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2024年6月から新たに創設される介護職員等処遇改善加算について
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2024/05/22 | カテゴリ: 介護保険法改正
介護職員等処遇改善加算
6月からは、現行の介護職員処遇改善3加算が廃止となり、新たに創設される介護職員等処遇改善加算に一本化される。特例として、令和6年度末(令和7年3月)までは、区分Ⅴが設けられた。この区分は、処遇改善加算Ⅲ区分を算定しているなどで、すぐには新加算の要件をクリア出来ない場合の措置である。区分Ⅴは、サービス毎に(1)―(14)まで細分化されており、現在の3加算の算定状況に応じた区分での算定となる。この区分は令和7年3月末までの特例のため、それまでに新加算区分Ⅰ〜Ⅳの何れかの算定要件を満たすことが求められる。
介護職員等処遇改善加算における処遇改善計画書の提出期限が4月15日までとされていた。しかし、厚生労働省からは、6月15日迄は処遇改善計画書の変更依頼を受けるようにとの通知が出されている。そのため、現時点で修正が可能だと言うことだ。
2期分の賃上げを想定した加算
新加算のポイントは、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%の2期分のベースアップを可能とすることである。この新加算の算定率は、2年分の賃上げ分を含んでいる。そのため、6月に移行した段階で算定率は、現行の3加算と2月からの支援補助金を合計した加算率より高く設定されている。この増加分は、6月から前倒しで支給しても良いし、令和7年度に繰り延べて7年度に支給しても良いとした。
しかし、繰り延べる方法は2つの問題を抱える。一つは、繰り延べて令和7年度に支給を繰り越した部分については、令和8年度以降の加算では補填されないこと。すなわち、8年度以降は自腹となる。2つ目は、繰り延べした部分の収益は令和6年度の収入であることだ。加算収入に相対する賃金の支給が令和7年度となるため、令和6年度は法人税の課税対象となることだ。厚生労働省は、この税金対策として、賃上げ促進税制の活用を挙げているが、一般的ではない。それらを勘案すると、6月から前倒しでの支給がベストの選択といえる。
ただし、例外として、毎年に定期昇給を実施している場合は、繰り延べて増額した部分で定期昇給の相当額を補填する場合は有効である。8年度以降は、自腹での支給は想定内であるため、少なくても令和7年度の昇給分を加算で補填できるメリットは大きい。しかし、毎年の定期昇給を実現している介護施設は限定的である。
簡素化された算定要件
新加算の算定区分は4区分である。現行の3加算の算定要件が、かなり簡素化されており、算定における事務負担が軽減された。特に現行の特定処遇改善加算Ⅱの算定要件である、全職員をA-B-Cに振り分けて、Cグループ(その他の職種)への支給は、Bグループ(その他の介護職員)の賃金改善額の二分の一以下とする、いわゆる二分の一ルールは廃止となる。また、Cグループの支給対象者は、年収が440万円以下のものとする所得制限が撤廃された。
特定処遇改善加算Ⅱの算定要件で残る要件は、経験10年以上で介護福祉士を持つ介護職員の中から、1名以上、年収440万円以上の者を求める要件のみである。これも、すでに配置されている場合は問題ない。しかし、令和7年度からは、同要件で認められている特例措置、月額8万円の昇給の要件が廃止される。そのため、新区分のⅠまたはⅡを算定している場合には、年収440万円以上の者を設定出来ないと算定区分が3以下にランクダウンするので注意が必要である。
月給改善額の要件の変更
月給改善として求められる部分は、現在のベースアップ等支援加算での算定要件である受給総額の三分の二以上とする算定要件とは異なり、区分Ⅳの算定率で計算した加算総額の二分の一以上を月給改善として求める。この要件は令和7年度から適用される。令和6年度は、現在のベースアップ等支援加算および支援補助金で設定した月給改善額を維持することになる。また、現在においてベースアップ等支援加算を算定していない場合は、令和6年度中については、ベースアップ等支援加算を算定した場合として計算した加算額の三分の二以上を月給改善額として設定するとされた。
月給改善額はベースアップを基本にする
2月からスタートしている支援補助金から、月額改善額はベースアップを基本とするとされた。そのため、処遇改善計画書には、ベースアップの有無と実施しない場合の理由の記載が必要であり、実績報告書には、実施の有無と実施した場合のベースアップ率の記載、実施しなかった場合にはその理由を記載するようになっている。この点は、6月からの介護職員等処遇改善加算でも同様である。ベースアップとは、賃金表の改訂により基本給や手当の水準を一律に引き上げる事と指すと注意事項に記された。介護職員等処遇改善加算で求められる賃金改善額は、令和5年度と比較して、令和6年度に増加する加算額である。この増加分については、ベースアップによるとされた。例外として、令和6年度介護報酬改定を踏まえて、賃金体系の見直しの途上である場合などが示されている。
現在の介護職員処遇改善加算の算定区分Ⅰは必須
新加算においては、区分Ⅰ−Ⅳの4区分で有ることは承知の通りである。この中でⅠ-Ⅲ区分を算定する場合には、介護職員処遇改善加算の算定区分Ⅰの要件を満たす必要がある。区分Ⅰの要件とは、キャリアパス要件Ⅰ-Ⅲのすべての要件を満たすことである。キャリアパス要件Ⅰは、就業規則や賃金規定等でキャリアアップの規定(任用の要件と賃金の目安)を明示していること。キャリアパス要件Ⅱは、介護職員と意見交換して、資質向上の目標と具体的な研修スケジュール等を作成し、資格取得のための通学に対して勤務シフトで便宜を図り、研修費用の一部を負担するなど。キャリアパス要件Ⅲは、昇給規程を、「経験」「資格」「評価」のいずれかの基準で明確にすること。である。
具体的には、次のような仕組みを言う。「経験」勤続年数や経験年数によって昇進・昇給する仕組み(例:職員の勤務年数が3年未満は一般職員、3~6年は班長、6年超は主任に昇進するなど)。「資格」職員の取得した資格に応じて昇進・昇給する仕組み(例:無資格は一般職員、介護福祉士になると班長、特定介護福祉士になると主任に昇進するなど、又は単に介護職員を対象に、介護福祉士手当、特定介護福祉士手当、社会福祉士手当などを複数設ける形でもよい)。「評価」昇進試験や人事評価の結果に基づき昇進・昇給する仕組み(例:班長試験や主任試験などの昇進試験を設けて、合格すると昇進するなど)。これらのどれかを用いるか、組み合わせて昇進・昇給の仕組みを設け、就業規則等の書面に整備する。この中で、もっとも負担とリスクが無く、算定要件を満たす方法は、単に介護職員を対象に、介護福祉士手当、特定介護福祉士手当、社会福祉士手当などを複数設ける形である。手当の金額は、500円でも構わない。非常勤職員は日給で設定する。これによって、職員が資格を取る度に500円の昇給が実現する。この場合、仕組みがあれば足りる。必ずしも、職員が資格を取り続けることは求められない。そのため、この方法を強く奨めている。
大きく変わる職場環境等要件
介護職員等処遇改善加算の算定要件である職場環境等要件では、生産性向上のための業務改善の取組を重点的に実施すべき内容に改められている。それは、業務改善委員会の設置、職場の課題分析、5S活動、業務マニュアルの作成、介護記録ソフト、見守りセンサーやインカムの導入、介護助手の活用などである。この要件は、令和7年度からの適用であるが、小規模事業者にはハードルが高く、生産性向上項目の㉔を行えば足りるという特例措置が設けられている。しかし、施設系を中心に生産性向上を求める方向は強化されていて、業務改善やICT化に先進的な取り組みを行う介護施設等を評価する生産性向上推進体制加算が創設され、この加算を算定することで職場環境等要件の生産性向上の部分をクリアするとされている。
介護職員処遇改善支援補助金の再確認
最後に、この2月よりスタートしている介護職員処遇改善支援補助金の再確認を行おう。この補助金の支給対象期間は、令和6年2月~5月の賃金引上げ分である。処遇改善計画書の提出期日は4月15日であった。
1月の厚生労働省通知で示されてポイントは、①受給は2月分から5月分の4ヶ月限定で、6月分からは、新たな介護職員等処遇改善加算に包括されること。②基本給等での賃金改善は、4月分と5月分の受給総額の3分の2以上を、4月分と5月分で引き上げること。それ以外の2月分、3月分、および3分の1未満の4,5月分は一時金となる事。③支給月は処遇改善加算等と合わせること。処遇改善加算等が2月遅れでの支給の場合、支援補助金も2月遅れでの支給となること。④令和6年6月以降においても、本事業により講じた賃金改善の水準を維持すること。⑤賃金改善は、ベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること)が基本であること。処遇改善計画書には、ベースアップの見込みを記載すること。実績報告書には、ベースアップの実施有無及びベースアップ率等を記載すること。である。
①は、2月からの6000円相当の支給を令和6年度の改定率に組み込むための措置である。2月から加算とした場合、令和5年度の改定となるため、4ヶ月は補助金で対応して、6月から加算とすることで、令和6年度の改定率となる。大きな違いは、補助金では利用者負担は生じず、加算は利用者負担が発生する事である。
②は、これまでのベースアップ等支援加算と解釈が異なるので注意が必要だ。
③も気をつけなければならない。処遇改善加算等が2月分を4月の給与で支給する場合は、今回の支援補助金も2月分を4月の給与で支給することになる。2月分を2月の給与で払った場合はどうなるのか。支援補助金の支給は5月で終了する。新たな処遇改善加算は、6月分は8月の給与での支給となる。そうすると、6月と7月の処遇改善分の資金源泉が無い事となる。しかし、この2月間は支給しない事は不可である。
④において、6月以降も賃金改善の水準を維持することが要件となっているため、自腹での支給となるのだ。
⑤では、賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げることを求めている。支給対象の職種においては、3分の1未満の一時金での支給が認められている部分以外は、職員間での支給額に格差があってはならないと言うことだ。同じ職種の場合は、全員一律に賃上げを行う必要がある。このベースアップの実施の有無を計画書に記載し、実施したベースアップ率は、実績報告書に記載しなければならない。実施していない場合は、その理由の記載が必要となる。
この補助金は2月から5月の4ヶ月間だけの支給である。6月からは、新たに一本化される介護職員等処遇改善加算に含まれる事になる。5月までは補助金で有るため、利用者の負担は無い。6月からは加算になるため、利用者負担が発生する。また、計算方法が変わり、一月当たりの介護報酬総単位数(介護職員処遇改善加算および特定処遇改善加算の金額を差し引いた金額)となる。補助金では、介護職員処遇改善3加算の金額を含めた金額で計算する。
資料出典
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