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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第25回 令和6年介護保険制度改正の中間検証

2023/09/14 カテゴリ: 介護保険法改正

2024年 介護報酬改定の論点

8月7日の社会保障審議会介護給付費分科会で、令和6年度介護報酬改定の一巡目の審議が終了し、各サービスの論点が出揃った。

① 定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護

定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護については、近い将来の統合、一本化についての議論が始まる。

② 小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護については、国の重点化サービスで有ることから、その普及促進策が重要なテーマとなる。同時に、令和6年度介護保険法において、多機能型が機能訓練の場であることが明記されたことから、機能訓練関連の加算や算定要件の強化が行われるだろう。

③ 通所介護と通所リハビリテーション

通所介護と通所リハビリテーションについては、LIFEの活用と共に、自立支援への取組が更に求められるだろう。ただし、LIFEの正常化が遅れていることもあって、成功報酬の具体的な導入は余り進まないとみている。同時に、令和3年度介護報酬改定で細分化された入浴介助加算の区分Ⅱにおける算定率が10%以下と低すぎるため、単に報酬を引き下げただけという批判が出ている。何らかの対策が取られるだろう。

④ 訪問介護と訪問看護

訪問介護については、有効求人倍率が15.5倍と状況が悪化していることから、人材確保策が急務となる。外国人研修生の訪問介護への対象拡大も検討されているが、反対意見も根強く、予断を許さない。訪問看護は、これまで同様にリハビリ職の訪問リハへの規制強化が焦点となるだろう。地域包括ケアシステムの深化と共に、大規模化とターミナルケアへの対応も加速するだろう。

⑤ 居宅介護支援事業所

居宅介護支援事業所については、ケアマネジャーへの処遇改善加算の創設や、ケアプランデータ連携システムに関連するICT加算の創設などが論点となっていく。4月にスタートしたケアプランデータ連携システムの登録事業者は7000と伸び悩んでいる。今後、LIFEとのシステム連携という話も入って来た。LIFEは、今後はケアマネジャーが主宰するサービス担当者会議での活用が現実味を帯びてくる。それによって、LIFEの立ち位置が一気に変わる可能性が高い。

⑥ 介護老人福祉施設と介護老人保健施設

介護老人福祉施設の論点は、重度者の増加に向けた医療的な対応の強化と、医療介護連携である。医師や看護師の配置が問題となっていく。介護老人保健施設は、在宅復帰をさらに求めると言うことで、長期滞在型に不利な報酬改定の方向が見えている。また、特養同様に医療面の充実と、リハビリテーションの強化である。かかりつけ医薬剤調整加算の見直しも論点となる。審議に於いて、多くの理事から、介護保険施設はかつて無い危機的な状況に陥っているとして、介護報酬の引き上げを求める声が相次いだ。介護老人福祉施設の要介護3以上の入居制限の緩和は、今回は見送られている。

出典 第218回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
【資料2】小規模多機能型居宅介護 [3.6MB]

介護報酬改定の大テーマの中身

今回の介護報酬改定の大テーマは、以下の4つである。

  • ① 地域包括ケアシステムの深化・推進
  • ② 自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
  • ③ 介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
  • ④ 制度の安定性・持続可能性の確保

①は、重度化し医療行為が必要となっても、可能な限り在宅で過ごし、在宅で看取るという地域包括ケアシステムの目的を更に進化させていくために、訪問看護や看護小規模多機能型などを充実させる方向である。また、ヤングケアラー問題も取り上げられていく。②は、LIFEの活用の拡大と成功報酬の導入である。訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算の創設の可否。通所リハビリテーションへの成功報酬の拡大などが注目ポイントとなる。③は、処遇改善の充実と3つの処遇改善加算の一本化、有効求人倍率が15.5倍を超えた訪問介護の対策。ICT化の促進がテーマとなる。④は、介護報酬における「やり繰り」の部分で、既存の加算を含めて見直しが成される。

出典 第217回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
【資料3】令和6年度介護報酬改定に向けた検討の進め方について

小規模多機能型と看護小規模多機能型を考察する

令和6年度介護報酬改定審議の中で、小規模多機能型と看護小規模多機能型については、「更なる普及が求められる中、期待されるサービスを安定的に提供するなどのために、どのような方策が考えられるか。」という共通の論点が提示されている。

この2つのサービスについては、厚生労働省の最重点サービスとして位置づけられているにも関わらず、未だに経営が安定しない状況が続いている。その原因のひとつが施設ケアマネジャーの存在とされる。居宅介護支援事業所のケアマネジャーが利用者を多機能型に紹介する場合、結果として自らの利用者を手放すこととなり、その結果としてケアマネジャーが紹介をしないからだ。そのため、過去の介護報酬改定審議においても、多機能型のケアマネジメントを居宅介護支援事業所に移すことが論点にあがってきたが、使い放題を助長して管理機能が働かないなどの理由で見送られてきた経緯がある。

今回の審議に於いても、施設ケアマネジャーの見直しを求める声が多く、施設ケアマネジャーと居宅介護支援のケアマネジャーを利用者が選択できる「選択制」を提案する声も出ているようだ。

多機能型のケアマネジメントを居宅介護支援事業所が担当できるとすれば、ケアマネジャーにとっては、介護サービスの選択肢として多機能型を位置づけやすくなり、今まで以上に利用が進むことが期待出来る。そして、今回の介護報酬改定でその可能性が高いと見ている。その場合、通所介護にとっては、確実に競合先となる。

必須となる機能訓練と進むデイサービスの業界再編成

令和6年度介護保険法において、看護小規模多機能型の役割に「機能訓練」が明記された。今後は、多機能型に於いても機能訓練の場としての役割が強化される。リハビリ特化型の多機能型も、今後の差別化の中で想定される。その時、機能訓練を提供しない預かり中心のデイサービスは、更なる苦戦を強いられることになる。すでに、コロナ禍の影響で利用者のニーズやケアマネジャーの価値観が大きく変化して、機能訓練を提供しないデイサービスが選ばれなくなってきている。

来年度に創設予定の新しい複合型サービスが、大方の予想通り、デイサービスと訪問介護、若しくは、デイサービスと訪問介護と訪問看護の組み合わせであった場合、多機能型、デイサービスとの競合関係となることは避けられない。その場合、競争力で勝るのは、機能訓練に於いて成果を出す事業所となるだろう。同時に、LIFEを活用出来ることも重要となる。LIFEは6月30日より、暫定版が終了し、利用者別フィードバックの提供が始まっている。今は、各事業者がスタートラインで横一線であるが、今後は確実に事業者間格差が開いていく。

年末までに結論を出すとされた、自己負担2割の対象拡大(全体の20%から30%へ)が確定した場合、確実に利用控えが生じて、使われなくなる事業所が出て来る。自己負担が倍額となっても、使いたいサービス、使わなければならないサービスで有ることが求められる。

いずれにしても、令和6年度介護保険制度改正は、預かり中心の昔ながらのデイサービスにとっては大きな逆風となる可能性が高い。今のうちから、機能訓練への取組を始めないと手遅れとなる。そして、LIFEの活用は必須である。ただ、機能訓練への取組とは、パワリハの導入だけでは無い。機能訓練には、椅子やボールなど、身近な備品を使って出来るプログラムが多数ある。重要なのは、利用者の身体能力を分析し目標を立てるアセスメント課程で、しっかりと利用者一人一人の状態を把握し、利用者に寄り添った機能訓練を提供出来るかである。

デイサービスの事業所数は飽和状態にある。平成28年から今に至るまでの8年間、事業所数が4万3千事業所から変わっていない。毎年、相当数のデイサービスが新規開業する裏で、同数の事業所が廃業していることは前回に触れた。その事業所数が、多機能型のケアマネジメントの居宅介護支援事業所への移行や、新たな複合型サービスによって減少に転じる可能性がある。令和6年度介護保険制度改正を控えて、デイサービス経営者にはマネジメント力が問われている。

出典 小濱介護経営事務所作成

介護報酬改定全体の注目点

第一に、現時点で3種類ある介護職員処遇改善加算の一本化の審議である。一本化と言っても簡単では無い。3つ其れ其れに異なる算定要件があるからだ。最も現実的なのは、現行の3加算を廃止して、新たな処遇改善加算を創設する事だ。6月28日の審議では、居宅介護支援事業所のケアマネジャーへの処遇改善加算の創設を求める声も出ている。この論点については、三年前の令和3年度改定審議でも実現ギリギリまでいったが、ケアプランの有料化と紐付きだったため、ケアプラン有料化が先送りされたことから自然消滅している。今回は、紐付きでは無いため、実現の可能性は決して低くは無いだろう。

第二に、5月11日の財務省財政制度分科会において提言された、居宅介護支援事業所への同一建物減算の摘要と、訪問、通所サービスの減算の厳格化である。これも、今回の審議の重要な論点となっていく。

第三に、訪問サービスと居宅介護支援事業所へのLIFE加算の創設である。これについては、昨年と一昨年にモデル事業が実施されているが、国の予算次第という側面もある。訪問サービスは微妙ではあるが、LIFEが法定研修に位置づけられることから、居宅介護支援事業所へのLIFE加算の創設は、可能性が高い。

第四に、在宅サービスへの身体拘束廃止未実施減算の拡大である。この点については、昨年12月20日に取りまとめられた介護保険部会意見書での記載と、すでに障害福祉サービスでは訪問サービスを含めての摘要となっている事から確実であろう。

第五に、介護報酬改定の中で取りまとめられる、12年ぶりに創設される新たな複合型サービスの全容である。現時点に於いては、デイサービスと訪問介護の組み合わせを予想する声が多い。もうひとつ、デイサービスと訪問介護、訪問看護の3サービスの組み合わせも視野に入ってきた。この想定の場合、既存の看護小規模多機能型、小規模多機能型、通所介護、訪問介護への影響は避けられない。これが、新たな業界再編に繋がる可能性もある。大注目せざるを得ない。

介護報酬改定の今後のスケジュール

9月に業界団体ヒヤリング。10月から12月にかけて二巡目の審議を行う。この二巡目で多くの論点は取り纏めされるが、一部の論点について三巡目の審議を行う。12月中旬には、介護給付費分科会としての意見が取りまとめられて結審となる。12月下旬に令和6年度介護報酬改定の改定率が示される。年が明けて、2024年1月下旬、遅くても2月初旬に、令和6年度介護報酬単位が答申される。算定要件である解釈通知とQ&Aは3月初旬となる見込である。

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