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NDSコラム

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【人手不足解消】介護職員の定着率を向上させる新人の人材育成のポイント

2024/04/09

介護業界では、2025年及び2040年に向けて介護ニーズの増加が予測されており、これに伴い必要とされる職員数の確保が大きな課題となっています。この問題は介護業界に限らず、多くの産業で人手不足が深刻化しており、新しい人材を確保することが一層困難になっています。このような状況の中で、離職率を低減し、職員の定着率を高める取り組みが非常に重要です。

介護職は、利用者に高品質のケアを提供するために、多くの知識と技術を必要とします。これには、掃除や洗濯、シーツの交換といった間接支援の技術のみならず、電話応対や家族対応といった社会人基礎力も含まれます。そのため未経験の方や新卒といった新人には職場に馴染み仕事を続けられる状態に至るまでのハードルが高く、早期に離職してしまいやすい傾向があります。

新人職員が自信を持って仕事ができるようになるためには、計画的な育成プログラムとともに、働きやすい環境を整えることが不可欠です。この記事では、職員の定着率を高めるための新人育成の要点を解説します。

まだまだ足りない介護業界の人員

介護業界では、増え続ける介護ニーズに対して、介護職員の数が圧倒的に不足しています。2021年7月9日に発表された「第8期介護保険事業計画」によると、2019年時点での介護職員数約211万人を基準に、2025年には約243万人(+32万人)、2040年には約280万人(+69万人)の職員が必要と推計されています。

【出典:介護分野の最近の動向について】
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001099975.pdf

推計に基づき、令和7年度までに年間平均約5.4万人の介護職員の増員が目標とされていますが、令和2年時点での介護職員数は約214.9万人、増加数は約3.9万人に留まり、目標には届いていません。令和4年の「介護労働実態調査」では、介護業務における悩みとして「人手が足りない」と答えた人が52.1%に達し、前年の52.3%からわずかに減少しましたが、依然として人手不足は大きな問題です。

介護業界の採用率は減少傾向に

人手不足に悩む介護事業所では、利用者に質の高いケアに取り組みたくても人員が十分でないため、利用者一人ひとりに寄り添った個別性の高いケアが思うように提供できないという声がよく挙がります。質の高いケアを実現するためには、幅広い層からの応募を促し、採用の門戸を広げることが重要ですが、介護業界全体の採用率は減少傾向にあります。令和4年の「介護労働実態調査」によると、採用率は16.2%で、過去最高だった平成18年の29%から大幅に低下しています。全産業の採用率が2022年の「雇用動向調査結果の概況」で15.2%であることを考慮すると、介護業界の採用率は全産業をわずかに上回っていますが、多くの事業所が人手不足を感じている現状では、採用率の全体的な減少は深刻な問題です。そのため、外国人労働者の採用が活発化していますが、利用者とのコミュニケーションの不安から受け入れを控える事業所が8割以上あり、介護職特有の人材確保の難しさが明らかになっています。

【出典:令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要】
https://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2023r01_chousa_gaiyou_0821.pdf

新人の定着率の向上が人材不足解消のカギ

現在、介護業界を含む全ての産業で採用率が減少している中、介護職員の数を確保し、増加傾向にある介護ニーズに対応するだけでなく、質の高いケアを提供できる体制を構築することが求められています。この課題を解決する鍵は、職員の定着率を向上させることにあります。

介護業界には、高い離職率のイメージが根付いていますが、実際にはこのイメージは徐々に変わりつつあります。令和4年に実施された介護労働実態調査によると、離職率は最高だった平成19年の21.6%から減少し、令和4年では14.4%にまで低下しています。これは、全産業の平均離職率15%を下回る数値であり、「介護業界は離職率が高い」という既成概念はもはや適切ではないことを示しています。

しかし、採用率の減少傾向が続く現状では、離職率をさらに下げ、介護職員の定着率を高めなければ、必要な人員を確保することは困難です。公益財団法人介護労働安定センターが公表した「令和3年度介護労働の現状について」では、介護職を離職した人の約60%が3年以内に離職していると報告されています。この割合をどう減らしていくかが、人材不足問題を解決するための重要な課題です。

【出典:令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/23-2/dl/gaikyou.pdf

新人職員の定着率向上につながる人材育成のポイント

介護業界に新たに入職する職員は、新卒や社会人経験後に介護職への転職を選ぶ中途入職者と様々です。すべての新人が長く働き続けられるよう、有効な人材育成が求められます。介護職に就いたばかりの頃は、業務の流れを覚えることから始まりますが、同時に利用者の情報や必要な技術、業務マニュアルなど、覚えるべきことが山積しています。新人にとっては、この時期が最も負担が大きく、不安を感じやすいでしょう。初日から十分な指導を受けられずに独り立ちさせると、その不安はさらに増大し、仕事への自信を失わせ、最終的には離職につながりかねません。

そのため、新人が安心して介護の仕事に取り組めるよう、研修の内容とその進め方には特に注意が必要です。一般的に、新人が一人前になるまでの研修期間は約3カ月とされていますが、この期間内に彼らが業務を覚えるべき内容とその順序を明確にすることが大切です。

【初日】同行させる

新人にとっては、利用者の顔と名前が一致せず、介護が必要な理由や適切なケアの方法もわからない状態です。初日からいきなりケアに参加させるのではなく、業務の流れや介護現場の雰囲気を体感してもらうことが重要です。業務終了後、その日の感想や疑問を聞いて、不安を解消する努力も必要です。

【2日目~1週間】一日の流れを覚える~間接支援業務から始める

最初は業務の流れを把握することからスタートし、掃除や洗濯、荷物の管理など、直接利用者に関わらない支援から始めると良いでしょう。これらの間接支援は心理的負担が少なく、取り組みやすいです。

【1週間~1ヵ月】身体介護の実践に移行

間接支援に慣れてきたら、少しずつ身体介護の実践に移ります。この際は、必ず指導者が手本を見せ、ケアの根拠を説明した上で、実践させるべきです。新人が不安を抱えずに仕事を進められるよう、定期的にヒアリングを行い、不安や疑問を解消してあげましょう。

【1ヵ月~3ヶ月】自立を促す

一通りの業務を覚え、利用者へのケアに慣れてきたら、新人の理解度に合わせて徐々に指導者の手を離れ、自立を促します。この過程で、新人との定期的な面談を通じて、一人立ちの準備が整ったかを確認し、必要なアドバイスやフォローを続けます。

新人育成に役立つ制度や取り組み

新人の育成には時間と労力が必要ですが、これにより新人が安心して働ける環境が整い、定着率が向上します。しかし、人手不足の現場では、新人育成に必要なリソースを確保することが難しい場合もあります。それでも、新人育成への積極的な取り組みは、結果的に先輩職員の負担軽減や、利用者への質の高いケアの提供につながります。そのため、事業所全体で新人を支え、育てる環境を構築することが重要です。

メンター制度

メンター制度では、日常的な指導を行う人とは別に、新人(メンティー)の悩みや課題を対話を通じて解決し、成長を促すメンター(相談相手)を配置します。この制度は、新人にとって精神的な支えとなり、モチベーションの維持に役立ちます。

プリセプター制度

プリセプター制度では、1人の新人に対して1人の指導者(プリセプター)がマンツーマンで指導を行います。これにより、指導内容が一貫しており、新人が混乱することなく学びやすい環境を提供できます。

OFF-JT

研修は分類分けをすることができ、職場内で行う研修(OJT)と業務外で行う研修(OFF-JT)があります。OJTは実務を通して実践的に経験や知識を身に着けていくことに対して、OFF-JTは事業所内の勉強会や外部の研修会参加などで経験や知識を身に着けていくことを指します。OFF-JTでは介護に関する知識や技術を体系的に学ぶことができるので、実践的に学ぶOJTと組み合わせることで介護の仕事への理解をより深めることができます。

介護助手の活用

介護助手は、介護職員のサポートとして直接支援は行わず間接支援を行うことが主な業務です。導入している事業所の7割以上が介護職員の負担が軽減されたと答えています。
業務の手順やルールの確認、利用者の身体介助・日常生活のサポートを受けながら業務に慣れていくことができます。
忙しい介護現場で新人が混乱し自信をなくしてしまわないよう介護助手を導入することで、新人が業務を覚えることに集中できる環境を構築しやすくなります。

ICTの活用で働きやすい環境づくり

新人にとって介護の仕事は利用者への直接ケアや間接的なケアに必要な技術、知識をはじめ覚えることがたくさんありますが、特に記録の書き方が分からないといった声は多くの新人から聞かれる悩みです。何を記録に残せばいいのか分からず、冗長的な記録になってしまい必要以上に時間を要してしまったり、逆に簡素的すぎてケアの根拠に適さない記録になってしまったり、など適切な記録を書くことは新人にとってハードルが高いものです。また記録が手書きの場合、忙しい事業所では業務終了後に書くことになってしまう場面も多く、残業ができない事情のある職員にとっては非常に負担の大きい業務です。幅広い人材に働いてもらい、さらに人材定着率の向上を図るにはICTを活用した介護ソフトで記録業務を効率化することが求められます。

介護ソフトは入力する内容を部分的に標準化することで記録効率が上がる、パソコンやスマホで入力できるので手書きよりも楽な場合が多い、何を書けばいいか分からない場合に過去の記録を参照し、一部分や記録の構成をコピペができるなどのメリットがあります。また標準化された記録を日々入力していくことで記録の質が向上するだけでなく、新人にとっても何がケアの根拠に必要な記録であるかを学ぶことができるため、新人自身のキャリアアップにも役立ちます。

介護ソフトの活用で記録業務の効率化を図ることは新人を含めすべての職員にとっても働きやすい環境に役立つといえるため、積極的に導入を検討することをおすすめします。

まとめ

介護ソフトの活用で記録業務の効率化を図ることは新人を含めすべての職員にとっても働きやすい環境に役立つといえるため、積極的に導入を検討することをおすすめします。

当コラムは、掲載当時の情報です。

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ライター 寺田 英史 短期入所生活介護にて13年間勤務し職責者、管理者を歴任。
その後、介護保険外サービスを運営。その傍らで初任者研修、実務者研修の講師としても活動中。

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