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高齢者の口腔ケアの重要性について令和3年度介護改正での議論

2021/01/18

高齢者にとって口腔を清潔に保つ口腔ケアは非常に重要な意味を持ちます。介護保険サービスでは口腔の衛生を保つことで高齢者の健康増進、自立支援に繋がるものとして様々な取り組みを行っています。高齢者にとって口腔ケアとはどのような意味を持つのでしょうか。また介護保険制度における口腔ケアへの取り組みと令和3年度介護報酬改定に向けてどのような議論がなされているのかを見てみましょう。

口腔ケアとは

口腔ケアとは、口の中(口腔)の清潔を保つためのケアです。単に口腔だけを清潔にするわけではなく、口腔ケアを通じて全身機能の健康を保つという目的もあります。また口腔ケアの種別としては口腔内を清潔に保つための「器質的口腔ケア」と口腔機能を維持、向上させるための「機能的口腔ケア」があります。介護を必要としない人は自力で口腔衛生を保つことができますが、障がいや認知症などにより介護が必要な高齢者は自力で口腔衛生を保つことが難しくなります。そのために介護サービスの介入により口腔の衛生を保とうとするケアが口腔ケアです。

高齢者の口腔ケアの重要性

口腔の衛生を保つことは人間にとって非常に大切なものです。まず口腔は栄養を摂取するための食事を行う最初の入り口です。食事は生命を維持していくために必要不可欠な行為です。口腔内に入った食物は咀嚼されて、唾液と混ぜて飲み込みやすい食塊を形成し、嚥下することで食道を通り胃に送られます。この際にしっかりと咀嚼し分解吸収されやすい食塊を形成しておくことで効率的に栄養素を吸収することができます。
しかし介護が必要な高齢者はこの噛む機能、飲み込む機能が低下しやすくなります。自力で口腔衛生を保つことができず歯が弱り咀嚼が満足に行えなくなる、だ液の分泌量が老化により低下しやすいことに加え口腔機能が低下することでさらにだ液の分泌量が減少し食塊を形成しにくくなるなど食事を摂る機能が衰えやすくなります。
さらに口腔機能が低下することによる嚥下機能の低下は誤嚥性肺炎のリスクを上昇させます。食道へ送るはずの食塊が満足に形成できず気道に流れ込んでしまうことで起こります。高齢者にとっては命の危険に繋がる非常に危険な状態です。

また口腔衛生が保てていない場合、口腔内には歯周病菌をはじめ様々な雑菌が繁殖します。これらが体内に入り込んでしまうことで糖尿病や脳梗塞、動脈硬化や認知症のリスクが高まることが懸念されています。このように高齢者の口腔機能の低下は生命の維持を困難にするだけでなく、様々な疾病も招きかねない状態に陥るのです。
さらに口腔衛生を保つ大切な役割がQOLの維持、向上です。口腔は食事を摂る以外にも人とのコミュニケーションを取るための発声器官としての役割があります。口腔機能の低下は発生を困難にする、口臭の発生、歯が欠損して顔貌が保てないなどの状態を引き起こします。これらが他者とのコミュニケーションを遠ざける要因になり、精神機能の低下や認知機能の低下を招く場合があります。結果QOLも低下し、尊厳を保てなくなってしまうのです。
口腔内を清潔に保つことは高齢者にとって他者とのコミュニケーションを意欲的かつ円滑にし、充実した生活を送るために必要であるといえます。またコミュニケーションの一環として皆で食事を摂ることも有効です。口腔機能が清潔に保てていると舌にある味覚を感知する味蕾が機能しやすくなり、味をよく感じることができます。結果、さらに食事を楽しむことができるため円滑なコミュニケーションに役立てることができます。
口腔ケア,口腔衛生管理、,多職種連携,介護報酬改定 このように、口腔を清潔に保つことは尊厳を保持した生活や健康を維持し自立した生活を営むために非常に重要な意味を持つことがわかります。しかし介護が必要な高齢者は先述の通り自身で口腔内の清潔を保つことが困難です。この状態を放置してしまうと全身機能の低下や死亡リスクの上昇、さらには尊厳が保てずQOLが大幅に低下することに繋がります。そのため介護職は高齢者の口腔衛生を保ち、口腔機能を維持向上させるための口腔ケアが非常に重要なケアとなるのです。

口腔ケアは食事を良好に摂取し栄養状態を良好に保つことでリハビリテーションの効果を最大限にあげるためやQOLの維持向上のために重要なケアであるため、医師、歯科医や歯科衛生士、看護師等の医療職や言語聴覚士などのリハビリ職、管理栄養士や介護福祉士など多職種で連携してケアにあたることが介護保険制度において求められており、平成30年度の介護報酬改定でもさらに新たな加算が新設されるなど重要視されています。

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口腔ケアに関する加算とは

高齢者の口腔ケアは栄養状態の改善、リハビリテーションの効果を上げることが分かっており施設サービスにおいては歯科医師や歯科衛生士が日常的な口腔ケアに係る介護職員への技術的助言、指導を行う「口腔衛生管理体制加算」や歯科衛生士が施設へ訪問し専門的口腔ケアを月4回以上実施することで算定できる「口腔衛生管理加算」、在宅サービスにおいては「居宅療養管理指導」や通所介護において口腔清掃の指導もしくは実施、又は摂食・嚥下訓練の指導もしくは実施を行う「口腔機能向上加算」がありましたが、口腔機能向上加算は算定要件を満たさない事業所やケアの実施が困難な事業所が多いようで算定率は12.2%と伸び悩んでいます。

平成30年度の介護報酬改定では介護施設の利用者に対して歯科衛生士が口腔ケアを行う「口腔衛生管理加算」が月2回の実施で算定可能と要件が緩和され、そこに「入所者に係る口腔ケアについて介護職員に対する『具体的な』技術的助言及び指導、相談対応」という要件が追加されました。算定しやすいよう要件を緩和することで介護施設を利用する高齢者に口腔ケアを実施しやすい状況をつくるとともに、介護施設で働く介護職員の口腔ケアの知識、技術を高めようというねらいがあります。
また平成30年度介護報酬改定においてサ高住やグループホームなどの施設も口腔衛生管理体制加算の対象になりました。

介護保険施設の入所者を対象とした調査では入所者の61.8%に歯科専門職による口腔衛生管理が必要とされており、口腔衛生管理が行われなかった場合は一年後に体重が減少するリスクが約2.2倍になるなど介護施設を利用する方への口腔ケアの重要性が浮き彫りになっています。また口腔衛生管理が行われている利用者に対して行われていない利用者の肺炎リスクが3.9倍になるというデータも出ています。
口腔ケアの実施は利用者の栄養状態を改善する栄養ケア・マネジメントにも深く関与しており、利用者の自立支援のために口腔ケアを実施する必要性は感じているが実際のケアにまでは至らない事業所が多いのが現状といえます。

口腔ケアにおける令和3年度介護報酬改定向けての議論とは

令和3年度介護報酬改定では口腔ケアは栄養ケア・マネジメントやリハビリテーションマネジメントなど利用者を総合的に支援するために重要であるとの認識で議論が進んでいます。
介護施設においては口腔衛生管理加算における介護職員に対しての技術的助言や指導を行うための研修や会議等への参加に課題があるとし、また現状として施設入所後まったく歯科医療管理が行われていない方が3割程度いる状況を鑑み口腔衛生管理加算の見直しが検討されています。
通所介護においては口腔機能向上加算の算定率が伸び悩んでいることもあり、歯科医師による口腔内評価において通所サービス利用者のうち歯科受診の必要性がありと診断された 割合は59.1%に上るなど口腔機能の低下が示唆されています。それを受け在宅サービスを利用する高齢者の口腔ケアをどのように実施していくかが議論されており、重度化を防止するために介護職が実施可能なスクリーニングへの取り組みを評価するとともに既存の栄養スクリーニング加算と紐づけてはどうかとの意見が出ています。介護職員は生活場面において日常的に利用者と接するため、スクリーニングを定期的に実施できることは口腔異常の早期発見、重度化防止に大いに役立ちそうです。
また、総合的な自立支援への取り組みとして口腔ケア、リハビリ、栄養ケアの計画は密接に関係しているため一体的に現場で共有できる計画として見直す必要があるのではないかとの意見が出ております。

口腔ケアは高齢者の栄養状態の改善、肺炎リスクの低減などの効果があることが分かっていますが介護事業所ではまだ有効な取り組みには至っていない現状が令和3年度の介護報酬改定においてどのような方向性で決まるのか注目です。
利用者の生活と健康を守るための口腔衛生は様々な職種が専門性を発揮する非常に重要なケアであるため、効率的な情報の共有と多職種連携を円滑にする取り組みが求められます。

「ほのぼのNEXT」のケア記録システムは口腔ケアの記録はもちろん、口腔機能改善管理指導計画書の作成も可能です。CHASEにも対応しており、介護報酬請求までの手間を大幅に削減可能です。令和3年度の介護報酬改定に対応していくための大きなサポートとなります。

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まとめ

高齢者にとっての口腔ケアは栄養改善やリハビリにも繋がり自立支援、重度化防止に非常に重要なケアです。介護施設や在宅介護サービスを利用している高齢者は半数以上が口腔ケアの必要性があると分かっていながらも口腔衛生管理がまだ十分に行き届いていないのが現状ですが、令和3年度の介護報酬改定において栄養ケアやリハビリと一体的に口腔ケアに取り組むことが議論されている状況を鑑みると、多職種連携を密接にし介護職員だからこそ実施できる日常的な観察を通して情報共有できる体制を整えておくことが大切ではないかと思われます。

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参考URL:
自立支援・重度化防止の推進(検討の方向性)

当コラムは、掲載当時の情報です。



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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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