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介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件と諸届の解説
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2024/06/10 | カテゴリ: 介護保険法改正
キャリアパス要件を満たす
介護職員等処遇改善加算の区分Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳは、算定要件においてキャリアパス要件が定められており、これを満たすことがポイントである。
【区分毎の算定要件】
- 区分1 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴを満たす
- 区分2 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳを満たす
- 区分3 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを満たす
- 区分4 キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱを満たす
① キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
次の一から三までを全て満たすことが必要である。
- 介護職員の任用の際における職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。 例えば、一般職員、班長、主任といったように、介護職員が登ることが出来る階段を設ければ問題ない。該当者が居ない場合は、空き職種であっても、その仕組みがあれば問題ない。
- 一に掲げる職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。 この場合、必ずしも厳密な賃金規程は必要ない。各階段での給与の目安の金額が分かる状態で問題はない。
- 一及び二の内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。この場合、新入職員にも周知していることが必要である。
ただし、常時雇用する者の数が10人未満の事業所等など、労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所等においては、就業規則の代わりに内規等の整備・周知により上記三の要件を満たすこととしても差し支えない。
② キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
次の一及び二を満たすこと。
- 介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及びa又はbに掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
- 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等(OJT、OFF-JT等)を実施するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。
- 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。
ポイント
この時の意見を交換は、様々な方法によって、可能な限り多くの介護職員の意見を聴く機会(例えば、 対面に加え、労働組合がある場合には労働組合との意見交換のほか、メール等による意見募集を行う等)を設けるように配慮することが望ましいとされている。資質向上の目標とは、事業者において、運営状況や介護職員のキャリア志向等を踏まえ適切に設定する。一例として、次のようなものが考えられる。
- ① 利用者のニーズに応じた良質なサービスを提供するために、介護職員が技術・能力(例:介護技術、コミュニケーション能力、協調性、問題解決能力、マネジメント能力等)の向上に努めること
- ② 事業所全体での資格等(例:介護福祉士、介護職員基礎研修、訪問介護員研修等)の取得率の向上。
- 一について、全ての介護職員に周知していること。
③ キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)
次の一及び二を満たすこと。
- 介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次のaからcまでのいずれかに該当する仕組みであること。
- 経験に応じて昇給する仕組み
「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。 例えば、職員の勤務年数が3年未満は一般職員、3〜6年は班長、6年超は主任に昇進するなど。 - 資格等に応じて昇給する仕組み
介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組みであること。ただし、別法人等で介護福祉士資格を取得した上で当該事業者や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。 例えば、単に介護職員を対象に、介護福祉士手当、特定介護福祉士手当、社会福祉士手当などを複数設けて、資格を取る度に昇給する仕組みでも良い。この場合の手当の金額に定めは無い。この規程があれば良く、該当する職員がいない場合は、支給することは求めない。 - 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。 例えば、班長試験や主任試験などの昇進試験を設けて、合格すると昇進するなど。
- 経験に応じて昇給する仕組み
- 一の内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
④ キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額賃金要件)
経験・技能のある介護職員(経験10年以上の介護福祉士資格者)のうち1人以上は、賃金改善後の年収が440万円以上であること。既に居る場合は、新たに設ける必要はありません。ただし、以下の場合など、例外的に当該賃金改善が困難な場合であって、合理的な説明がある場合は例外措置として設けなくても良いとされている。
- 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
- 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合
また、令和6年度中は、旧介護職員等特定処遇改善加算同様に、賃金改善額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均とする。)以上の職員を置くことにより、上記の要件を満たしますが、令和7年度からは廃止される。
⑤ キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していること。
具体的には、新加算等を算定する事業所又は併設する本体事業所においてサービス類型ごとに別紙1表4に掲げるサービス提供体制強化加算、特定事業所加算、入居継続支援加算又は日常生活継続支援加算の各区分の届出を行っていること。
出典:厚生労働省 介護職員の処遇改善
事業者向けリーフレット[1.1MB]
月額賃金改善要件を満たす
① 月額賃金改善要件Ⅰ(月給による賃金改善) ※令和7年度から適用
新加算のどの区分を算定する場合であっても、Ⅳの加算率で計算された加算額の2分の1以上を基本給又は決まって毎月支払われる手当とすることが必要である。
このときに、賃金総額を新たに増加させる必要はない。手当又は一時金としている賃金改善の一部を減額して、その分を基本給等に付け替えることで、要件を満たす。また、既に要件を満たしている事業所は、新規の取組を行う必要はない。ただし、新規の基本給等の引上げを行う場合には、その基本給等の引上げはベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること)により行うことを基本する。この月額賃金改善要件Ⅰについては、令和6年度中は適用が猶予され、令和7年度からとなる。
② 月額賃金改善要件Ⅱ(旧ベースアップ等加算相当の賃金改善)
令和6年5月31日時点で現に旧処遇改善加算を算定して、かつ、旧ベースアップ等加算を算定していない事業所が、新規に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合の要件である。令和6年度においては、事業所が仮に旧ベースアップ等加算を算定する場合に見込まれる加算額の3分の2以上の基本給等の引上げを新規に実施しなければならない。その際の引上げは、ベースアップにより行うことを基本とする。
なお、令和6年5月以前に旧3加算を算定していなかった事業所及び令和6年6月以降に開設された事業所が、新加算ⅠからⅣまでのいずれかを新規に算定する場合には、この月額賃金改善要件Ⅱの適用は受けない。
職場環境等要件を満たす (令和7年度以降の要件)
令和7年度以降に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合は、以下の通りとなる。令和6年度については、現行の要件が適用される。
⑴、新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合
- ① 区分ごとに2以上の取組を実施。
- ② 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち3以上の取組(うち⑰又は⑱は必須)を実施。
- ③ 職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表。
具体的には、介護サービスの情報公表制度を活用して、新加算の算定状況を報告するとともに、職場環境等要件を満たすために実施した取組項目及びその具体的な取組内容を「事業所の特色」欄に記載する。制度における報告の対象となっていない場合等には、各事業者のホームページを活用する等、外部から見える形で公表する。
⑵、新加算Ⅲ又はⅣを算定する場合
- ① 区分ごとに1以上を実施。
- ② 「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち2つ以上の取組を実施。
⑶、職場環境等要件の特例措置
ただし、生産性向上推進体制加算を算定している場合には、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たす。1法人あたり1の施設又は事業所のみを運営するような法人等の小規模事業者は、㉔の取組を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たす。(「出典:厚生労働省 介護職員の処遇改善」参照)
⑷、令和6年度の経過措置
職場環境等要件の見直しについては、令和6年度中は適用が猶予される。また、新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合は、職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表しなければならない。具体的には、介護サービスの情報公表制度を活用して、職場環境等要件を満たすために実施した取組項目を「事業所の特色」欄で選択する。当該制度における報告の対象となっていない場合等には、各事業者のホームページを活用する等、外部から見える形で公表する。
出典:厚生労働省 介護職員の処遇改善
事務担当者向け・詳細説明資料[830KB]
算定の為の届出関係について
⑴ 体制等状況一覧表等の届出(体制届出)
居宅系サービスの場合は算定を開始する月の前月15日までに提出。
施設系サービスの場合は当月1日までに提出。
⑵ 処遇改善計画書等の作成・提出
事業年度において初めて新加算等を算定する月の前々月の末日までに、新加算等を算定する介護サービス事業所等の所在する都道府県知事等に対してに提出。
⑶ 実績報告書等の作成・提出
各事業年度における最終の加算の支払があった月の翌々月の末日までに、都道府県知事等に対して提出。
例えば、令和6年度の実績報告書の提出期日は、令和7年3月分の加算の支払が令和7年5月であることから、通常の場合、令和7年7月31日となる。
⑷ 複数の介護サービス事業所等を有する介護サービス事業者等の特例
複数の介護サービス事業所等を有する介護サービス事業者等については、別紙様式2及び3の処遇改善計画書等について、事業者(法人)単位で一括して作成して差し支えない。
その際、処遇改善計画書等は、各介護サービス事業所等の指定権者である都道府県知事等に対して、それぞれ上記⑴から⑶までに記載の期日までに、届出を行う。各介護サービス事業所等の指定権者に提出する処遇改善計画書等の記載事項は、「提出先」の項目以外は同一の内容で差し支えない。
⑸ 処遇改善計画書・実績報告書等の様式の特例
同一法人内の事業所数が10以下の介護サービス事業者等については、別紙様式6によって、処遇改善計画書の作成及び提出を行うことができる。処遇改善計画書を別紙様式6により作成した場合でも、実績報告書については、通常の場合と同様に、別紙様式3により作成及び提出を行う。
⑹、賃金改善方法の周知
新加算等を算定する介護サービス事業者等は、当該事業所における賃金改善を行う方法等について処遇改善計画書を用いて職員に周知するとともに、就業規則等の内容についても介護職員等に周知しなければならない。
介護職員等から新加算等に係る賃金改善に関する照会があった場合は、当該職員についての賃金改善の内容について、書面を用いるなど分かりやすく回答しなければならない。
出典:厚生労働省 介護職員の処遇改善
事務担当者向け・詳細説明資料[830KB]
都道府県知事等への変更等の届出について
⑴ 変更の届出
処遇改善計画書の内容に変更があった場合には、下記の①−⑥に応じて変更届出書を届け出る。
⑥に係る変更のみである場合は、実績報告書を提出する際に、⑥に定める事項を記載した変更届出書をあわせて届け出る。
届出の期日は、居宅系サービスの場合は算定を開始する月の前月15日、施設系サービスの場合は当月1日となる。
- ① 会社法(平成17年法律第86号)の規定による吸収合併、新設合併等により、計画書の作成単位が変更となる場合
- ② 複数の介護サービス事業所等について一括して申請を行う事業者において、当該申請に関係する介護サービス事業所等に増減(新規指定、廃止等の事由による。)があった場合
- ③ キャリアパス要件ⅠからⅢまでに関する適合状況に変更(算定する旧処遇改善加算及び新加算の区分に変更が生じる場合に限る。)があった場合は、キャリアパス要件の変更に係る部分の内容を変更届出書に記載し、別紙を提出すること。
- ④ キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)に関する適合状況に変更があり、算定する加算の区分に変更が生じる場合。
また、喀痰吸引を必要とする利用者の割合についての要件等を満たせないことにより、入居継続支援加算や日常生活継続支援加算を算定できない状況が常態化し、3か月以上継続した場合も、同様に変更の届出を行うこと。 - ⑤ 算定する新加算等の区分の変更を行う場合及び新加算等を新規に算定する場合
- ⑥ 就業規則を改訂(介護職員の処遇に関する内容に限る。)した場合
⑵ 特別事情届出書
事業の継続を図るために、職員の賃金水準(加算による賃金改善分を除く。)を引き下げた上で賃金改善を行う場合には、特別事情届出書を届け出る。なお、年度を超えて介護職員の賃金を引き下げることとなった場合は、次年度の新加算を算定するために必要な届出を行う際に、特別事情届出書を再度提出する必要がある。
- ① 新加算等を算定している介護サービス事業所等の法人の収支(介護事業による収支に限る)について、サービス利用者数の大幅な減少等により経営が悪化し、一定期間にわたって収支が赤字である、資金繰りに支障が生じる等の状況にあることを示す内容
- ② 介護職員の賃金水準の引き下げの内容
- ③ 当該法人の経営及び介護職員の賃金水準の改善の見込み
- ④ 介護職員の賃金水準を引き下げることについて適切に労使の合意を得ていること等の必要な手続きに関して、労使の合意の時期及び方法 等
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