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【令和7年度最新】介護事業者必見!処遇改善加算の概要と算定要件、申請方法をわかりやすく解説

2025/09/12

介護人材の確保と定着は、現代の介護業界が直面している優先度の高い課題の一つです。こうした課題に対応するため、政府は「介護職員等処遇改善加算」という制度を設け、介護職員の賃金改善を図っています。

令和6年度の制度改正により、内容が複雑化し、管理者には全体像が把握しづらくなっています。
そこで本記事では、介護職員等処遇改善加算の基本や算定に必要な要件、施設と職員に求められる対応をわかりやすく解説します。

介護職員等処遇改善加算とは?

介護施設で働く職員の賃金を引き上げ、人材確保や離職防止を図るために創設された支援制度です。

このような支援制度が必要とされた背景には、介護施設特有の収入構造があります。介護施設の主な収入源は介護報酬で、その範囲内において大幅な給与改善を行うのは困難だったためです。

そこで政府は、賃金改善のための財源を支援する目的で、この制度を平成21年に創設しました。

令和6年5月までは3種類の関連制度がありましたが、令和6年6月に一本化され、制度はよりわかりやすく整理されました。同時に加算率も引き上げられ、事業所にとってより利用しやすい仕組みへと改善されています。

介護施設にとってのメリット

この制度を活用する介護施設のメリットは次のとおりです。

  • 職員の採用や人材確保がしやすくなる
  • 離職率の低下につながる
  • 職員が定着し、介護サービスの質が向上する
  • 利用者やその家族の満足度が高まる

また、加算算定に向けた取り組みは、施設全体の働き方改革やICT導入のきっかけにもなります。

職員にとってのメリット

一方、勤務先の介護施設がこの制度を活用することで、職員が得られるメリットは次のとおりです。

  • 給与や手当が増える
  • キャリアアップの仕組みが整う
  • 職場環境が改善される
  • 働きやすくなる

これらのメリットを背景に、職員からもこの制度の活用が求められています。

私自身も、この制度によって給与が改善されたと感じた経験があります。実際に支給制度の拡充により、介護職として10年を超える頃には、地域の一般的な水準と比較しても遜色のない収入を得られるようになりました。

介護職員等処遇改善加算の分類と加算率

この制度は、加算ⅠからⅣまでの4段階に区分されており、区分ごとに加算率に大きな差があるのが特徴です。次の表は介護サービスの加算率の一例です。

厚生労働省「介護職員の処遇改善」より一部抜粋
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/A1_leaflet.pdf

訪問介護の場合、加算Ⅰと加算Ⅳでは加算率に10%の差があります。加算額は賃金改善に充てる必要があるため、この差は直接職員の賃金差につながります。

介護職員にとって、給与の水準は大きな関心事の一つです。実際に、職員同士のネットワークを通じて、他の施設の給与に関する情報が日常的に共有されています。その結果、給与水準の高い施設へ転職するケースも珍しくありません。

その背景には、事業所ごとに提供される介護サービスの内容に大きな差はないと考える職員が一定数いることが挙げられます。仕事内容がほぼ同じであれば、少しでも高い給与を求めるのは自然な判断と言えるでしょう。

このような介護職員の動向から、介護職員等処遇改善加算は、より高い加算率の区分を算定することが人材の確保や定着の面で大きな意味を持ちます。

介護職員等処遇改善加算の算定要件

より高い加算率を算定するには、各区分の要件を把握しておくことが重要です。主な要件は以下のとおりです。

それぞれの要件について解説します。

月額賃金改善要件

算定には、毎月の給与に一定割合以上の加算額を支給することが求められます。 これは、一時的な手当や賞与だけでなく、毎月安定して収入を増やすためです。要件の内容は以下のとおりです。

キャリアパス要件

キャリアパスとは、職員が目指す職務や職位に到達するまでの道筋を示すものです。キャリアパス要件は、この道筋を人事制度や昇進制度として整備し、昇進や昇給のルートを明確にすることで、職員が将来のキャリアアップを具体的にイメージできるようにすることを目的としています。

例えば、「主任になるには介護職として10年の経験が必要」「課長になるには主任として5年の経験が必要」といった条件もその一つです。加えて、役職ごとの賃金表を作成することで、将来の収入の見通しを立てやすくなります。

私が勤めていた介護施設では、「あと何年働けば、どの役職を目指せるのか」が明確でした。次の目標が明確だったことで、日々の業務に意欲的に取り組むことができました。

このように、キャリアパス制度の充実は、介護職員がキャリアを形成するうえで重要であり、モチベーションの維持にも大きく貢献します。

職場環境等要件

職場環境要件は6つのテーマに分類されており、その中に合計28項目が設定されています。加算の分類によって、この28項目のうち取り組む必要のある項目数が異なります。違いは以下のとおりです。

つまり、加算Ⅲ・加算Ⅳを算定する場合は合計7項目以上、加算Ⅰ・加算Ⅱについては合計13項目以上に取り組む必要があります。

事業者が算定に向けて求められる取り組み

令和7年度では、一部の要件の猶予期限が令和8年3月31日までに延長されました。これにより、加算Ⅱまでは比較的取得しやすくなっています。具体的な内容は、以下の表のとおりです。

【出典:厚生労働省 介護サービス事業者の皆さまへ】
https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/r7_index_2_1.pdf

つまり、月額賃金改善要件Ⅰのみを満たすだけで、加算Ⅱを算定できる可能性があります。その他の要件については、免除されるか、令和8年3月31日までに対応することを誓約することで認定されるからです。

新たに算定するための流れ

(1)処遇改善計画書を管轄の都道府県に提出
提出期限は適用開始月の前々月の末日です。

(2)処遇改善加算の体制届を管轄の都道府県に提出
居宅系サービスと施設系サービスでは、提出期限が異なります。

居宅系サービス:算定開始の前月15日までに提出
施設系サービス:算定開始の当月1日までに提出

(3)実績報告書の提出
実績報告書は事業年度ごとに提出します。提出期限は最終の加算の支払いがあった翌々月の末日です。通常、翌事業年度の7月31日となります。

現場の職員に求められる取り組み

職員にとって、処遇改善手当は収入の安定や将来設計、モチベーション向上の大きな要素です。しかし、この手当を算定するには、事業所だけでなく現場の職員にも取り組みが求められます。とくに、職場環境等要件を満たすには、日常業務の中で様々な改善活動に参加する必要があります。

例えば、次のような取り組みです。

  • 腰痛予防のためのスライディングシートやリフターの積極的な活用
  • 見守りセンサーの導入・運用
  • 業務の属人化を解消し、有給休暇を取得しやすい体制づくり
  • 介護ソフトの導入による記録業務の効率化

こうした新しい取り組みは、従来の業務を変えることになります。そのため、一部の職員にとっては負担や戸惑いを感じることがあり、反対されるケースも少なくありません。

私自身、新たな改善策を導入しようとした際、「これまでのやり方が良い」という意見に押され、断念した経験が何度もあります。このような苦い経験をしたことがあるのは、私だけではないでしょう。

しかし、介護職員等処遇改善加算は、事業所にとっても職員にとってもメリットがあります。だからこそ、職員全体の協力が不可欠です。そのためには、取り組みの意義や目的、重要性を共有することが大切です。

令和7年度中に取り組みを始めよう

介護職員等処遇改善加算は、介護職員の賃金を引き上げることで、人材確保や離職防止につながる支援制度です。令和6年6月の制度一本化に加え、令和7年度には経過措置の延長が行われたため、現在は加算Ⅱまで比較的取得しやすい状況になっています。まだ加算を算定していない事業者様や、加算Ⅱ・加算Ⅰへのステップアップを目指す事業者様にとっては、絶好の機会と言えるでしょう。ぜひこの機会に取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。

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参考URL

介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件と諸届の解説|NDソフトウェア(株)
令和7年度介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件としての生産性向上と5Sの実施|NDソフトウェア(株)
介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件と諸届の解説|NDソフトウェア(株)
2025年度からの職場環境等要件と新たな補助金制度|NDソフトウェア(株)
2024年6月から新たに創設される介護職員等処遇改善加算について|NDソフトウェア(株)
介護職員の処遇改善:TOP・制度概要 | 厚生労働省
厚生労働省「介護職員の処遇改善」
厚生労働省「介護職員等処遇改善加算職場環境等要件 取組の事例集」
厚生労働省「処遇改善加算がさらに取得しやすくなります!」
厚生労働省「介護職員等処遇改善加算職場環境等要件」
厚生労働省「職場環境等要件~生産性向上のための導入編~」
介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式 | 厚生労働省
厚生労働省「介護職員の処遇改善について」
R6年度介護職員処遇改善加算のメリットと課題|鍵は生産性の向上! - caps+(プラス)
令和7年度介護職員等処遇改善加算(こちらは介護保険が対象です)|介護職員処遇改善加算(現行加算、特定加算及びベースアップ加算)について|東京都福祉局

当コラムは、掲載当時の情報です。

ライター 青木 崇 介護福祉士として、障がい者支援・高齢者支援に10年間携わる。
社会福祉実習指導者や施設主任の経験を活かし、現在は介護関係の記事を執筆するWebライターとして活動中。
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