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NDSコラム

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高齢者の尊厳と健康を守る!
排泄介護のポイントについて解説

2020/10/15

身体の中の不要物を排出する行為である排泄は、人間が生きていくうえで必要不可欠なものです。排泄に何かしらの障害をきたすと体内に不要物が蓄積し身体に悪影響を及ぼすばかりか最悪の場合は死に至るケースもあります。

高齢者は全身機能の低下に加え、障がいや疾病により排泄行為に支障がでる排泄障害を起こしやすくなるため排泄介護が必要になることが多くなりますが、排泄とは本来であるならば人に見られずに行いたい行為でもあります。介護職はそのことを理解し高齢者の尊厳を守る意識とともに適切な排泄介護を行うことが求められます。今回は、高齢者の尊厳と健康を守るための排泄介護の気を付けたいポイントについて解説します。

排泄は尊厳に深く関わる

人は生まれてすぐの頃は自分で排泄をコントロールできません。そのためにおむつを着用し排泄の処理はすべて人の手に委ねられていますが成長と共に自力で排泄をコントロールできるようになり6歳前後で自立した排泄行為ができるようになります。つまり、排泄行為は私たちにとって長らく他者の目に触れずに行ってきた行為であり、他者の介入を必要としなかった行為といえます。
高齢や障がい、疾病の影響で排泄行為が自力で行えなくなることは、長らく自力で行ってきた行為の喪失であり、自身の排泄物の処理を他者に委ねることは本人にとっては非常に申し訳なく思うとともに羞恥心を覚えやすいことといえます。
介護職は、高齢者の排泄ケアを行う際は、ただ手伝うという意識だけでなくそういった高齢者の心情を理解して排泄介護にあたることが必要です。

排泄介護を行う職員の不用意な言葉や応対ひとつで高齢者は深く自尊心を傷つけることになり、尊厳が失われやすくなります。介護職は長年自立していた行為を人に委ねることの喪失感や羞恥心を十分に理解したうえで高齢者の心情に寄り添う排泄介護が求められます。

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排泄障害とは?

排泄行為に何かしらの障害をきたす排泄障害は、尿や便を溜めておくことができないものと、その逆に排出することが困難になるものとがあります。
原因は様々な要素が複雑に絡み合っており、排泄に関わる器官である直腸、肛門や泌尿器の疾患以外にも脳疾患、脊髄疾患、認知症、高血圧や糖尿病といった生活習慣病などの疾患も排泄を困難にする要因となります。

排尿の障害

排尿障害とは尿を排出しにくいまたは自力で排出できないものと意思と関係なく出てしまう尿失禁、頻回に尿意を感じてしまう頻尿などがあります。
自力でなかなか出せない排尿障害は前立腺肥大に多く見られ、尿失禁には認知症により排泄の仕方が分からなくなる機能性尿失禁やくしゃみなどで腹圧がかかることにより出てしまう腹圧性尿失禁、脊髄損傷などにより自分の意思と関係なく膀胱に尿が溜まると反射的に出てしまう反射性尿失禁などがあります。
頻回に尿意を感じる頻尿の原因も様々で、一度の排泄で尿が満足に出きらない残尿や糖尿病などの疾患による多尿が要因となることもあります。また、尿を漏らすことを気にしてしまい何度もトイレへ行く心因性の頻尿なども見られます。

排便の障害

排便障害も排尿と同様に自力での排出が困難なものと、自分の意思に関わらず強い便意が急激に襲ってくるものがあります。
慢性的な運動量の低下、筋力低下などにより腸の蠕動運動が低下し排便しづらくなる慢性便秘や腸閉塞などが排便を困難にする原因として多く見られます。
反対に意思に関係なく出てしまう便失禁には過敏性大腸症候群や潰瘍性大腸炎などの疾患による場合やノロウイルスをはじめとするウイルス性腸炎によるもの、認知症などによる機能性便失禁などが挙げられます。

排泄障害を抱える方は失禁してしまうかもしれない、人に迷惑をかけるかもしれないと心配する、出したくても出せないことから必要以上に身体に力を入れ心臓や血管に負担をかけるなど様々なストレスを抱えやすくなります。それらが自律神経に作用することでさらなる排泄障害に繋がることもあるため介護にあたる人は心情に寄り添うとともにそれぞれの排泄障害に合わせた適切な排泄介護を行うことが大切です。

排泄介護のポイント

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排泄障害を抱える方や排泄を自力で行えない方に行う排泄介護のポイントは以下の通りです。

トイレで排泄する方の介護

・認知症の方などは自身の尿意や便意などに気付かず下腹部の違和感のみを覚えて不穏になることがあります。ソワソワしている様子や何かを探している様子が見られたらそっと声をかけてみるとよいでしょう。
・トイレに向かう際にすでに失禁しているかもしれない方の場合は、声をかける前に交換する衣類やおむつ類を用意しておくと見守りや介助がやりやすくなります。
・トイレに誘導した際に他者の目に触れることがないよう必ずドアを閉める、カーテンをかけるなどの目隠しを行います。見守りを理由に人の目に触れる環境にしないように気を付けましょう。
・失禁している衣類などを交換する際も本人の自尊心に配慮し、優しい言葉と態度で接するようにしましょう。
・排泄物には感染症の原因となるウイルスなどが付着している場合があります。介護職は必ず手袋を着用するようにし、ケアの前後の手洗いを徹底しましょう。

ベッド上でのおむつ交換

・しっかりと側臥位をとってもらうことでおむつカバーの交換が一度でできます。何度も仰臥位、側臥位を繰り返すと高齢者に負担をかけてしまいますので、体位交換はなるべく少ない回数で済むようにしましょう。
・おむつ内は非常に蒸れやすい不衛生な状態です。おむつ交換の度に清潔にするよう心がけ、暖かいタオルで清拭をするようにしましょう。この際にスキンケアとしてベビーパウダーやかゆみ止め、ワセリンなどの軟膏類を塗布する場合もあります。
・おむつ交換を要する高齢者はあせもやおむつかぶれなどの皮膚トラブルや褥瘡を起こしやすいです。おむつ交換の際は仙骨部などの皮膚状態を観察する機会でもありますので、褥瘡ができていないか、皮膚がかぶれていないか、赤くなっていないかなどを必ず確認しましょう。
・下痢をしている方などは陰部が全体的に汚れてしまうことがあります。その際はシャワーボトルにぬるま湯を入れて行う陰部洗浄が効果的です。それ以外の方でも必要に応じて陰部洗浄を行い、清潔を保ちましょう。

排泄は健康を表すバロメーター

排泄物は体内の健康状態を如実に表すバロメーターして大変重要な役割を持っています。
排尿量が少ない、間隔が12時間以上開く、色が濃い、臭いが強い状態は体内に水分が少なくなっている脱水症状を引き起こしているおそれがありますし、反対に尿が多い場合は腎機能の低下、糖尿病、高カリウム血症などが考えられます。
排便は色が白っぽい、または黒っぽい場合臓器に何かしらの異常が出ているおそれがあります。酸っぱいような臭いは感染症のおそれがあり、未消化便が出る場合は腸の異常が考えられます。
さらに排便が長期間見られないと食欲不振に繋がる、腹痛が続き生活意欲が低下するなどのほか腸閉塞のリスクが高くなります。

このように、排泄物の形状や量、間隔などは高齢者の健康状態を把握するための非常に重要なバロメーターなのです。介護職はこれらの情報の重要性を正しく認識するとともに適切に管理していくことが必要です。

排泄記録の重要性

排泄は健康状態を表す重要なバロメーターですが、それらを適切に管理していくには適切に記録を取ることが何よりも重要です。ただ漫然と出た時間と量だけを記載するだけでは排泄から得られる情報を十分に活かすことはできません。しかし、施設介護などでは排泄介護を要する高齢者は決して少なくありません。その方々一人ひとりの記録を適切につけていくのは時間もかかってしまいます。そのために簡潔な排泄記録に留まっている事業所も多いのではないでしょうか。排泄記録は詳細に記載し、その情報をデータとして職員全体で共有し健康状態の把握に活用する必要性の高い業務です。さもないと利用者の重篤な疾患を見過ごしてしまう場合や、体調の変化を見逃してしまうおそれがあるからです。
そのためには排泄記録を簡潔なものにするのではなく、記録行為が簡単に行えるものにすることが効果的です。詳細な記録が簡単に記録、管理できるようになると排泄記録の持つ重要な情報を最大限に活かすことができます。

排泄記録を簡単かつ効率的に行うには記録のICT化が有効です。排泄記録だけでなく食事や入浴など日々の介護業務にかかわる記録をICTで電子化してしまうと複雑な情報も簡単に入力でき、参照が容易になるため記録にかかる時間が大幅に短縮でき、記録を活かした介護が必要になります。排泄記録を適切に取り高齢者の健康を守っていくために記録類の電子化は積極的に取り入れる必要があるといえます。
また正確な状態の把握や情報共有には、本人の承諾が必要であると思われますが写真に撮り画像として記録しておくことが非常に有効です。排泄物だけでなく皮膚状態などは文字の記録だけでは正確に表現することが難しいこともあり、医師や看護師への情報提供、共有が不十分になりがちなためです。画像での情報共有を図ると迅速な対応や正しい治療に繋がるため高齢者の健康を守ることに大きく繋がります。

弊社では記録業務全般をICT化するケア総合記録システムを提供しております。スマホやタブレットから簡単入力することで事務作業の軽減を図り、ケアの時間の確保から記録の有効活用に役立つツールです。ぜひご活用ください。

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まとめ

排泄は多くの方々にとって自力で行ってきた行為であり、人の目に触れさせたくない行為です。しかし高齢者は何かしらの障がい、疾病などによりその行為を人に委ねなければならない状態になる場合もあります。介護職は排泄介護をただの交換作業と捉えるのではなく、高齢者の自尊心、尊厳に深く関わる行為であることを十分に認識し心情に寄り添った介護を提供することが必要です。また排泄物は健康状態を表すバロメーターともいわれ、様々な情報が詰まっているものでもあります。排泄介護の記録を適切に取り介護職全体で共有していくことは高齢者の健康を守ることに直結します。 高齢者の尊厳を守る排泄介護技術向上と健康を守るための排泄記録の効率化を図りより一層質の高い介護を提供していきましょう。

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参考URL:
日本泌尿器科学会 こんな症状があったら
NPO法人 日本コンチネンス協会

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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