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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第10回【前編】令和6年介護保険法改正審議、財務省から衝撃の規模拡大策

2022/06/10

進む介護保険法改正審議と福祉用具の在り方検討会など

社会保障審議会介護保険部会において、令和6年度介護保険法改正のための審議が進められている。但し本格的に論点が明示されて議論されるのは、7月の参院選後であろう。その後、12月には、「介護保険制度の見直しに関する意見」が取り纏められ、来年1月から会期となる通常国会に、改正介護保険法案(仮称)が提出されて、6月には成立の見込である。先行して、福祉用具の見直しについて、「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」で審議が進められている。

現在、要介護度に関係なく給付対象となっている廉価な品目(歩行補助杖、歩行器、手すり等)については、貸与ではなく販売のみとすべき。と言うのが国の主な主張だ。

ケアプランにおいて、福祉用具貸与のみのケースの報酬引き下げも検討課題である。貸与ではなく販売となれば、ケアプランも不要となる。審議においては、貸与でケアマネジャーが定期的にモニタリングで居宅を訪問することの有用性を訴える声が多い。販売であれば、アフターフォローも無く、利用者の状態変化が掴みにくくなる。また、購入後、短期間で介護施設に入所となった場合、その用具は廃棄されることが多い。それらは、ケアプランの報酬には変えられない、重要な貸与を継続すべきポイントであろう。同様に、福祉用具専門相談員等が行う、利用者に対する福祉用具の使用に関する支援の重要性も再確認されている。今後の審議の結果を取りまとめた意見が、介護保険部会に提出される。

ケアの質の評価基準としてのLIFEの活用

内閣府の規制改革推進会議に於いては、 ユニット型特養の1ユニットの定員を「おおむね15人以下」へ緩和し、介護施設、特定施設の人員基準を、現行の3対1から、4対1に緩和する議論が行われている。今後、先進的な特定施設などでモデル事業を実施し、その成果も踏まえて令和6年改正審議に於いて、実施の可否が検討される。

一律での緩和では無く、一定の要件を満たした場合の限定的な緩和であるが、職員の負担増や、ケアの質の低下が懸念される。その場合、ケアの質の評価においては、LIFEの活用が検討されている。

LIFEでは、令和3年度介護報酬改正で加算等の位置づけがされなかった訪問サービスと居宅介護支援について、LIFE活用のモデル事業が実施され、昨年10月から今年1月までの経過が報告された。これは、令和6年度介護報酬改正においての加算創設を念頭においたものである。そして、このモデル事業に於いて提供されたフィードバック票は、現在において提供されている暫定版では無く、本来の利用者別のグラフ表示のものであったことは、本格的なフィードバック票の提供が近いことを予見させる。特に、居宅介護支援でのLIFE活用については、直接にLIFEにデータ提供するものではなく、ケアプランに位置づけた担当事業所が、サービス担当者会議に各々のフィードバック票を持ち寄り、担当事業者間で共有して検討し、必要に応じてケアプランに反映させる方法が取られた。この形が、居宅介護支援の加算になるのであれば、今後、担当事業者がLIFEを活用していなかった場合、ケアプランへの位置づけに影響が出ることも予想される。この意味でも、LIFEの活用は急務となった。

LIFEは、訪問サービスと居宅介護支援への位置づけが完了する令和6年以降、医療データベースとの連動も計画されている。また、次期、令和6年度介護報酬改定では、通所リハビリテーションに月額包括報酬化と3段階の成功報酬の導入も予想される。LIFE関連の加算は、あくまでもプロセスを評価するものだ。リハビリなどの成果・結果と言ったアウトカムは評価されない。それは、別途、成功型報酬体系が導入されていく。LIFEの活用状況次第では、通所リハビリテーションのみならず、他のサービスへの導入も視野に入るだろう。

財務省財政制度分科会の影響

令和4年4月13日に、財務省の財政制度分科会において、令和6年度制度改正における審議が行われた。

令和6年度介護保険制度面での主な論点は、利用者の自己負担2割への段階的な引き上げ。居宅介護支援の自己負担1割化。介護老人保健施設、介護医療院の多床室料の全額自己負担化。区分支給限度額の特例措置の見直し。訪問介護、通所介護の軽度者を市町村事業に移行。一般法人を含めた決算書の公表の義務化などである。

軽度者の市町村事業への移行についても、令和3年度改正で第一号事業が要介護認定者も利用可能となったことから、いつでも実現可能な状況となっている。利用者の自己負担2割への段階的な引き上げでは、診療報酬が今年10月1日から、75才以上の後期高齢者に対して、年収200万円以上を新たに自己負担2割となることの影響が大きい。年金の受給額は減少傾向にあるため、介護サービスを含めて利用するサービスが選別されるだろう。

更に、令和6年から介護保険の自己負担2割の対象が拡大されるとなると、その影響は計り知れない。今後は一層、利用者にとって、使いたいサービス、必要なサービスであることが求められる。老健などの多床室全額自己負担も、前回は優先事項とされた介護療養型施設が廃止となっているため、実施には支障が無い。

ただし、これらの提言は、財務省の意見であって、厚生労働省ではない。そのため、財務省の影響力は、どこまであるのかと言った質問を受けることも多い。財務省は、国の財布の紐をにぎっている機関だ。どこの家庭でも、財布の紐をにぎっている者は強いですね。と答えることにしている。

大規模化と協働化の方向制

財務省の提言での最大の問題が、事業規模の拡大策、協働策である。資料を2ページも用意していることから、その力に入れ方が伺い知れる。

介護サービスの経営主体は小規模な法人が多いことを踏まえ、今年度から施行される社会福祉連携推進法人制度の積極的な活用を推進していくとともに、経営の大規模化・協働化を図ることが不可欠であるとしている。経営の大規模化・協働化の課題は、新型コロナの感染拡大で生じた様々な問題を通じて浮彫りになった。高齢者の介護について、介護職員の感染あるいは濃厚接触者とされたため、介護に従事する職員数が減少し、自宅や事業所の高齢者の支援ができなくなる事態が頻発した。

小規模な法人では、介護の質の向上にも限界があり、新型コロナ発生時の業務継続も施設内療養の実現も覚束なくなる。経営の大規模化・協働化が抜本的に推進されるべきであるという提言だ。介護保険制度は、事業者間の競争の結果として、サービスの質の向上や事業の効率化が進むことが期待されていた。しかし、現状は、経営主体は小規模な法人が多く、競争が必ずしもサービスの質の向上につながっていないうえ、業務の効率化も不十分である。

他方で、規模の大きな事業所・施設や事業所の数が多い法人ほど平均収支率が高いなど、スケールメリットが働き得ることも事実である。介護給付費の増大を防ぐためには、スケールメリットを生かした取組で効率的な運営を行っている事業所等をメルクマール(中間目標)として介護報酬を定めていくことも検討していくべきであり、そのようにしてこそ大規模化・協働化を含む経営の効率化を促すことができると言うのが、結論となっている。これは、ある意味、極限の提言である。

スケールメリットが有効では無い小規模な事業所の報酬を、中規模クラスの報酬まで引き下げて、半強制的に事業規模の拡大を促すと言うことだ。大規模化に転換出来ない小規模事業所は自然淘汰に向かうリスクがある。この提言が、簡単に実現するとは思えない。しかし、財務省は、そこまで考えていると言うことだ。不退転の決意が読み取れる。これらの提言が、厚生労働省の介護保険部会でどのように審議が進められるかを注目しなければならない。次期令和6年度介護保険改正は、過去最大級の激変も見込まれているので、早期に情報を収集し、事前対策を取ることが必要である。

出典:財務省財政制度分科会(令和4年4月13日開催)資料1

 

後編こちら:第10回【後編】令和6年介護保険法改正審議、財務省から衝撃の規模拡大策近日公開予定

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