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老健の在宅復帰率と稼働率を両立!生産性向上とマスターラインで安定経営へ

2025/12/18

介護老人保健施設(老健)の事務長や相談員にとって、在宅復帰率の向上は、超強化型・在宅強化型といった施設類型の維持や加算算定において重要な経営指標です。
しかし、利用者の在宅復帰を進めていると以下のようなジレンマを抱えることもあるでしょう。
「在宅復帰率を上げようと退所を促進すると、次の入所調整が追いつかず、稼働率が落ちてしまう」
「ベッドコントロール(病床管理)が経験則に依存した状態になっており、業務が回らない」
「人材不足の中、リハビリテーション(以下、リハビリ)や退所支援の質を保ちながら回転率も上げるのは難しい」
そこで本記事では、老健の在宅復帰率とベッドの回転率を「両輪」で回し、施設の安定運営を実現するための具体的な施策を解説します。

老健の在宅復帰率が経営指標として重要な理由

老健の経営を安定させるためには、超強化型や在宅強化型といった上位の施設類型を取得し、維持していくことが求められます。これらの類型は、在宅復帰率やベッド回転率、リハビリ専門職の配置割合といった複数の指標によって評価されます。

特に2024年(令和6年度)の介護報酬改定においても、老健の在宅復帰支援機能は引き続き重視されています。施設運営者や管理者にとって、これらの指標を高い水準で達成し続けることは、加算算定や安定した経営基盤の確立に向けた喫緊の課題となっています。

なお、老健の施設類型については、以下の記事を参照してください。
在宅復帰率とベッド稼働率を上げるための老人保健施設の取り組み

なぜ「老健の在宅復帰率」と「稼働率」の両立は難しいのか

在宅復帰率と稼働率(ベッド回転率)は、老健の安定経営を実現する上で重要な指標です。しかし、この2つは相反する側面も持ち合わせています。ここでは、在宅復帰率の向上と稼働率の維持の両立が難しくなる要因を3つの視点から解説します。

退所が先行することによる空床のリスク

リハビリやケアの質の向上によって利用者の状態が好転し、早期の在宅復帰が実現することは、老健として目指すべき姿です。とはいえ、退所が増えるほど、次の入所調整のスピードが求められ、空床期間が発生するリスクも高まります。

老健の安定経営には、在宅復帰率と稼働率の両立が求められますが、利用者の回復状況に合わせた退所日と、次の入所者の都合を完璧に合わせ続けることは困難です。例えば、月末に複数名の在宅復帰が決まったとしても、次の入所候補者の調整が数日遅れれば、その期間は「空床」となり、稼働率低下と減収に直結してしまいます。

経験則によるベッドコントロールの限界

「退所」と「入所」の複雑な調整が、特定の相談員の「勘と経験」に依存していると、業務停滞を招き空床リスクが高まります。ベッドコントロールは、以下のようなさまざまな状況を総合的に判断して進める必要があります。

  • 病院や居宅ケアマネとの連携
  • 待機者リストの優先順位の見きわめ
  • 入所判定会議の開催
  • 退所前後の訪問調整など

ベッド調整の業務が特定の相談員に属人化していると、急な退所希望が生じた場合、他の職員が対応の判断を行えず、結果として調整の停滞や空床発生を招くリスクがあります。

人材不足の中で「質」と「稼働率」(ベッド回転率)の両立が困難?

人材不足の中、在宅復帰支援の「質」と、経営安定のための「稼働率(ベッド回転率)」を同時に追求しようとすると、現場が疲弊し、どちらかが疎かになってしまうジレンマがあります。特に、超強化型などで求められる以下のような業務は、在宅復帰の「質」を高めるために欠かせない一方で、現場の限られたリソース(人材や時間)を大きく消費します。

  • 週3回以上の充実したリハビリ
  • 手厚い多職種連携カンファレンス
  • 入退所前後の訪問指導

現場がこれらの質の担保に追われるあまり、新規利用者のアセスメントや計画策定に割く余力がなくなり、結果としてベッドの「回転率」が落ちてしまうこともあります。限られた人員でこの状況を打開し、質と回転を両立させるためには、生産性の向上が求められます。

老健の生産性向上を支える「マスターライン」の活用

限られた人員で在宅復帰支援の「質」と「稼働率(ベッドの回転率)」を両立するためには、業務のムダを省く生産性向上と、業務を標準化するマスターラインの設定が大切です。

  • 記録のための記録
  • 会議のための資料作成
  • 情報の二重入力

これらの非効率な業務を削減すると同時に、入退所業務を標準化する「マスターライン」を設定すること。この二つの取り組みによって、スタッフが利用者に対するケアに集中できる環境が整備され、生産性が向上します。ICT機器や介護ソフトの活用は、こうした取り組みを支える有効な手段となります。

「マスターライン」の基本的な考え方と活用のポイント

生産性向上の具体的な手法の一つが「マスターライン」です。マスターラインとは、各業務を完了するための時間の基準です。老健のベッドコントロールにおいて、「誰が」「いつ」「何をするか」を明確にすることで、既存スタッフによる経験則を「施設の仕組み」に変えられます。これにより、業務のムラをなくし、効率化を図ります。

なお、介護施設でのマスターラインに関する詳しい解説は、以下の記事を参照してください。
介護の業務改善に役立つマスターラインとは?意味やメリットを解説

退所業務のマスターライン

在宅復帰の「質」を高め、退所時期の予測精度を上げるために、退所業務のプロセスを時系列で標準化します。これにより、質の高いケアの実行漏れを防ぎ、多職種連携がスムーズになります。

入所時 退所の目標設定と家族への説明
入所中 入所後1カ月、3カ月など定期カンファレンスのタイミングやリハビリ評価の基準を統一
退所前 退所前訪問指導の日程調整や、ケアマネジャーへの情報連携フォーマットの策定
退所後 退所後30日以内など、居宅訪問のタイミングをルール化

このように、関連業務を時期ごとに仕組み化して運用することで、担当者によるバラツキをなくします。

入所業務のマスターライン

ベッド回転率を高め、稼働率を維持するためには、入所業務のプロセスも標準化しておくことが重要です。これは、退所予定の情報と連動させることで、迅速かつ客観的な基準での入所調整を可能にします。

待機者管理 医療ニーズや在宅復帰意欲、緊急性といった待機ランク(入所優先度)の見きわめ基準を明確化
アセスメント 病院や居宅ケアマネから得る情報のフォーマットを統一
入所判定 判定会議の開催基準(例:毎週月曜、空床予定が出た翌日など)や、入所決定から契約までの流れの策定

これにより、担当の相談員が不在の場合でも、出勤している他のスタッフが入所調整の業務を進めやすくなります。

老健の在宅復帰率と高稼働を連動させるポイント

老健の在宅復帰率(退所)と高稼働(入所)の両立は、それぞれの情報の連動がポイントです。ここでは、アナログ管理の限界と、システム連携がなぜ有効なのかを解説します。

Excelや紙台帳での管理の限界

多くの施設で介護記録ソフトの導入は進んでいるものの、現場のケア記録はソフト、ベッド管理や待機者リストは相談員個人のExcel、といったように情報が「分断」されているケースは少なくありません。

これでは、結局情報が特定の職員に集約されるまでタイムラグが生じ、業務が属人化してしまいます。例えば、金曜に現場で退所が決まっても、その情報が相談員に伝わるのが週明けになれば、その間に待機者は他施設へ流れてしまうかもしれません。「全員がリアルタイムで書き込み、確認できる」環境がなければ、空床は防げません。

介護ソフト活用で「空床予定」を可視化する

介護ソフトを活用してベッドの稼働状況をデジタル管理することで、空床リスクを最小限に抑えられます。退所予定日がシステムに入力されると、その情報が「空床予定」として可視化されるためです。

これにより、情報共有のタイムラグがなくなり、退所が確定した段階で、即座に次の入所獲得に向けたアクションを開始できます。単に待機者からの連絡を待つのではなく、空き予定に基づいて病院や居宅ケアマネへ能動的に打診を行うなど、戦略的なベッドコントロールが可能になり、稼働率の維持につながります。

まとめ

老健の経営安定化には、在宅復帰率と稼働率(ベッド回転率)の両立が求められます。そのためには、経験則による業務から脱却し、生産性向上とマスターラインの設定による業務の標準化が重要です。「退所」と「入所」の情報をシームレスに連動させ、高回転・高稼働な施設運営を実現するためには、情報連携基盤となる介護ソフトの活用が有効な手段となります。

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当コラムは、掲載当時の情報です。

参考URL

厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について

ライター 織田 さとる ケアマネジャーや生活相談員、介護福祉士として20年以上の実務経験をもち、現在は特別養護老人ホームの副施設長として勤務。これまでの経験を活かし、介護・福祉分野の記事を数多く手がけている。
ケアマネジャー/社会福祉士/介護福祉士/公認心理師など
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