方です。
公共施設ではバリアフリー、ユニバーサルデザインを取り入れた施設づくりや環境づくりに設計の段階から配慮されています。例としては車いすの方や介助が必要な方でも乗り降りしやすいよう幅を広くとった駐車スペース、案内表示板に人種関係なく理解しやすいアイコンを用いたピクトグラム、日本語表記だけでなく英語、中国語、韓国語なども併記するなどです。
このようにバリアフリー、ユニバーサルデザインは人とモノのコミュニケーションを円滑にすることで人と人とのコミュニケーションを繋ぐという役割も果たしています。

介護施設でのユニバーサルデザイン例

ユニバーサルデザイン,人間工学,介護施設環境

介護施設においてもただ特定の人にだけ配慮するのではなく、すべての利用者が使いやすい、分かりやすいことを考えた環境整備を行っていくことが求められます。 ユニバーサルデザインの考え方には7つの原則があります。

・誰でも利用できる「公平性」
・いろいろな方法を選べる「自由度」
・使い方が簡単である「単純性」
・情報がすぐに理解できる「分かりやすさ」
・危険に繋がらない「安全性」
・少ない力でも使える「体への負担の少なさ」
・使いやすい空間の「スペースの確保」

これらすべてを満たすのではなく、この原則のいずれかに沿うように環境を整備することが重要です。 介護施設でのユニバーサルデザインを考えた環境整備の例を見てみましょう。

トイレの環境

介護施設のトイレは広く設計されている場合が多いですが、手すりが壁にしか設置されていない、空間は広いのにトイレが壁側に寄っている場合などがあります。
これでは半身マヒの有無や車いすの形状によって使いにくい利用者が出てしまいます。左右どちらの方向からでも進入でき、立ち上がりに掴みやすい位置に段違いの手すりを両側に設置することで体格の差やマヒの有無に関わらず多くの利用者が使いやすいトイレの環境になります。蛇口をセンサー式にすれば力のない利用者でも手を洗うことができます。車いすでも手の届く位置にペーパータオルホルダーを設置すれば誰もが使用することができます。「トイレ」や「お手洗い」という文字情報だけでは理解しにくいかもしれない認知症を有する方のためにトイレの写真などを入り口に貼っておくとトイレの場所が分かりやすくなります。既存のトイレの設置場所を変えることは難しくともこのように多くの方が利用できるよう考えたうえで配慮できることは多くあります。

食堂ホールの環境

食堂ホールは様々な利用者が一堂に会し食事を摂る、レクリエーションをする、コミュニケーションを取るなどして過ごしておられます。どのような利用者でも使いやすいようユニバーサルデザインを考えた環境整備としては、まずテーブルが挙げられます。テーブルは利用者の身体の大きさによっては高すぎることが多く、小柄な方には使いにくいものが多くあります。高さを調節できるテーブルを導入すればどのような体格であっても自身に合った高さのテーブルを選択することができます。また、車いすから椅子に移る必要がある方は自力では一連の動作が困難です。そこで椅子の座面が90度回転するものを使えば自力で、楽に移乗動作を行うことができます。椅子のひじ掛け部に杖を挟む部品をつけることで杖歩行の方が安心して使うことができます。
さらに食事をする際のお盆や器に滑りにくい素材を使う、片手でもすくいやすい形のものを選ぶなどを工夫すればどのような利用者でも快適に食事を楽しむことができます。

バルコニーやテラスの環境

車いすを利用している、歩行に障がいがある方などは介護施設内から積極的に外へ出ようとされず、室内に閉じこもりがちです。外に出て日光を浴びる、外でのレクリエーションを楽しむなど活動範囲を広げることは利用者の心身にいい効果をもたらします。
その際に活用したいのがバルコニーやテラスで、ユニバーサルデザインを考えた環境整備を行うことで多くの利用者が楽しく安全に使用できます。
掃き出し窓や出入り口の間取りを車いすの方でも通れるように広くとる、段違いの手すりを設置する、階段とスロープ両方を設置するなどの工夫をすれば多くの方が安全に外へ出られるようになります。
開放的な空間でぜひ実施したいのが花や野菜、緑を育てる園芸療法です。色とりどりの花や鮮やかな緑は気分をリフレッシュさせ、癒しの効果が期待できます。さらに自分たちで育てた野菜は育てる喜びもさることながら食べる喜びにも繋がり健康増進にも期待が持てます。どのような方でも園芸療法を楽しめるよう地植えにするだけでなくテーブルのような花壇、「立ち上がり花壇」を使えば車いすの方でも土や花、緑に触れることができます。剪定鋏やスコップなども握らずに使えるものを揃えておくことでどのような方でも利用できます。
多くの利用者が共通の楽しみを持つことで自然とコミュニケーションが促進され、利用者の情緒の安定や心身機能の向上に大きな期待が持てます。

音声入力例

多くの人のニーズを考えて設計するユニバーサルデザインは設備環境だけではなく、音声入力など情報のユニバーサルデザインもあります。例えば、キーボードでは入力が難しい、パソコンというハードルが高いという場合に、自分の声だけで入力ができる「音声認識」はIT化という面で魅力的な技術で情報のユニバーサルデザインといえるでしょう。音声入力は、介護職員のパソコンに対するハードルを下げるだけではなく、利用者様で、例えば、指先が思うように動かない障がいのある方や、学習障がいのある方、外国籍で日本語が不慣れな方など多くの方々が音声でパソコン入力を行うことで利用が可能となります。

音声入力は記録類の効率化を図ることができるだけでなく、利用者も含めて、双方の障壁を取り除くために大いに役立つでしょう。「音声入力システムvoicefun」は話した言葉がそのまま文字になり、福祉業界にも特化、業界用語もすぐに変換できます。学習機能も搭載され誰でも簡単にキーボードの変わりに音声で入力できるシステムです。

★オススメ商品

ユニバーサルデザインを活かした環境整備で高齢者に活力を!

ユニバーサルデザインを考えた介護施設の環境整備を行っていくことで、多くの利用者が使いやすい施設をつくることができます。誰もが使いやすい施設は利用者の状態に関わらず同じ空間、環境で生活を楽しむことができるようになります。生活に楽しみを持つことは意欲の向上に大きく関与し、さらにどんな人でも使いやすい配慮された環境は障がいの有無に関わらず「自分はできるのだ」という自己肯定感を得ることができ、大きな「自己実現」への意欲を生じさせることが期待できます。
常に介護が必要とされる高齢者であってもユニバーサルデザインを考えた環境整備を行うことは自立支援、尊厳の保持のために非常に大切なのです。

ユニバーサルデザイン,人間工学,介護施設環境

まとめ

高齢者や障がい者等の方々に配慮した環境整備を行うバリアフリーと、すべての人が使いやすいように考えられたユニバーサルデザインは異なる部分もありますが、多くの人が平等に生活できる社会をつくろうという大きな点で共通していますのでユニバーサルデザインの原則を考えてすべての人が使いやすいことを考えるとおのずとバリアフリーの理念にも沿うことになります。ユニバーサルデザインを積極的に取り入れた施設環境整備を行っていくことは利用者の「自分でできること」を増やすことにも繋がるため意欲の向上を促すことができます。園芸療法などのレクリエーション環境を整備すれば利用者同士のコミュニケーションの活性化にも繋がりさらに心身機能の向上を図ることが期待できます。ぜひユニバーサルデザインを取り入れた環境整備をできることから始めてみましょう!

参考URL: ユニバーサルデザインとは?
情報のユニバーサルデザイン

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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