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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第20回 変貌する居宅介護支援事業の考察

2023/04/10 カテゴリ: 介護保険法改正

令和4年度介護事業経営概況調査における考察

令和4年度介護事業経営概況調査において、居宅介護支援事業所における収支差率は、税引き後で3.1%と、前年令和3年度の数値1.8%から1.3ポイント上昇している。収支差率は利益率と言い換えることが出来る。3.1%ということは、100万円の収入で、手元に利益が31,000円残るということである。コロナ禍の中で多くのサービスの数字が低下している中で、居宅介護支援事業所の利益率が大きく上昇している。この上昇要因を推測する必要がある。

まず、令和3年度介護報酬改定に於いて、基本報酬算定における逓減制が限定付きで緩和され、担当件数が39件から44件となった。介護給付費等実態統計月報(令和4年10月審査分)を見たとき、その算定率は全体の1割弱という状況で決して高くは無い。また、請求事業所数が37,509と、令和2年10月審査時の38,407から2.3ポイント減少している。しかし、特定事業所加算の算定事業所数が、1800件と、令和2年の1,679から7.2ポイント増加している。

この事から、特定事業所加算を算定するために、小規模事業所が統合されてケアマネジャーが3人以上の事業所に再編成が進んでいると考えられる。特定事業所加算Ⅲを算定するだけでも基本報酬が1.3倍に増額される。居宅介護支援事業所は、自然の流れの中で、大規模化が進んでいることになる。

2024年改正における介護予防支援指定の考察

地域包括支援センターの役割において、令和3年度からスタートした重層的支援体制整備事業による8050問題の相談窓口など、総合相談支援機能が強化されている。地域包括支援センターの業務の中で大きな負担になっているのが予防ケアプランである。現在において、予防ケアプランは多くの場合、地域包括で受注して地域の居宅介護支援事業所に外部委託しているのが現状だ。

令和6年度介護保険法改正においては、介護予防支援について居宅介護支援事業所支援に指定を拡大して、居宅介護支援事業所が、直接に予防ケアプランを受注できることになる。これまで、予防プランについては外部委託がなかなか進まない現実があった。介護報酬が安いことも理由の一つである。要介護ケアプランも予防ケアプランも、ケアマネジメントプロセスは全く変わらない。しかし、予防ケアプランでは、利用者、ケアマネジャー、担当事業者、地域包括支援センターが関わるため、手間数が想像以上に必要である。特定事業所加算を算定する居宅介護支援事業所は、予防ケアプランの報酬は3分の1程度となり収支が合わない。そのため、予防ケアプランの業務量は報酬以上に掛かることから予防ケアプランを受けないという選択が出来てくるのだ。

現在の外部委託制度においては、税金の問題も存在するか。介護サービスの消費税については非課税であるが、居宅介護支援事業所が地域包括支援センターから外部委託を受けると介護サービスの扱いにはならない。そのため、消費税の課税対象となり、年間の受託額が1000万を超えると消費税の課税事業者となる。実際に、税務署の調査で指摘されて、消費税が追徴された事例があるのだ。同様に、社会福祉法人等については、収益事業とする指摘も出てきていた。この点については、その事を知らない事業者や会計事務所も多く存在する。今回の改正において、居宅が介護予防支援の指定を受けることが可能になることで介護サービスとしての扱いとなる。これによって、消費税の課税の問題や収益事業の問題が無くなり、受注するメリットが出てくる。これまで地域包括支援センターに支払っていた手数料も掛からない。しかしながら、実際の業務手続や、すでに地域包括支援センターが契約している既存の予防ケアプランを居宅介護支援事業所に譲渡するか否か。若しくは、新規契約のみ居宅介護支援事業が契約するのか、などの実務的な問題については、今後の通知やQ&Aを待つことになる。

2024年法定研修改正の考察

令和6年度、ケアマネジャーの法令研修が改正される。今後は、根拠のある支援の組み立てが求められ、その基盤として適切なケアマネジメント手法と科学的介護(LIFE)等を学ぶ内容が組まれていく。LIFEについては、令和6年度介護報酬改定に於いて、居宅介護支援への加算が創設されることがほぼ確実な状況である。今後は、LIFEへケアプランの提出と共に、サービス担当者会議において、担当事業所毎の利用者別フィードバック票を共有して検討し、必要に応じてケアプランに反映するといったPDCAサイクルの推進が求められるであろう。その場合、LIFE活用を行っていない担当事業所が取り残される可能性も出てくる。根拠のある支援が求められることで、エビデンスの一つとしてのLIFEの位置づけが強化されることは間違いない。

また、終末期ケアを含めた生活の継続を支える疾患別マネジメントの理解として、心疾患、誤嚥性肺炎などの科目が新設される。国が進める地域共生社会の実現と地域包括ケアシステムの推進の目的のひとつが、重度化しても介護施設に入所せず可能な限りの在宅ケアと在宅での看取りの実現にある。そのために、在宅医療と在宅介護サービスが中心となり、医療介護連携が求められる。この中で以前から指摘されている問題点として、ケアマネジャーの医療的知識の不足がある。そのため、医療的知識の習得に力点が置かれている。

制度・政策、社会資源等についての近年の動向に関する内容を反映として、地域共生社会、認知症施策大綱、ヤングケアラー、仕事の介護の両立、科学的介護、身寄りがない人への対応、意思決定支援等が盛り込まれてた。近年、特に注目されているヤングケアラーの問題や仕事と介護の両立も、ケアプラン作成において重要な課題となっている。より家族の抱える諸問題に寄り添ったアセスメントやプランニングが求められる。各研修において受講時間が増やされて強化された科目が、職業倫理についての視点である。地域共生社会、科学的介護と言う部分で、エビデンス重視の指向が打ち出されているが、介護は医療と異なり、単にアウトカムだけを求めているのではない。介護は、本来は家族が行うべきものである。介護サービスは介護者が自分の時間を持ち、リフレッシュするまでを補完するレスパイトとしての機能が本来の目的である。いわゆる共助である。介護とは何か。ケアマネジャーの役割とは何かを見失ってはいけないということだ。継続研修においては、必要な理念や考え方について理解しており、その理念や考え方について自分の言葉で具体的に説明できるレベルが修得目標とされた。このレベルに達するためには、表面的な理解では不可能だ。必要十分以上の学びと解釈が出来て初めて達することが出来る。ケアマネジャーには今まで以上の研鑽が求められると言うことになる。

ケアマネジャーのなり手が減少を続けて、全サービス中、圧倒的に平均年齢の高い居宅介護支援事業所において、LIFE、ICT化、医療知識といった新たなスキルの修得が求められる法定研修改定。現場レベルで、どこまで対応出来るかの不安も聞こえてくる。確かに、ケアマネジャーとしてのスキルアップも重要であるが、ケアマネジャーという職種の魅力度を上げて、ケアマネジャーを目指す人を増やして行くことも重要な課題である。このあたりは、国と介護支援専門員協会などが協働して取り組んでいくべきポイントであろう。

ケアプランデータ連携システムの考察

介護保険制度におけるICTの推進は、国の施策として重点化されている。その理由が介護業界の慢性的な人材不足である。人材不足については、介護業界というより、日本全体の問題となっている。その根底にあるのが、出生率の低下であり、労働人口の減少である。年代別の人口は逆三角形で表される。年齢が下がるにつれて、世代別の人口が減少する。高齢者は定年などによってリタイアし、学校を卒業して仕事に就く若者は年々、減少する。その結果、日本国内の労働人口は減少の一途となっており、改善の見込が無い。それに対して、介護を必要とする高齢者は増加して、2040年には介護職員が69万人の不測が見込まれている。

令和5年4月から ケアプランデータ連携システムがスタートする。ケアマネジャーは、毎月、利用者の提供票を作成し、担当事業所に紙で印刷して渡している。担当事業所は、一月のサービス提供が終わったら提供票に実績を記載して担当のケアマネージャーに紙で戻す。結果、ケアマネジャーに机の上には、月初に提供票が100枚近く積み上がることになる。例えば、利用者が30人いて、各利用様に3つの事業所を位置づけていたら90枚の提供票が返ってくるわけだ。この100枚の提供票を給付管理ソフトに手入力している。この作業だけでも2〜3日かかっているのが現状だ。連携システムを使う事で、ケアマネジャーはPCの画面上で提供票を入力し、入力が終わったら国保連合会のシステムを使って担当事業所に電子データとして提供票を送る。担当事業所は、ひと月のサービス提供が終わったら画面上で実績を打ち込み、担当ケアマネジャーに電子データで送る。ケアマネージャーは担当事業者から届いた電子データを給付管理ソフトに落とし込むだけで作業を完了する。従来の手入力の部分が不要となり、入力ミスでの返戻リスクも無くなる。ケアプランデータ連携システムが導入されることで、今まで3日程度かかっていた提供票の入力作業が、1日もかからない。圧倒的に業務は簡素化される。その意味で、期待が大きいICTシステムと言える。そのため、担当事業所も導入を求められて、導入しない場合は担当事業所を外される可能性も捨てきれない。厚生労働省は、この活用によって、紙や移動に伴う時間ロス、交通費等の削減効果が高いとしている。ここで想定される問題は、電子データ化して介護給付管理ソフトに取り組む処理である。LIFEにおける介護記録ソフトの状況を見ても、ソフトのベンダーによって対応のバラツキが想定される。その場合、必ずしも業務の効率化に寄与しないケースも出てくるだろう。LIFEに続き、使用する介護請求ソフトを見極める必要がある。将来を見据えた場合は、費用対効果を考えながら、場合によっては乗り換えも必要になってくるだろう。

いずれにしても、圧倒的にケアマネジャーの手間が削減されることは間違いない。このシステムの普及は時間の問題であろう。ケアプランデータ連携システムによって浮いた時間を活用して、逓減制の特例である担当件数44件への転換も可能となるだろう。ケアマネジャー一人あたりの担当件数が増えることで収入が確保され、ケアマネジャーの処遇改善に繋がる。これも想定される大きなメリットである。もはや、コンピュータが苦手などと言っている時代は終わりを告げた。ICT化を行わない理由を考えるのでは無く、いかにICT化を進めるかを考えるのが経営者の役割となっている。

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