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第9回【後編】実地指導から運営指導へ、そのチェックポイント。
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2022/05/26 | カテゴリ: 実地指導
前編こちら: 第9回【前編】実地指導から運営指導へ、そのチェックポイント。
7. 「標準確認項目」及び「標準確認文書」の主なポイント解説
通所介護を例にとって「標準確認項目」を、主な項目のポイントに絞って見ていく。
① 従業者の員数
【ポイント】
常勤換算職員を含めて、出勤状況の確認として勤務実績表とタイムカードとの突き合わせ作業が行われる。これは規定された数の職員が適正に日々において配置されているかの確認作業である。専門職の職員については資格者証の確認と共に、その兼務状況などにポイントを置いてチェックされる。資格者証のコピーの保存は必須である。常勤専従配置が要件の職種については、勤務時間内で他の業務を行っていないかを中心に確認する。常勤専従が規定されている職員が勤務時間内に他の業務を行っていた場合は、人員基準違反となる。長期間、継続反復して違反があった場合、行政処分の対象となる。
② 管理者
【ポイント】
基本的に管理者は常勤専従である。常勤専従の意味は、勤務時間全体において、他の業務を行わないことを言う。ただし、特例として管理者の業務に支障が無い場合においては、同一敷地内で他の職種を兼務出来るという規定がある。故に、管理者は兼務が出来るのでは無く、あくまでも特例であることに留意すべきだ。実地指導での指導項目が多い場合は、兼務によって支障が出ていると判断されて兼務が認められないことになる。勤務実績表とタイムカードで勤務状況が確認されるとともに、兼務している他職種の勤務時間の比重が多い場合も指導対象となるので注意が必要だ。
③ 運営
【ポイント】
介護サービスは、利用者との契約が締結されてからの実施となる。それ以前のサービスの提供は介護保険の対象とはならない。故に、その契約日とサービスの開始日の整合性が重要となる。また、重要事項説明書の内容を口頭で説明し、控えを交付して同意を得る手続もサービスの開始までに終了する必要がある。現地指導では説明同意の日付とサービスの開始日の整合性が確認される。いずれも日付が前後することはあり得ない。
④ 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
【ポイント】
ケアプランに沿った通所介護計画を作成しなければならない。すなわち、ケアプランに無いサービスを位置づけて提供する事は出来ず、ケアプランに位置づけられたサービスは、必ず通所介護計画に位置づけることが求められる。そのため、事業所にはケアプランの控えが時系列で保存されている必要がある。作成された通所介護計画は、利用者または家族に口頭で説明し、控えを交付して同意を得る。同意の証として、利用者及び家族の署名、捺印などを得る。この同意があって初めて通所介護計画は本プランとなり、利用者へのサービス提供が可能となる。
⑤ サービス提供の記録
【ポイント】
サービス提供記録には、その日に実施したサービスの内容、提供時間、担当者名の記載が必要である。具体的な利用者の状況として、サービス開始前のバイタルチェックの記録、食事の量、トイレの回数、その他で気づいた点などを記載しなければならない。また、サービス提供時間や送迎減算の有無の根拠として、送迎記録も重要である。到着時間、送迎の経路、搭乗者などがわかるように記録する。
⑥ 利用料等の受領
【ポイント】
介護保険制度では、自動振替や口座振り込みでの入金であっても、必ず領収書を発行しなければならない。請求書と領収書は明細型のものを発行する。その理由は利用者の確定申告における医療費控除にある。通所介護は福祉系サービスで、通常は確定申告での医療費控除の対象ではない。しかし、利用者が医療系サービス、すなわち訪問看護やデイケアなどを利用している場合は医療費控除の対象となる。この場合、リハビリパンツ代や食事代、おやつ代、レクレーション実費などは控除対象とならないために明確に区別する必要がある。そのために明細型の領収書の発行が義務とされている。
⑦ 通所介護計画の作成
【ポイント】
アセスメントの内容を反映した目標を立て、その目標を達成するための通所介護計画を作成する。その計画には、提供されるサービス内容と共に、目安となる時間の記載などを明記する。定期的に目標の達成状況を評価することが、モニタリングの重要な役割である。その評価の結果、目標の達成や見直しとなった場合は、再びアセスメントに戻って、新たな目標を立てた通所介護計画の作成となる。この一連の流れをケアマネジメントプロセスという。それらの実施記録であるアセスメントシート、通所介護計画、モニタリングシートが確認される。基本的にアセスメントシートの枚数と通所介護計画の枚数は同じとなる。
⑧ 定員の遵守
【ポイント】
月平均で定員を超過している場合は、定員超過減算として30%が減算される。また、運営規程に記載された定員を一日でも、1人でも、超えた日がある場合は運営基準違反として指導される。その超過状態が長期間に渡って継続反復した場合は、行政処分の対象となる。
⑨ 秘密保持等
【ポイント】
職員には業務上で知り得た利用者の個人情報を他に漏らしてはならない守秘義務がある。職員の雇用時と退職時に、そのことを誓約する誓約書に署名捺印を得ておく。サービス担当者会議では利用者の個人情報を共有する必要がある。必ずサービス担当者会議での使用に限定して個人情報を共有することの同意書を得る。この場合、利用者だけではなく、同居する家族からも同意を得る必要がある。
以上が実地指導から運営指導への移行におけるチェックポイントとなります。