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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第10回【後編】令和6年介護保険法改正審議、財務省から衝撃の規模拡大策

2022/06/28

前編こちら: 第10回【前編】令和6年介護保険法改正審議、財務省から衝撃の規模拡大策

協働化の象徴は、社会福祉連携推進法人

今年度からスタートする新法人体系である社会福祉連携推進法人は、介護事業の大規模化の類型であり、協働化の象徴である。

特に地方都市に於ける人材確保や事業拡大における期待が大きい。社会福祉法人を中心として、NPO法人や株式会社などが社員として参加し、登記上は一般社団法人の形をとる。同様の仕組みとして、医療には地域医療連携推進法人がある。社員は社会福祉事業を実施している法人が2以上参加することとし、社員の過半数が社会福祉法人であることを必須とする。議決権(社員1人に議決権1)の過半数を、社会福祉法人とする制約もある。社会福祉連携推進法人自体では、介護サービスの許認可は取れない。

介護サービスの提供は従来通り、社員である各法人が提供する。具体的な業務内容は、「地域共生社会の実現に資する業務の実施に向けた種別を超えた連携支援」、「災害対応に係る連携体制の整備」、「福祉人材不足への対応」、「設備の共同購入等の社会福祉事業の経営に関する支援」などである。それ以外の機能として、社員である施設が人材の募集を連携法人に委託する求人代行業務、共同研修の実施、共同購入の実施などを主な事業とする。また、現在の制度では社福法人間の資金の貸借は認められていない。連携法人では、社員である社会福祉法人が連携法人に貸付けて、それを原資として連携法人は他の社員である社会福祉法人への貸付を認めることで、実質的に社福法人間の貸借を可能とする。職員研修も一体で提供する事で講師などのコストを抑え、レベルの高い研修を実施出来るなど、事業規模の大規模化での優位性を実現するための仕組みとなる。その活用次第では、今後の社会福祉法人の事業展開にも大きな影響を与える可能性が高い。

社会福祉連携推進法人制度の実施の前に、厚生労働省は。令和3年度老人保健健康増進等事業として「介護経営の大規模化・協働化に関する調査研究事業」をMS&ADインターリスク総研に委託して実施した。大規模化の取り組みが進んだ事例では、必ずしも大規模化を目的としたものではなく、地域ニーズに応えた結果としての大規模化となっている。大規模化はあくまで手段で、目的ではない。また、協働化に取り組む目的は、「地域共通の課題に対処すること」、「地域の福祉サービスを守ること」であって、必ずしも協働化を目的としたものではなく、あくまで手段である。

地域のニーズに応えていった結果、地域からの信頼や協力が得られる。このことで、再拡大を行いやすくなる「好循環」が得られて、より一層規模が大きくなっている。法人単独では難しいサービスも協働化を通じて互いに補完し合うことで、無理なくサービスの拡充が図られる。それは、財務的な恩恵のみならず、共同での感染対策用品の調達、災害時の連携の検討が進むなど、一部では有事の際の対応力の強化が図られていたことも特筆に値する。

しかし、大規模化において、人財確保や教育体制の整備が課題となるケースが多い。これら人財面でのマネジメント体制が整わなければ、大規模化の推進は逆に運営上の障害やリスクになる可能性がある。特に管理職の育成が進まなければ、拠点の拡大の足かせになり得る。として、大規模化と人材育成はセットであると結論付けた。

出典:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 資料

大規模化の課題は、人材育成にある

財務省の提言や厚生労働省の調査結果は、実は至極最もである。介護事業に於けるビジネスモデルがスケールメリットの追求にある事は周知の事実だ。また、介護サービスの多くは、定員が設けられていて、定員を超えてサービス提供すると、定員超過減算となる。同じ箱の中で、収益を伸ばそうとすると、新たな加算の取得、業務の効率化による経費の削減などしか方法が無い。よって、必然的に拠点を拡大することが求められる。

その方法は、新規開業やM&Aによる事業譲渡となる。いずれの場合も、拠点の管理を任せられる幹部職員の育成が不可欠となる。一定レベルの管理者を育てることが出来ないと、介護の質の低下を招き、法人全体の足を引っ張ることとなる。コロナ禍が始まって、3年目となり、収益を確保するために新たな加算算定に関するコンサルティング依頼も増えている。同時に、BCP作成やLIFEの活用を委員会制として、その責任者を幹部職員に担当させることで、幹部育成に繋げる法人も多い。しかし、中小規模の法人では資金や人材に制限があり、効果的な結果を生みにくい。そのために、地域のなかで連携して職員研修や、BCPやLIFEの活用を共同して行うといった取組が重要となる。運営指導対策として、コンプライアンスチームを作り、共同して内部監査を行う部門を作ることも有効だろう。制度が大きく変貌する中、介護事業者も変わることが求められている。従来には無い発想の転換が急務である。

 

以上が令和6年介護保険法改正審議、財務省から衝撃の規模拡大策のチェックポイントとなります。

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