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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

介護報酬審議は第二ラウンドへ。現状の大胆予想での解説

2023/11/07 カテゴリ: 介護保険法改正

介護報酬審議は第二ラウンドに移った。12月中旬のとりまとめまで、残り2月を切ったことになる。それを前にして、大きな動きが出てきている。今回は、第二ラウンドを前に、現在の状況について大胆予測での解説を加えていく。あくまでも予測であって決定した訳では無いのでご理解をお願い致します。

来年2月から6000円相当の処遇改善か

10月18日の朝日新聞に、政府内には月6千円引き上げる案があり、最終調整している。来年2月の実施を目指す。物価が高騰し、今年の春闘では他産業の相次ぐ賃上げで介護分野から人材が流出。深刻な労働力不足を止めるためにも、緊急の処遇改善策が必要と判断した。という記事が掲載された。これは、自民党の厚生労働部会の提言を受けてのものである。この報道がされた後、6千円では不十分であるとの議論が沸き起こった。この唐突に出された感のある処遇改善であるが、大きな疑問というか、問題を内包している。それは、現在審議中の令和6年度介護報酬改定審議に於いて、3種類の処遇改善加算の一本化が進められているからだ。これとどのように整合性を取っていくのか。そこで思い起こすのが、昨年の2月から始まった介護職員処遇改善支援補助金である。今回の6千円の賃上げも補助金の形を取る可能性が高いと思われる。その支援補助金は、令和4年11月19日に閣議決定で創設が決まっている。今回も、同様の時期に確定する可能性が高い。そうなった場合、再び処遇改善計画書などの事務負担が増えると思われる。また、支援補助金は、平均すると職員1名当たり、4―5千円に賃上げであった。6千円の補助は、職員の手元に届く額としては、2―3千円となる可能性がある。これは、月収入で支給額が左右されることと、支給対象人数が人員基準以上に配置されている事業所が大部分であることの結果である。

また、もう一つの注目点は、居宅介護支援のケアマネジャーを対象とするか否かの部分だ。令和6年度介護報酬改定審議に於いて、ケアマネジャーを対象とすべきとの機運が高まっている。東京都は、10月10日に国への緊急提言を行い、ケアマネジャーへの処遇改善を求めているからだ。いずれにしても、この新たな処遇改善の方向は、令和6年度介護報酬改定を予想するための参考となるだろう。

介護報酬改定の施行時期を6月に

① 診療報酬はすでに6月施行へ

業界団体がそれぞれ5―10分程度のスピーチを行う業界団体ヒヤリングというイベントが終了。第二ラウンドの介護報酬改定審議に入らんとする10月11日。第227回社会保障審議会介護給付費分科会の議題に、介護報酬改定の施行時期が盛り込まれた。

その趣旨は、診療報酬については、診療報酬改定DXの推進に向け、令和6年度以降における医療機関・薬局等やベンダの集中的な業務負荷を平準化するため、令和6年度診療報酬改定より施行時期を6月1日施行(薬価改定の施行は4月1日)とすることについて、中医協において了解されている。介護報酬についても、診療報酬同様に施行時期を6月1日施行することが提案されたのだ。

診療報酬、介護報酬改定のいずれにおいても、1月から3月に報酬単位の答申と通知やQ&Aが矢継ぎ早に出されて、職員は3月の短期間で新たな報酬算定についての準備をしなければならなかった。また、訪問看護や居宅療養管理指導など、診療報酬・介護報酬の両方を請求している事業所が一定数あることから混乱が生じることが懸念されている。

② 当日の審議は賛否両論となった

当日の審議に於いては、賛否の意見が分かれた。主に医療系の委員は賛成を表明し、福祉系の委員は反対の立場であった。

反対意見の主な理由は、介護報酬単位や処遇改善加算の引き上げが見込まれる中で、施行が2月遅れることは、事業所の収益の確保が遅れるというのが主な意見である。しかし、2月遅れるとしても、その後の36ヶ月に於いて報酬は確実に獲得出来るのであるから大きな問題とは言えないだろう。そもそも、令和6年度介護報酬改定に於いて、プラス改定を前提した意見であるが、現時点に於いてプラス改定となる事は何も示されていないのだ。

当日の厚生労働省の資料に以下の記述がある。「次期介護報酬改定においては、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行うことを目指している。また、介護職員の処遇改善に係る加算を含め、事務の変更が見込まれている。」この前半の文言は、6月16日に閣議決定した骨太の方針2003を周到している。必要な対応を行うとは記されているが、一言も引き上げるとか、改善するという言葉が含まれていない。また、現内閣の重要政策である「異次元の少子化対策」での3.5兆円の財源確保には、社会保障費用の抑制が不可欠とも言われている。すなわち、今後の財政予算の動向に令和6年度介護報酬改定が委ねられているのだ。そして、その結論はまだ何も出ていない。現実的には、3回連続で1%に届かないプラス改定を予想している。また、介護職員処遇改善3加算の一本化と加算率の引き上げ。さらには居宅介護支援事業所への処遇改善加算創設の可能性がある中で、その増額部分もプラスの改定率に含まれる。そのため、実質的にマイナス改定の可能性も高いだろう。もう一つの不確定要素が、自己負担2割の対象者の引き上げである。この可否も大きく影響するだろう。処遇改善加算については、「介護職員の処遇改善に係る加算を含め、事務の変更が見込まれている。」の文言から、確実視して良いのではないか。

③ 6月施行は歓迎すべきである

いずれにしても、施行時期が6月になる可能性はかなりの確率で高いとみている。施行時期が6月になった場合も、審議や報酬単位の答申のスケジュールは従前通りに行われる。Q&Aなどに若干の遅れはあるだろうが、事業所にとっても、余裕のあるスケジュールは歓迎すべき点も多いと考える。新たな加算算定についても熟考出来るだろう。処遇改善加算の見直しがあった場合、職員への配分の見直し作業や処遇改善計画書の作成にも時間を要する。施行時期を6月とすることは歓迎すべきである。

第227回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
【資料3】介護報酬改定の施行時期について[2.4MB]

介護報酬改定に物価高は、ほとんど反映されない可能性

業界団体ヒヤリングにおいて、大部分の関係団体が介護報酬のアップを要求し、それが必然である意見が高まっている。しかし、敢えて介護報酬改定に物価高は、ほとんど反映されないと予想する。それは、6000円相当の処遇改善の実施を提言した自民党の厚生労働部会の重点事項の中身に医療・介護・障害福祉等分野に於ける物価高騰への対応等という提言がある。この中で、賃上げのための必要な対応を早急に実施すること。とともに、食材料費、光熱水費高騰への必要な対応と実施。特に、入院時の食費の基準についての見直しに向けて早急かつ確実な支援を行うとしている。また、ICT化や職場環境改善の支援、人材関連への支援などを行うと記している。すべてにおいて、支援と言う言葉を使っている。すなわち、物価高騰対策は、補助金・助成金の類での対応であることが推測されて、介護報酬への反映は最低限でのものである可能性が高まっているのだ。そもそも、物価は一過性の問題であり、今の状況が永続するものではない。一時期、卵の値段が300円を超えた時期が続いた。あれは、鳥インフルエンザが原因で、WHOが終息宣言を行った今、卵の値段は徐々に下がりつつある。現状を根拠に、来年4月から介護報酬を引き上げた場合、物価が安定した場合であっても3年間は介護報酬を引き下げることが出来ない。介護事業に多大な影響を与えたコロナ禍の3年弱においても、介護報酬に反映されたのは、令和3年4月からの半年だけであり、それ以外は、掛かり増し経費などの補助金、助成金の類で対応したことからも明らかと言える。よって、介護報酬改定に物価高が反映される可能性は低いと考える。

そもそも、現政権が掲げる重点施策「異次元の少子化対策」費用3.5兆円の資金財源が未だに確定しない。この捻出に社会保障費用を充てるという憶測も強くある。防衛費倍増の資金も同様である。また、介護報酬における自己負担2割の対象者の拡大も、介護報酬の枠組みに大きな影響を与えるだろう。いずれにしても、令和6年度介護報酬改定については、大きなプラス改定となる要素が、実は少ないことに気づくだろう。

外国人研修生の訪問介護への適用議論について

訪問介護は、有効求人倍率が15.5倍となり、介護職員の確保策が重大な課題となっている。外国人研修生の活用を認める等の対策が焦点となってくる。その「外国人材の業務の在り方に関する検討会」での審議の中で、訪問介護に外国人研修生の配置を認めるか否かの検討も進められている。多くの意見は、時期尚早として反対に傾いている。その理由が、外国人を密室状態でのサービス提供となる訪問介護に認めた場合、事件事故が起こった場合、誰が責任を取るのかという意見だ。しかし、これは明らかに外国人への偏見であり、差別である。今、多くの事件や事故を起こしているのは日本人である。その折衷案として、まずは有る程度の視野の効く高齢者住宅に限定して認め、その状況によって一般住宅への適用を検討するという意見がある。これは現実的である。高齢者住宅は、完全な密室とは成らない。そこで、しっかりと外国人研修生の優秀さを見極めて頂き、早急に訪問介護への適用を実現すべきだろう。また、技能実習生については、就労時点から介護職員としての配置を認めるか否かの議論も進められている。今回の改正で、外国人への門徒が大きく開く可能性が高まっている。しかし、逆風も吹き出している。それは、慢性的な円安である。アジア系の外国人にとっての日本の優位性が失われてきているのだ。時代は常に変わり続けている。

第1回外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 資料
資料3 検討に当たっての考え方・検討事項(案)[PDF形式:421KB]

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