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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第4回 コロナ禍の実地指導対策の最重要ポイント

2021/12/22 カテゴリ: 実地指導

1. コロナ禍の特例はあくまでも特例に過ぎない

2020年2月にコロナ禍が表面化して以来、多くの特例措置が設けられている。ほぼ2年を経過した今、どこまでが特例措置か区別しにくくなってはいないだろうか。特例はあくまでも特例であって本来の基準では無い。
しかし、特別措置の長期化によって慢性化し、都合の良い解釈や拡大解釈を行って居ないだろうか。受講が義務化されている研修等をコロナ禍を理由に参加しなかったり、モニタリング訪問などを行っていないケースが見受けられる。
しかし、これらの特例は実施しなくても良いのでは無く、やむを得ない場合に認められることを再認識すべきだ。この件を指摘されての介護報酬の返還指導が増えている。コロナ禍特例措置を使っている場合は、その根拠となる記録が特に重要となるために、再チェックをしておくべきだ。

居宅介護支援では、令和2年2月28日の通知で、サービス担当者会議について、やむを得ない理由がある場合については、利用者の自宅以外での開催や電話・メールなどを活用するなどを可能とした。これは運営推進会議なども同じ規定である。令和2年3月6日には、やむを得ない場合は、訪問サービスで、訪問介護以外の職員を担当させることが出来る。デイサービスに勤務する訪問介護員の資格のない職員も、訪問介護員として従事して差し支えないとした。デイサービスが利用者の居宅を訪問して、清拭による介助を行った場合、デイサービスとして介護報酬を算定して入浴介助加算も算定出来る。
ただし、この点については行政の対応に温度差があって、全く認めていない自治体も存在する。居宅介護支援のモニタリングについては、交通手段の寸断等により、利用者の居宅を訪問できない等、やむを得ない理由がある場合については、月1回以上の実施ができない場合についても柔軟な取扱いが可能である。しかし、単純にコロナウイルスの感染が拡大しているだけでは対象にはならない。
さらに、2018年度介護報酬改定に於いて改定された項目での介護報酬返還事例が聞こえてきている。前回の介護報酬改定で居宅介護支援事業所は、利用者との契約にあたって、 ①ケアプランに位置付ける事業所の複数紹介を求めることが可能であること。②当該事業所をケアプランに位置付けた理由を求めることが可能であることを利用者やその家族に十分説明し、書面により理解を得なければならないこと。 が設定され、この2点について文書を交付して説明を行っていない場合には、契約月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで運営基準減算となる。
運営基準減算は、初月が50%、2ヶ月目以降が100%の減算という、非常に大きい代償だ。今年の実地指導において、この同意の不備で介護報酬が返還指導となった事例を各地で耳にする。2018年4月から現在まで同意がされていないとのことで、700万以上の返還指導が行われた事例もある。

通所介護では、サービス提供時間の短縮を感染防止で行った結果として、サービス提供時間が、最も時間の短い報酬区分で定められた時間である2時間未満となった場合では、最も短い時間の報酬区分である2時間以上3時間未満を算定すること出来る。
しかし、この場合、利用者への説明及び同意が前提となる。提供時間を短縮して、最低限必要なサービスを行った結果が、最低提供時間を下回らないが、ケアプランで定められたサービス提供時間を下回ったときは、実際に提供したサービス提供時間の区分に応じた報酬区分を算定することになる。事業所が休業している等の場合で、デイサービスの職員が利用者の居宅を訪問して個別サービス計画の内容を踏まえて、できる限りのサービスを提供した場合には、その日に提供したサービス時間の区分に対応した報酬区分が請求出来る。
しかし、1日に算定できる報酬はケアプランでの提供時間の報酬が上限となる。

全サービスに於いて、職員が出勤前に各自で体温を計測して、37.5 度以上の発熱が認められる場合は、出勤させないことを徹底したり、新型コロナウイルスで学校が休校等になり、子供の世話などで本来、配置すべき職員が休んだなどで、一時的に人員基準等を満たせなくなる場合には、介護報酬の人員基準減額を行わない取扱いが可能であるとしている。
しかし、だからといって、コロナ禍を理由とすれば、何事も人員基準減額が行われないかというと、それは違う。その経緯や事情が業務日誌などに記録されていることが大前提である。ワクチン接種が普及した現在においては、クラスターの発生などが理由で無い場合は、特例が適用されないケースもある。対応の可否を保険者に確認することも必要となっている。

出典:介護給付費分科会 第177回R2.6.1 介護保険における新型コロナウイルス 感染症に関する主な対応

2. 介護職員処遇改善加算関連も注意が必要

介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算の算定要件が毎年のように変わっている。特に令和2年度は比較対象年度が、最初に加算を算定した前の年度から、算定の前年度となり、さらに「前年の1月から12月」と「当年の4月から翌年3月」を比較するという変則的な算定要件となった。
さらには、最初に加算を算定した前年以降の独自の改善額を、別枠で計算して基準年度から差し引く処理を行うのであるが、この辺りの明細の作成で多くの時間を費やす。いずれにしても、従来とは算定要件が大きく異なるため、今一度の再確認が必要だ。また、介護職員処遇改善加算の返還指導が年々、増加傾向にある。その原因の多くが支給対象外の者に支給していたことが原因だ。介護職員等特定処遇改善加算のCグループに振り分けられた者は、支給対象外である。また、一部の自治体を除いて、法人の代表者を支給対象者と認めていないので確認が必要だ。

3. 加算算定は算定要件の確認が必須

コロナ禍が長期化する中で、収入減の補填策として加算算定の相談が増えて来たが、簡単なものでは無い。介護サービスを提供する職員の一人一人が、加算算定の意味と手続を理解しないと、利用者も納得しないし、良い介護サービスには成らない。加算算定の意味を職員が理解することで、他の加算算定は容易に進めることが出来るようになる。最近は、介護職員等特定処遇改善加算の算定相談も増えて来た。毎年のように算定要件が変更となり、管理職が整理できないケースが増えている。実際に、算定要件を理解していないために、実績報告の数字が実際と大きく異なるケースもある。この場合、算定要件を再確認する研修から始めて、職員の誤った認識をピックアップして改善指導に入る。最初に研修を行う事は、あらゆる場面で、職員の理解度を確信し、問題点をピックアップする方法として有効だ。

4. 2時間程度の半日型の指導が中心に。

厚生労働省から通知に、「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針」が2019年5月に発出されている。これは、実地指導を効率化して年間の指導件数を増やすことが主たる目的である。従来から厚生労働省は介護事業所を所轄する自治体に対して、少なくても指定有効期間である6年以内に一度は実地指導を行い、その事業所に問題ないことを確認してから指定の更新手続を進めるように通知を出している。
しかし、介護事業者の急増によって物理的に困難な状況が続いているのが現実だ。この通知では、実地指導の効率的な実施によって、従来は一日作業であった現地指導を半日に短縮して、一日に複数件の実地指導を行うように求めた。それによって、指定有効期間である6年内に一度は実地指導を行うことを実現することを目的とする。多くの自治体は、2020年度からの実施を予定していた。
しかし、この年にコロナ禍が発生した。同年の2月以降の実地指導の大部分は、延期もしくは中止となった。非常事態宣言が解除された6月以降、コロナ禍で出来なかった件数分を含めて、実地指導の実績件数を増やすため、全国的に一気に半日型の指導は拡大した。ただし、一日型の実地指導が無くなったわけでは無い。事業規模の大きい介護施設、前回の実地指導で問題が多かった介護事業所、トラブル、クレームの多い事業所などは、従来通りに一日型の実地指導が行われる。

5. 標準確認項目と標準確認文書

「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針」の通知内容を確認しよう。
現在の実地指導は、通知の中で示された別紙「標準確認項目」及び「標準確認文書」に基づいて実施されている。その対象は、訪問介護、通所介護、介護老人福祉施設、居宅介護支援事業所、認知症対応型共同生活介護、介護老人保健施設、訪問看護の7種類のサービスであるが、その他のサービスについても、この7種類のサービスを参考にして実地指導に活かすとされた。ここに記載された確認項目と文書以外は、特段の事情が無い限り実地指導では見なくても良いとされている。
この指針に沿って実地指導を行うことで、一件当たりの所要時間を短縮し、一日に複数件の実施指導を行うことが想定される。実地指導の頻度は、事業所の指定有効期間である6年間に、最低でも 1 回以上は実施することが基本となる。現地での提供記録等の確認は原則として利用者 3 名以内とし、居宅介護支援については原則として介護支援専門員1人あたり利用者 1 名〜2 名の記録等を確認する。実地指導において確認する書類は、原則として実地指導の前年度から直近の一年間とするとされた。このプロセスを実施することで、ある程度、事業所に存在する問題は把握できるという事だ。問題が発覚した場合は一日指導となり、悪質である可能性がある場合は監査に切り替わる。

出典:厚生労働省 介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化 等の運用指針について 令和元年5月29日

6. 非常事態宣言明けから実地指導が急増している

今年度の実地指導が、コロナ禍の中で、全国で本格的に再開されている。令和2年度以降は、コロナ禍特例措置などもあって、法令の解釈での複雑さが更に増している。コロナ禍特例措置を使っている場合は、その根拠となる記録が特に重要となるために、再チェックをしておくべきだ。特に、職員が発熱や学校の休校などのコロナ禍の影響で休んだために職員の配置基準を満たせない日がある場合でも、人員基準減算を適用しない旨の特例があるが、その理由や状況を日々の業務日誌などで確認出来ないと特例は適用されない。
また、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算の算定要件が毎年のように変わっている。今一度の再確認が必要だ。

7. 指導項目ゼロを目指すことが重要

実地指導対策では、日常の中で業務を標準化する必要がある。実際に、実地指導後に渡される指導結果通知書では、指導項目ゼロの介護施設を幾つも見てきている。それらの介護施設は、定期的に施設外の第三者が訪問して、書類を確認すると共に、職員の疑問を解決してきた結果である。非常事態宣言が開けた直後から、実地指導や税務署の調査が急増している。コロナ禍の影響で、稼働率が上がらず、経営が悪化しているが、安易な加算の算定は慎むべきだ。実地指導で返還指導と成っては意味が無いし、それ以上に担当のケアマネジャーや利用者からの信頼を失うことになる。

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