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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第1回 令和3年度の介護保険法改正の検証と次期改正の動き

2021/11/01 カテゴリ: 介護保険法改正

1.始まった令和6年度制度改正の動き

令和3年度介護報酬改定も何とか一段落し、そこから解放された感が強い時期である。多くの介護事業関係者は、制度のことは忘れて日常業務に集中したいだろう。しかし、国はすでに、次期令和6年度制度改正に着手している。令和3年度介護保険法改正は昨年6月5日に通常国会で成立したが、その内容は、主な論点の大部分は先送りされて、大きな変更の無い骨抜きの改正というイメージが強い。
しかし、それらは無くなったのでは無く、3年後、令和6年度介護保険法改正に持ち越されたに過ぎない。また、決めるべき事は、然りと盛り込まれている。

2.重層的支援体制整備事業が始まった

まず、令和3年度介護保険法改正においての主な改正点を確認しておこう。第一のキーワードが、重層的支援体制整備事業である。
地域包括センターなどの相談支援業務を強化して、8050問題を抱える地域住民などへの支援体制のため、1、断らない相談支援、2、参加支援、3、地域づくりに向けた支援を市町村が一体的に実施する。
断らない相談支援として、介護(地域支援事業)、障害(地域生活支援事業)、子ども(利用者支援事業)、困窮(生活困窮者自立相談支援事業)の相談支援に係る事業の役割を地域包括支援センターなどに一本化する。同時に参加支援として、断らない相談支援と一体的に行う、就労支援、居住支援、居場所機能の提供など、多様な社会参加に向けた支援を行う。

3.来年6月までに社会福祉連携推進法人が創設

第二のキーワードが、社会福祉連携推進法人の創設である。これは、令和4年6月までに施行される予定だ。
介護事業の大規模化の類型であり、特に地方都市に於ける人材確保や事業拡大における期待が大きい。一般社団法人の形をとり、社員は社会福祉事業を実施している法人が2以上参加することとし、社員の過半数が社会福祉法人であることを必須とする。主なメリットとして、法人の規模が大きい社会福祉連携推進法人が人材の募集を行う事で、単独の法人で行うより有利に求人が出来る。職員研修も一体で提供する事で講師などのコストを抑え、レベルの高い研修を実施出来る。介護ロボット、見守りセンサー、ICT機材などの共同購入の実施。などが主な事業となる。また、社員である社会福祉法人が連携法人に貸付、それを原資として連携法人は他の社員である社会福祉法人への貸付する形で、実質的に社会福祉法人間の貸借が可能となる。など、事業規模の大規模化での優位性を実現するための仕組みとなる。

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4.通いの場の推進

第三のキーワードが「通いの場」である。通いの場とは、総合事業におけるサービスB(住民主体のサービス)の一つの類型である。通いの場を運営するのは、自治体では無く、町内会、商店会などを中心とした住民によるボランティアを中心とした運営となる。その為、ボランティアの確保が重要な課題となる。また、地域の高齢者の参加を促進させることも重要である。ポイント付与や有償ボランティアの推進等、参加促進を図るための取組を進める。ポイント付与とは、地域住民がボランティアとして通いの場に関わったり、介護予防等を目的として65歳以上の高齢者がボランティア活動を行った場合にポイントを付与する。たまったポイントに応じて、商品交換、換金等を行う仕組みを言う。

5.総合事業の利用対象が要介護認定者に拡大された

また、4月1日より、総合事業の第一号事業の取扱が変更されている。
①第1号事業について、要介護者であっても、本人の希望を踏まえて地域とのつながりを継続することを可能とする観点から、市町村が認めた場合には、要介護者であっても第1号事業を受けられることとする。
②第1号事業のサービス価格について、現行は、国が定める額を上限として市町村が定めることとされているところ、この規定を改正し、国が定める額を勘案して市町村が定めることとする。
この2点である。
平成27年度まで予防訪問介護、予防通所介護であったものが第一号事業(介護予防・日常生活支援総合事業)である。この利用者は、要支援認定者であり、要介護認定を受けた時点で、介護サービスに移行するために利用が出来なくなる。これが4月より、本人が総合事業の利用を希望することで総合事業の利用が可能となった。
令和3年度介護保険法改正での先送り項目に、訪問介護の生活援助および通所介護の軽度者を市町村事業に移行する論点がある。この論点が先送りとなった理由は、総合事業の整備が進まないなかで市町村事業に移行しても介護難民になる恐れがあるため、受け皿としての総合事業の整備を進める必要があることが大きい。その一環として、住民主体の通いの場の整備を進めるのであるが、将来の軽度者の総合事業への移行に備えた制度改正と言えるのではないか。いずれにしても、着々と2040年問題に向けた対策が取られていることを実感せざるをえない。

6.補足給付と高額介護サービス費の見直し

今年8月1日より補足給付が変更され、第3段階対象者で年収120万超の者は、給付額を1日当たり710円減額される。ショートステイも1日最大で650円減額される。単身世帯では、預貯金が1000万円以上の者は補足給付が支給されない資産要件が、年収120万超のものは預貯金が500万円に引き上げられる。
また、高額介護サービス費は現在、一律4万4千円である。これが8月からは、年収によって3段階となり、年収770万以上で93,000円となる。最大で14万百円(年収約1,160万以上)の負担を強いられる。高額介護サービス費は対象が高齢者である事から、現実的に年収が770万以上の対象者は極一部に限られるだろう。しかし、ゼロでは無い。

7.令和6年度制度改正に向けた財務省の提言

早々に、財務省の財政制度審議会の中で、令和3年度制度改正で先送りされた各論点が復活している。財務省は、財政健全化に向けた建議の中で、
①利用者負担の更なる見直しやケアマネジメントへの利用者負担の導入など、介護保険給付範囲の見直しを進めることが必要。
②介護サービス事業者の事業報告書等の報告・公表を義務化し、経営状況の「見える化」を実現する必要。
③介護・障害福祉について、利用者のニーズを適切に把握した上で地域の実態を踏まえた事業所の指定が必要。
の3点を示している。

8.居宅介護支援の自己負担1割化などの提言

居宅介護支援事業所の自己負担1割化などが早々に論点とされている。これに対して、日本介護支援専門員協会は有料化に反対する声明を4月30日に出している。それは、自己負担1割化が現実化する可能性が高いことへの危機感だろう。
さらに、介護ベッド1台のみのケアプランなどに対しては、報酬の減額を示唆していることも要注意だ。また、ケアプランに位置づけた介護サービスの数によって報酬を減額する議論も再燃するかも知れない。

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9.自己負担2割を標準とする動き

利用者の自己負担を原則2割負担とする論点も健在だ。それは、一気に引き上げるのでは無く階段を登るように段階を踏んで、最終的に自己負担2割の実現に持って行く。
令和6年改正では、利用者全体の20%である自己負担2割以上の対象を25%に引き上げることが想定される。この点については、政府は医療保険の後期高齢者への自己負担2割化を実現したことから、次は介護保険の自己負担2割化の実現を目指すだろう。これは既定路線とも言える論点であるのだ。
医療保険も介護保険も、想定される自己負担2割対象の分岐点は年収200万円である。この年収基準となった場合、企業年金などの受給者の多くは該当すると思われる。そうしたときに利用者は、介護も医療も、現在の支払額の倍額を支払うことになるのであるが、年金自体の受給額は変わらない。その時には、利用するサービスを選別して、今までと同額の支出に抑える利用者が出ることは間違いない。その事態を想定して、支払が倍になっても使い続けたいと思わせる介護サービスの提供が出来るかが、重要だ。それを、ここ数年で実現しなければならない。これは、多くの介護サービス事業者にとっての大きな経営上の分岐点になっていく。

10.医療系介護施設の多床室料の全額自己負担化の提言

介護老人保健施設や介護医療院(介護療養型医療施設は令和5年度で廃止)の多床室料を全額自己負担とすることも論点だ。今年度改正では、介護療養型医療施設を介護医療院に転換することを優先するとして先送りされた項目であり、次期改正では、介護療養型医療施設の廃止後と言うことで、実現の可能性は高いだろう。
また、今年の4月から総合事業の第一号事業が実質的に要介護者に利用が拡大されたことは、近い将来には軽度者が市町村事業に移行するための布石と考える事も出来る。区分支給限度額の対象外とする加算の見直しも示唆している。今回、訪問介護の特定事業所加算が介護報酬改定審議の最終段階で、区分支給限度額の対象から外す方向が、最後の最後で見送られたことも、その方向があったからと思われる。

11.事業規模の大規模化の提言

事業規模の拡大策も変わらぬ方向性だ。これは2011年に発刊された故・池田省三氏の「介護保険論」(中央法規出版)の時点から、厚生労働省の方向が根本的に変わっていないことを物語っている。氏はそのなかで、事業者の過半数は零細企業であり、キャリアアップシステムの構築は絶望的。研修もままならないので専門性が低く、経営コストが高く利益率の低下を招く。よって、100人程度の事業者に再編成が必要と結論した。
確かに介護事業のビジネスモデルはスケールメリットの追求にある。現実的な問題として、令和3年度介護報酬改定において、BCPが義務化され、LIFEが導入されるといった中小事業所にはハードルが高い項目が並ぶ。LIFEは義務化では無いにせよ、自立支援関連の加算はLIFEを活用しないと算定出来ない方向が見えてきている。一般の加算も、上位区分が設けられ、入浴介助加算のように、既存の要件を満たすだけでは減収となっている。
今後、同じサービス間で確実に二極化が加速する。池田氏は、その著書で、質の低い事業所は指導を強化しなくても、利用者から見放されて自然淘汰されると記している。

12.来年度は令和6年度介護保険法改正審議が行われる

これらの財務省の提言については、骨太の方針には明記されていない。それはコロナ禍が続いている状況で、自粛したにすぎない。令和6年度介護保険法改正の審議は、来年度1年を掛けて、社会保障審議会介護保険部会で行われ、来年末には方向が決まる。再来年は介護報酬改定審議となるのだ。令和6年改定は6年に一度の診療報酬とのダブル改定の年である。例年、大規模な制度改正が実施される。心して準備を進めなければならない。

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