【業界トップシェア】介護・障がい福祉システムならNDソフトウェア

コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

再注目の介護保険外サービスとそのポイント

2024/08/06 カテゴリ: 介護保険法改正

ビジネスケアラー対策としての介護保険外サービス

2024年6月21日、骨太の方針2024が閣議決定された。この中で、「深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に、介護保険外サービスの利用促進のため、自治体における柔軟な運用、適切なサービス選択や信頼性向上に向けた環境整備を図る。」と記されたことから、再び、介護保険外サービスが注目される事となった。ヤングケアラー問題については、ケアマネジャーの法定研修カリキュラムに盛り込まれ、特定事業所加算の算定要件に位置づけられてため、関心が高まっている。ビジネスケアラーとは、働きながら親などの介護をする人を言う。現在の高齢化社会の中で増え続けていて、経済産業省は、2030年には家族介護者のうち4割、318万人がビジネスケアラーになると予測した。その離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額は9兆円に上るとされている。仕事と介護を両立するための手段として介護保険外サービスに脚光が浴びているのだ。

介護保険外サービスの大きな問題は、全額が自己負担となる事である。しかし、介護保険サービスでは、緊急の対応が出来ず、事前にケアプランへの位置づけが必要など融通が聞かないことが欠点である。仕事をする上で、急な出張や夜の接待などで家に居ることが出来ない時間などに、保険外の訪問介護サービスがあると便利である。ただし、前述したように、費用負担も馬鹿にならない。使いすぎると、生活に支障を来する。今後は、国が主導しての管理機能も必要であろう。

出典:経済産業省における 介護分野の取組について 2024年3月 経済産業省
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001221559.pdf

SOMPOホールディングスとRIZAPグループの業務提携

そのような中で、7月1日、SOMPOホールディングスとRIZAPグループが、業務提携の締結を報告する記者会見が行われた。今後は、SOMPOケアの介護保険サービスと、RIZAPの保険外サービスがシームレスに提供される環境が構築されていくだろう。この提携は、今後のデイサービスにとって大きな転換期となる可能性が高い。今回の提携によって、既存のデイサービスやデイケアの淘汰が進むことが懸念される。RIZAPやChocoZAPはアウトカムを明確に示すことに長けている。リハビリ特化型デイサービスとバッティングするとともに、単なるレスパイト型デイサービスの経営環境は厳しくなっていくだろう。これからは、成果が見えるリハビリテーションの提供が成功要因となる。なんちゃってリハビリでは生き残れない時代がやってくる。今回の提携によって、SOMPOケアの利用者家族は、特別価格でRIZAPやChocoZAPを利用出来る可能性がある。そうすると、ビジネスケアラーである介護者の健康維持にも繋がるだろう。これも一つの介護保険外サービスの形となっていくのではないか。

2016年から2018年が第一期介護保険外サービスのピーク

介護保険外サービスが大きく注目されたのは、2016年厚生労働省から「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集」が出され、厚生労働省から「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」通知が2018年9月28日付けで発出された頃が一つのピークであった。これらによって、介護保険外サービスへの記載緩和措置が明確になった。当時は、東京都豊島区において、混合介護のモデル事業が実施され、通所サービスの保険外サービスの一環として、送迎費用を取っての移動支援や同行援助を行うモデル事業の実施が検討された。この時の検討が、令和6年度介護報酬における共同送迎の規制緩和や福祉Moverサービスにつながったと言える。これらの試みが表面化したことで、保険外サービスが一層の拡大されることが期待された。しかし、介護業界は慢性的な人材不足であり、介護保険外サービスにも人材が必要と言うこともあって、尻つぼみで現在に至った経緯がある。

現時点での介護保険外サービスの緩和措置

現時点での介護保険外サービスの緩和措置をまとめておこう。この通知は、未だに浸透しているとは言えないからだ。厚労省は、2018年の通知で、以下①~④については、通所介護とは明確に区分されたサービスであるために、一定のルールを遵守する場合に介護保険外サービスとして提供可能とした。解禁された保険外サービスは

  1. ① 事業所内において、理美容に加え、巡回健診、予防接種を行うこと。
  2. ② 利用者個人の希望により事業所から外出する際に、保険外サービスとして個別に同行支援を行うこと。
  3. ③ 物販、移動販売、レンタルサービス
  4. ④ 買い物等代行サービス

の4点である。
これらを提供する場合のルールは

  1. ① 両サービスを明確に区分して、それぞれ文書で記録すること。
  2. ② 利用者等に対して、あらかじめ運営規程や重要事項説明書で保険外サービスの内容等を詳細に説明して、同意を得ていること。
  3. ③ 通所介護の利用料とは別に、請求書などで費用を請求すること。通所介護の提供時間には保険外サービスの時間を含めないこと。
  4. ④ 保険外サービスを提供する事業者からの利益収受は禁止。たとえば、予防注射を依頼した病院からのバックマージンの授受などは不可ということです。
  5. ⑤ 消費者からの苦情・相談窓口の設置等の措置を講じること。
  6. ⑥ 外部事業者が保険外サービスを提供する場合、事故発生時の対応を明確化すること。

なお、これらの規定は、通所サービスにのみ適用されている。
そして、訪問介護サービスについては、大きな緩和措置が無く、現在に至っている。当時の通知において、訪問介護では下記の通り緩和措置が盛り込まれなかった。

  1. ① 介護保険サービス提供時間に保険外サービスを同時に提供する事は出来ないこと。
  2. ② 介護職員の指名料や、提供時間を優先的に指定する場合の指定料を別途に請求することは認められないこと
  3. ③ 保険外サービスを提供する場合は、事前に利用者に対して重要事項を説明し、同意を得ること。
  4. ④ 保険外サービスの提供時間は、介護サービスの勤務時間に含める事が出来ない事。

などの基本ルールが再確認されたにすぎない。唯一、サービス提供責任者の兼務が緩和されている。2018年の通知以前は、常勤専従の規定があるサービス提供責任者は保険外サービスを担当することを認めない指導が一般的であった。この通知によって、サービス提供責任者の業務に支障が無い場合については、保険外サービスを提供することを認めることが明記されて、一部の規制緩和も盛り込まれた。今回の骨太の方針2024によって、訪問介護サービスについての規制緩和が期待される。

介護保険外サービスのアイデア

介護保険外サービスは、介護事業者間に粛々と拡大している。これまでの介護保険外サービスと言えば、デイサービスではお泊まりサービス。訪問介護では、病院の付き添いや保険外の生活援助などが目立った動きであった。要介護者の旅行やスポーツ観戦などに付きそうトラベルヘルパーなども需要が高まっている。墓参りの代行、葬祭関連、遺言、家庭での看取りなどのサービスも依然としてニーズがある。ビジネスケアラー向けでは、退院後の親への食事の提供、認知症の親の家の中での見守り、家族代わりの話し相手、エイジドシッターなどがある。

例えば、ペットヘルパーというサービスがある。一人住まいの高齢者が増加している現代に於いて、高齢者の唯一の家族がペット動物であることも珍しくない。しかし、そのペットにも世話が必要で、犬などの場合は毎日の散歩は欠かせない。しかし、高齢者にとって歩くという日常動作は年を重ねる毎に厳しさが増す。また、ペットも高齢化するし、そのスピードは人間の比ではない。家族であるペットの世話は、高齢者にとって大きな問題となっている。ペットヘルパーは、ペットへの食事の用意、トイレ清掃、散歩、遊び、グルーミング、ペットに関する簡単な家事などを代行する仕事である。基本的に同じ担当職員がケアを行う為にペットも安心できる。今後は、飼い主に変わってペットの世話をするニーズも増えることが予想される。動物は総じて人間より短命である。飼い主より早く介護が必要になり、葬儀が行われることも希ではない。ペットのための訪問サービスも提供されている。ペットは家族同然で、同じ介護保険サービスの事業所が、保険外サービスとしてペットへの介護サービスを提供することは喜ばれる。

「人、もの、資金」を活かすことが課題に

介護保険外サービスを本格的に導入する場合、人材の確保の問題が第一に挙げられる。介護事業でも人手が足りないのに、それ以外に人手を割けないのである。第二に、通常は一割負担で利用している利用者が、十割を負担することを如何に納得させるか。この部分は、ケアマネジャーの理解不足にも繋がる。最も重要なポイントは、提供するサービス内容である。そして、運営指導などで指摘されないコンプライアンス体制を確立することである。

まず、事業所の持つ財の検討から入る。「人、もの、資金」である。今の財を活用してすぐに出来ることからスタートすべきだ。例えば、通所介護のパワーリハ・マシンである。リハビリ型デイでは、マシンも数種類が設置されている。しかし、サービス提供時間以降は利用されていない。土日は丸一日空いている。これを会社帰りの会社員や土日では近所の主婦層を対象に小規模フィットネスセンターとして夜8時頃まで解放したらどうか。人の配置は1名で足りる。月の会費はChocoZAPを下回る、月2千円として、予約の上で利用できる。追加利用やトレーニングプラン作成等をオプションとして提供する料金体系も良いだろう。地域への周知が進んで介護サービス利用者の紹介が増えるという効果も期待できる。デイサービス利用者の家族は、割引価格で利用できるなどの設定も良いだろう。

また、利用会員から介護職員にリクルートした事例もある。掃除や病院の付き添いなどの生活援助サービスは定額のパッケージとして料金体系を分かり易く設定したい。これも、一般家庭からの依頼も期待できる。人の確保の部分では、地域の元気な高齢者に手伝ってもらうことも検討項目だ。国はすでに、生産性向上の一環として、介護助手制度を推奨している。求人広告や職員の人脈を活用して人を確保出来る。特に介護の資格は要らないので介護職員より雇用は容易であろう。介護保険外サービスは、頭と時間さえ使えば、無限に創意工夫することができるのがメリットだ。定期的に検討会議を開いて、新しいサービスを開発するために職員全員で知恵を絞ることも大切な要素だ。介護保険サービスは基本的なサービスと料金はどこも同じである。介護保険外サービスの提供で、事業所間の差別化を進めることが重要である。

保険外サービスの利用者は限定される

介護保険サービスは、自己負担1割で利用できる事もあって、その利用対象は幅が広い。しかし、介護保険外サービスの利用は、利用者の収入や負担能力に左右されるだろう。一言で高齢者と言っても、その所得階層は多岐にわたる。所得の最も低い階層の利用者のニーズは、正価の1割の自己負担で利用できる公的な介護保険サービスの範囲内に限られるだろう。そこには、保険外サービスのニーズは殆どないといえる。高い所得階層は、個別のニーズを満たすことを条件に、10割負担が必要な保険外サービスを躊躇無く利用することが期待できる。高付加価値を提供する高所得層向けの高額サービス商品という市場カテゴリーも充分に存在するのだ。差別化されたオンリーワンのサービス開発がキーワードとなる。しかし同時に、新たなサービスの開発という投資も必要となる。職員には、上質なホスピタリティが求められる。ホスピタリティは、高所得者向けの高額サービスでは特に重要なスキルである。高価なサービスを提供する施設や設備においては、高級感が漂う雰囲気作りや上質な備品の配置が必須となる。一般向けには、パッケージプランとして割安感を出した商品開発を考えることで、利用対象が拡大する。人的資産に限りが有る場合には、その提供対象を利用者家族に限定するなど、メンバーシップ特典を付与して新規利用者の獲得に繋げる方法も有効である。

いずれにしても、新たな介護保険外サービスというキーワードが急浮上した。これをビジネスチャンスと捉えることも、今後の経営戦略での選択肢になった。既存の概念にとらわれずに、その可能性を追求すべきだろう。

ほのぼのNEXT

介護事業者さまの現場をサポートする「ほのぼのNEXT」は、事業所様の運用に合わせて機能を選んでご使用いただけます。
まずはお気軽にお問い合わせください。

記事一覧

介護業界における⽣産性向上の取り組みオンラインセミナー 2024年度最新LIFE オンラインセミナー LIFEの有効活用と新たな加算で設けられた重要ポイント NDSコラム

PAGE TOP