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NDSコラム

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介護の仕事中にイライラ 対処法について解説

2023/05/22

どのような仕事であっても何かしらイライラする出来事や瞬間はあります。介護の仕事をはじめとする対人職は顧客である利用者に直接関わる仕事のため、ことさらにイライラする出来事が起こりやすい仕事といってもよいでしょう。しかしイライラするという感情は利用者支援において何も良い価値は生み出しません。とはいえ介護職も一人の人間ですのでイライラするなという方が無理というものです。では、介護をしている中で(もしくは、サービス提供している中で)利用者にイライラしてしまう時は、どのように振る舞うべきでしょうか。今回は介護の仕事で生じるイライラについて解説します。

介護現場でありがちな「イライラ」

介護の仕事は老化や疾病等による心身の何かしらの障がいにより日常生活を自力で営むことが困難になった方の尊厳を保持するとともに、できうる限り自力での生活を継続できるよう必要な支援を提供するものです。

その方の自立を支えるということは、当然として生活の意向の主体性は利用者本人である必要があります。ですが利用者が主体であるが故に介護現場ではサービス提供している中でイライラとしてしまう場合があるのが実際のところです。

介護現場でイライラしてしまうの一例として以下のような場面が考えられます。

認知症を有する方への対応

認知症を有する方は、脳の機能障害による短期記憶の低下から同じ話を何度も繰り返したり、前頭葉や側頭葉の障害の影響で感情のコントロールが困難になる、怒りやすくなったりといった傾向がしばしば見られます。介護職は認知症を有する方のそうした背景も理解した上で支援することが必要なのですが、人手が足りない中で何度も同じ対応を求められる、急に興奮される等の状況に心を乱されてイライラしてしまいやすいのは否めません。

チームの連携不足からのイライラ

介護の仕事は介護職員同士や介護職、医療職といった多職種の連携が欠かせない仕事です。それぞれ異なる領域の専門職が力を合わせることで利用者の様々な生活へのニーズを満たし、その方の望む生活を叶えることができるのです。

そして多職種連携を効率的に行うためには各専門職の情報共有が欠かせません。しかし実際には伝えるべき情報を伝えられていなかった、もしくは言ったはずなのに何も聞いていないと言われた、さらにはその逆といったトラブルもしばしば起こります。これは多職種連携以外に介護事業所の運営でもよく起こる問題です。こうした連携ミスはクレームに繋がりやすく、フォローの時間が余計にかかることも多いです。チームで仕事することが前提の介護職だけにチームの連携ミスがイライラの原因になってしまうことはとても多いといえます。

個人の相性からのイライラ

介護職といっても一人の人間です。当然そこには個人の性格が10人いれば10通り存在します。そしてそれは介護職だけではなく、利用者も同様です。

人間は誰しもが別の価値観を持っており、その価値観に沿って好む人、好まない人が分かれます。つまり介護職と利用者の間柄は支援を提供する側される側の関係性でありそこに個人の好みが介入してはならないのですが、相性の問題は避けようがありません。介護職は「仕事だから」と割り切ることもできるかもしれませんが、利用者の場合は自分が好まない人に支援してもらうことを受け入れられない方もいらっしゃいます。そうなると利用者の物言いが強くなったり明らかな拒否反応を示したりと、介護職にとって仕事がしにくい状況になることもあります。そうなるとイライラはどうしても感じてしまいやすくなります。

イライラは虐待の素となる

介護職が仕事中にイライラしてしまうことは先述したように、対人支援職であり人と関わる仕事である以上ある程度避けようがないことではあります。しかし利用者相手にイライラしてしまうことは、場合によっては虐待に繋がる要素となってしまうことに気を付ける必要があります。

人はイライラしている時は、意識的無意識的に関わらず何かしらのサインを発しています。例えば小さな子どもがイライラしている時に必要以上にドンドンと大きな音を立てて歩いたり、勢いよくドアを閉めたりする動作も苛立ちの感情の現れでしょう。

それと同様に介護職もイライラしている時は利用者相手に何らかのサインを発してしまう時があります。よくあるのが、いつもなら言わないような強い言葉で利用者を制するなどです。もしも介護職員が自我のコントロールが困難になるほど苛立ってしまった場合は暴力を振るってしまうことも最悪の場合はあり得ます。

これらはすべて虐待として定義されていますので、介護職は何があってもやってはならないことです。介護の仕事はストレスの多い仕事であると言われていますが、こうした感情を律することも必要な側面もあるでしょう。しかし利用者の尊厳を保持し一人の人間として尊重する支援が求められる仕事ですので、やはりイライラしてしまう自分とうまく付き合う方法が介護職には大切であることを理解しましょう。

イライラしてしまう時の対処法

介護の仕事について回るイライラしやすい状況とどのように付き合うか、どのように対処するかを考えて、自分の中で方法を確立しておくことはとても重要です。

イライラに対処しやすくするための方法として広く知られているものに「セルフコントロール」と「アンガーマネジメント」があります。

セルフコントロール

セルフコントロールとは環境や物事に左右されず、自分の理想とする目標に向かって進むことで、そのためには感情に左右されない冷静さや物事をポジティブに捉える自信が必要としています。一朝一夕で身につくものではありませんが、セルフコントロールが行えるようになると、職員がイライラしやすい利用者の言動にも動じずに冷静に捉えることができます。セルフコントロールのトレーニングには自身の仕事の小さな目標を毎日設定し、その達成を目指すことやイライラした時の感情を紙に書きだす、自分を客観的に見てみる等が有効です。

アンガーマネジメント

アンガーマネジメントとは自分の怒りの感情を分析し傾向を知ることで感情をうまくコントロールすることをいいます。

自分がなぜイライラしてしまうのかが分からない状態では、具体的な解決方法は当然見出せませんが、自分の怒りの癖が自分で分かっていれば「あ、これは自分がイライラする方向に向かうな」と気付くことができ、イライラする前に対処することができます。

またアンガーマネジメントに取り組むことで相手の怒りの感情を分析することも可能になりますので利用者がなぜ怒っているのかを冷静に見つめることができ、感情的にならずに応対することができます。決して怒らないようにするのがアンガーマネジメントではなく、怒りの感情をコントロールできるようにするのが目的です。

介護現場で役立つイライラへの対処法

先述した技法は中長期的に取り組むものですので、すぐに効果が出るものではありません。そこで介護現場でイライラしてしまう事態になった時にすぐできる対処法を紹介します。

その場を離れる

最も効果的な方法は、利用者と距離を取ることです。介護現場でよくあるイライラに、利用者に対して何かしらのサービスを提供しようとしても利用者が応じない場合です。例を言えば認知症を有する方に排泄の声掛けをしたが利用者が応じなかった場合です。今すぐトイレに行かなくてはいけない状況なのに応じてくれないとなると、介護職員は何とか応じてくれるよう声掛けを続けますが、利用者はどんどん興奮し大声を出すようになるといった光景はよく見ると思います。

このような時は「今日は自分と波長が合わないな」「今しつこく声をかけるのは逆効果だな」と考え潔く利用者から離れることが肝要です。可能であれば他のスタッフに対応をお願いするのも良いでしょう。夜勤や訪問介護の現場では代わりの人はいないでしょうが、その際はしばらく時間を空けるとお互い気分も落ち着いて案外すんなりと応じていただけることはよくあります。

自分の感情を素直に吐き出す

介護の仕事に関連することでイライラしてしまうことは、やはりイメージとしてはよくないものとして考えがちですが、怒りの感情はあって当然です。それがよくない感情だからといって我慢してしまうと精神衛生上非常によくありません。心身の健康を損なうおそれもありますので、極度のイライラを感じている場合はその感情を素直に吐き出す方がいいです。

そして感情を素直に吐き出すためには誰かに聞いてもらうことが一番です。同僚や先輩、管理者など、自分の話を聞いてくれる人にイライラしてしまうことがあるので聞いてほしいと持ち掛けてみるとよいでしょう。話し終えた頃には少し心が軽くなっているでしょう。注意点としては自分の正当性を主張する、利用者を詰るといった吐き出し方は控えた方がよいです。利用者相手にイライラすることがあったといっても、何もかも100%相手方が悪い場合などめったにありません。自分でも気付かない部分で利用者を不快にしてしまっているのかもしれないのです。事実をありのままに感じたことをありのままに話すように心がけると自分が知らなかった他者から見た自分について伝えてくれるかもしれません。

また自分なりのストレス解消方法は見つけておくと良いです。やはり自分がイライラしてしまったからといってそれをなかなか人に話せない人もいます。そのような方の場合は勤務から離れた場所では一切仕事を考えない、仕事を持ち込まず趣味の時間を楽しむなど、仕事とプライベートのメリハリをつけることで気持ちを軽くすることができます。もし勤務中に感情を落ち着けたい場合は、鼻からゆっくりと息をいっぱいに吸い込み10秒ほど息を止め、ゆっくりと口から吐き出してみると気分が落ち着くこともあります。ぜひ試してみてください。

介護職が受け容れてはいけない利用者の行為

介護職が利用者にイライラしてしまうことは人間である以上仕方のないことですが、基本的に介護職は利用者相手にイライラをぶつけることはすべてNGです。利用者に手をあげるようなことは間違ってもしてはいけません。

そこでよく話題に挙がるのが「利用者からの暴力行為やその他迷惑行為は我慢しなくてはならないのか」という疑問です。

結論から言うと、我慢はするべきではありません。利用者からの度を越えた行為としてしばしば見られるのが職員への暴力や暴言、セクハラ行為です。利用者に一人の人間としての尊厳があるように、介護職員にも尊厳があります。利用者と介護職はサービス費を支払う側、サービスを利用してもらい対価を受け取る側の関係もあるのですが、基本的には介護を必要とする者と介護を提供する者という点では立場は平等です。利用者は介護職を使役しているのではありませんので、一方的に介護職の人権を侵害するような行動、言動は許すべきではありません。ただし、利用者の疾病や障がいによっては正常な判断力が低下している方や感情の抑制が困難な方もいらっしゃいます。暴力や暴言に至る背景には介護職の対応が起点であったかもしれないとの考えは必ず持っておくことが重要です。

もしそうした対応の覚えもなく暴力を振るわれる、罵倒される、執拗に身体に触れてくる等の行為が見られる場合、介護職は我慢するのではなく意思をはっきりと利用者に伝えた上で事業所に報告し毅然と然るべき対応をとることが大切です。

事業所は利用者を守ると同時に介護職を守ることも大切だと捉え、利用者の迷惑行為、ハラスメント行為の基準を明確に重要事項説明書等に定めておくと、いざという時の対応がスムーズに行えます。

利用者の人権を守ることができるのは、自分の人権を保持できていると実感できている者にしかできないのです。

まとめ

対人職である介護職は日々イライラしやすい現場で働くことになりやすいため、心身のバランスを崩すこともしばしばです。介護事業所は、利用者の尊厳を守るためには介護職の尊厳を守ることが重要であると考え、許してはならないボーダーラインを明確に定める、介護職の話に耳を傾ける等のメンタルケアに取り組みましょう。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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