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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第15回【後編】作成が急務の業務継続計画BCPと作成後の訓練の実施

2022/11/08 カテゴリ: BCP

前編こちら: 第15回【前編】作成が急務の業務継続計画BCPと作成後の訓練の実施

(5) 研修・訓練の実施、BCPの検証・見直し

① 研修・訓練の実施
② BCPの検証・見直し

さあ、BCPを作成しようと意気込んでも、いざ厚生労働省のひな型をみるとなかなかイメージが沸かないものだ。前半部分を有る程度埋める事が出来ると、加速度的に作成が進めることができる。

自然災害BCPの全体像 出典:株式会社ベストワン コンサルティングツール

十分な現状の検討を行うことが基本

情報だけでBCPを作成すると、自家発電機があるから停電時でも大丈夫との判断で終わりがちだ。しかし、実際に多くの介護施設を視察していくと、自家発電機も千差万別であることがわかる。自家発電機は施設外に設置されており、かなりのスペースを取っていることも珍しくない。さぞ、強力な発電機だろうと詳細を聞くと、発電時間は30分程度で、かつ非常灯だけというケースも多くあった。これは10年以上前に設置された物に多い。最近では72時間の間、多くの電気設備に電気を供給できるタイプに切り替わっていることも多い。

また、燃料も問題である。ある施設の自家発電機は、発電時間は30分程度で、燃料は軽油であった。その軽油は備蓄されておらず、月に一回訪れるメンテナンス業者が、減った分だけ補充する契約だと言う。この施設は100床の規模である。大規模な災害、例えば南海トラフ地震が起こった場合、最大震度6強が想定されている地域であるために、被災時にメンテナンス業者が給油に来てくれる可能性は限り無く低いと想定しなければならない。要は自家発電機が無いと同じ状況である。では、どうするのかの検討を進めることとなる。また、貯水槽はあるが、停電時は給水が出来ず、手作業で水を出すことも出来ないものが多い。井戸があっても地震などの災害時は、井戸水は濁って使えない事も多いのだ。

感染症対策の指針と感染症BCPは何が違うのか

感染症BCPは、感染者が発生し、クラスターとなった場合の対応策が中心となる。感染症対策の指針は、感染予防とクラスターの防止が主な目的である。平常時の対策としては、事業所内の定期的な消毒や環境整備などの衛生管理の方法。手洗い、換気など、ケアにかかる感染対策などを記載する。発生時の対応としては、感染者が発生した場合の状況、感染経路などの把握の方法、クラスターとしないための感染拡大の防止策、医療機関や保健所、市町村における事業所関係課など関係機関との連携の方法、行政等への報告の方法などを記載する。また、感染者が発生した時の、事業所内の連絡体制や関係機関への連絡体制を整備して明記する。それぞれの項目の記載内容の例については、厚生労働省からの「介護現場における感染対策の手引き」を参照して記載して行く。

これに対して、感染症BCPは、施設、事業所内で感染者が発生し、クラスターとなった場合の対応策が中心となる。この点が、感染対策指針との大きな違いである。そうは言っても、感染症対策BCPにおける平常時の対応と感染対策指針とは被る部分も多いのは事実だ。しかし、根本的な違いもある。それは、作成の目的である。感染症対策BCPは、介護事業を運営する法人が、感染症によって収束まで、長期にわたるクラスターが発生しても、倒産や廃業、事業の縮小に追い込まれること無く、業務を継続することを最大の目的としている。また、地域の高齢者のライフラインとしての介護サービスの継続的提供も重要な目的となる。

クラスターが発生した時の最大の経営リスクは、職員の多くが濃厚接触者に認定されることにある。濃厚接触者に認定されると、PCR検査が陰性でも一定期間は自宅待機を余儀なくされる。その場合の措置として、グループ内または提携先施設からの応援を依頼するなどと記載した指針やBCPを見かける。しかし、実際にクラスターが発生した施設に、応援で職員を派遣することはグループ内であっても希である。派遣した職員が感染して自分たちの施設に持ち込んだ場合、自らの施設がクラスターとなるリスクが高いからだ。そのため、自施設内だけで食い止めることが求められる。感染症については特に、危機感が問題となる。頭で考えた対策と、研修や訓練で体験する現実とでは離反が大きいと言える。

出典:新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン 厚生労働省

感染症訓練と自然災害訓練は別々に実施する

作成されたBCPは、非常時に発動して速やかな対策を実施することが役割である。そのためには、BCPの内容を全ての職員の身体に染みこませておくことが必要となり、定期的な研修と訓練を実施する。介護保険施設は年に2回の実施。在宅サービスは年に一回である。これを繰り返し行うことで組織にBCPが定着する。

この時、感染症と自然災害はそれぞれ分けて行う必要がある。また、BCPと同じく義務化された感染症対策の研修と訓練は、感染症BCPと一緒に実施することが可能となっている。これは、感染症対策の指針と、感染症BCPの平時の対応が、多くの部分で被ることからの措置である。BCPの訓練は、前提条件をシミュレーションした上で実施される。同日に、研修と訓練を実施することが有効である。研修と訓練を同じテーマで行う事で、体系的に参加する職員は身に付けることが出来る。研修では、ファシリテーターとして担当者が講義を進めて、訓練の実施方法と目的も説明する。その上で訓練を実施して、終了後は意見交換会を実施して改善点や見直すべきポイントを把握する。それらの内容に検討を加えて、必要に応じてBCPの内容を見直しする。

いくら優れた計画であっても、いざという時に機能しなければ、それは単なる絵に描いた餅である。被災時にBCPが発動されたとき、職員がその内容を理解して、行動することで被災リスクを大きく減少させる事が出来る。感染症についても、日頃からゾーニングや衛生管理の方法を研修や訓練で身に付けることで、クラスターが発生した場合でも職員が自ら身を守る事が出来る。その事を、すべての職員が理解していることが重要である。コロナ感染症を対象とした通知、「高齢者施設における施設内感染対策のための自主点検について」が発出されており、この中で「新型コロナウイルス感染症 感染者発生シミュレーション ~机上訓練シナリオ~ 」が提供されているので、訓練計画を立てるときの参考にして欲しい。

新型コロナウイルス感染症 感染者発生シミュレーション ~机上訓練シナリオ~ 
https://www.mhlw.go.jp/content/000678401.pdf

BCPは完成しない

BCPは完成しない。常に、研修と訓練を通して見直されていく。研修と訓練を実施すると、頭の中で考えた対策や方法とのギャップが出てくる。「これはチョット違う」「もっと良い方法がある」等である。実際に訓練をやると中々スムーズに対策が出来ないという問題に直面する。何度もBCPを書き換えて、試行錯誤を加える。BCPは研修と訓練を終える度に見直し作業を行っていく。定期的に肉付けとバージョンアップを行うことが必要である。このことがBCPの大きな特徴だ。感染症や虐待防止の指針などは作成した時点で完了である。BCPは作成された時点がスタートとなる。また、他の施設が作成した事例や、委員会で検討された課題と対策を情報として取り入れることも重要な要素となる。それゆえに、多くの支援実績がある外部コンサルティングに依頼することや、完成したBCPの検証を依頼することも選択肢となる。

感染症BCPの全体像 出典:株式会社ベストワン コンサルティングツール

以上が「作成が急務の業務継続計画BCPと作成後の訓練の実施」となります。

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