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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第5回 令和3年度介護報酬改定の総括(1)

2022/01/18 カテゴリ: 介護保険法改正

1. 改定率は0.7%のプラス改定

令和4年を迎えるに当たって、過去最大規模の介護報酬改定となった令和3年度改正と総括しておく。令和3年1月18日の社会保障審議会介護給付費分科会で令和3年度介護報酬単位が答申された。今回の改定率は0.7%のプラス改定であるが、そのうちの0.05%は、コロナ対策での特例措置であるので、実質的な改定率は0.65%のプラスということになる。

2. 自立支援の強化とデータベースによる科学的介護の推進

令和3年度介護報酬改定で注目すべきポイントは、自立支援の方向が鮮明になったことだ。リハビリテーション・機能訓練、口腔ケア、栄養改善の3点が大きくクローズアップされた。それに伴って、OT,PT,STといったセラピスト、管理栄養士、歯科衛生士の役割が明確となった。特に管理栄養士の役割が大きく拡大されている。
これらのケアの質を向上させるためのエビデンスの構築を目的としたLIFEデータベースへのデータ提供が、この3つのキーワードに関連する加算の上位区分の要件として位置づけられた。さらには、新設の加算では、LIFEへのデータ提供が必須となっている。次回以降の介護報酬改定では、LIFEへのデータ提供が義務化となる可能性が高まった。

LIFEのフィードバックは、ADL値点数の改善推移などでは、時系列の利用者データを棒グラフで表し、LIFEでの全国平均値が折れ線グラフで表される。排尿・排便などの施設全体の状況では、全介助・一部介助・見守り・自立の割合を、全体を100とした棒グラフで、時系列の横並びで表し、左側にLIFEでの全国平均値が棒グラフで表される。
このグラフを、各専門職の立ち位置で分析して検討委員会に持ち寄る。例えば、4月では全介助が20%、7月が15%、10月が20%とした場合、この変動の原因を探求して改善に繋げていく。また、全国平均値は23%とすると、全国平均より全介助は少ないという結果であることがわかる。すなわち、LIFEの活用のポイントは、この時系列の推移グラフなのである。利用者毎、施設毎の時系列の推移の積み重ねが、財産であり、独自のエビデンスとなっていく。

このフィードバックを利用者・家族に渡して、改善の成果を確認頂く事も可能であり、リハビリテーション会議での活用も想定される。この時系列データの積み重ね期間が長いほど、他の施設との差別化に繋がる。ケアの質が向上し、成果や結果が伴うことで利用者満足が向上する。利用者満足が向上することで、職員のモチベーションも上がり、職員満足度が向上する。特に、フィードバックによって、その成果が見える化される。職員は、自分のサービスの成果を、データを通して実感出来る。職員満足度が上がることで、定着率がアップし、人材募集も容易になる。LIFEを活用することのメリットは大きいものがある。

しかし同時に、施設側は大きな設備投資を求められる。
記録ソフトの購入費用とWi-Fi環境の整備、タブレットなどの必要機材の確保である。これらは、第三次補正予算で強化された地域医療介護総合基金を活用したICT導入支援補助金などを活用して導入を進めることも検討すべきだ。ただし、ICT導入支援補助金の募集は一時的で確実とは言えない。リースなどを活用した導入が現実的だろう。

科学的介護情報システム(LIFE)については、半年以上に渡って全国集計値だけの暫定版となっていて、PDCAサイクルを廻して活用が出来ない状況が続いている。暫定版は全国集計値の数字の羅列に留まっている。そんな状況で多くの介護施設が抱える問題は、担当職員のモチベーションの維持である。LIFEの活用で、自分たちの提供する介護サービスをランクアップすると意気込んでいた職員の多くがここに来て疲弊おり、LIFEに対する不信感を増大させている。

令和3年度介護報酬改定では蚊帳の外であった、訪問サービスと居宅介護支援事業所については、LIFE を活用した介護の質の向上に資するPDCA サイクルの推進についてのモデル調査を実施する。具体的な活用事例の検討を行い、LIFE 導入の課題について検証を行う。実地については、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援事業所のサービスごとに10事業所ほどの規模を想定した。訪問サービスでは、LIFE からフィードバック票を提供して、ケアの質の向上に向けた取り組みを検証する。居宅介護支援では、LIFEに対応している通所介護のフィードバックをケアプランの見直しに活かす取り組みをテストして課題の洗い出しを図る。

3. LIFE活用の基本は科学的介護推進体制加算

厚生労働省はLIFEのインターフェースの変更を12月から行うことをアナウンスした。いよいよ、フィードバックの暫定版から正規版への移行がカウントダウンされる状況にある。

LIFE活用の基本は科学的介護推進体制加算にある。その他の加算は、その上乗せに過ぎない。効果的なリハビリテーションの成果を得るためには、ADLやIADLの推移だけを検討するのでは無く、栄養改善や口腔ケアなどの幅広い情報を活用しての原因分析や解決策を検討する必要がある。例えばLIFE関連加算に於いて、個別機能訓練加算やリハビリテーションマネジメント加算を算定してフィードバックされる資料は、ADLとIADLの時系列の比較と項目別のレーダーチャートだけである。
これだけであれば、なにもLIFEを活用する必要は無い。BMIや栄養状態、口腔、DBD13などのデーターと総合的に検討することが大切だ。それらの情報は、科学的介護推進体制加算を算定することで得られる。同加算でもADL値の分析結果は提供されるが、さらに個別機能訓練加算などを算定する事で、IADL関連情報が追加されることとなり、更に深掘りした解析が可能となる。

他の加算も同様で、栄養改善加算などを算定する事で、食事量や栄養状態の情報が上乗せされる。すなわち、LIFEの基本的な活用は、科学的介護推進体制加算の項目だけで可能ではあるが、他の加算を算定し、任意項目を提供する事で更に深掘りした活用が可能となる。

4. リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化では、加算等の算定要件とされている計画作成や会議について、リハ専門職、管理栄養士、歯科衛生士が必要に応じて参加することが明確化された。
訪問リハ・通所リハのリハビリテーションマネジメント加算(I)を廃止して基本報酬の算定要件とした。週6回(2時間)を限度とする訪問リハでは、退院・退所直後のリハの充実を図る観点から、退院・退所日から3月以内は週12回(4時間)まで算定可能とした。

通所介護や特養等における外部のリハ専門職等との連携による生活機能向上連携加算では、訪問介護等と同様に、ICTの活用等により外部のリハ専門職等が事業所を訪問せずに利用者の状態を把握・助言する場合の評価区分を新たに設けた。

通所介護の個別機能訓練加算は加算区分1が廃止されⅡに統合するなどの見直しが行われた。施設系サービスでは、口腔衛生管理体制加算を廃止して基本サービスとし、口腔衛生の管理体制を整備して、状態に応じた口腔衛生の管理の実施を求めることになる。これは3年の経過措置期間が設けられている。

施設系サービスでは、栄養マネジメント加算を廃止し、現行の栄養士に加えて管理栄養士の配置を位置付け、基本サービスとして状態に応じた栄養管理の計画的な実施が求められ、実施の無い場合は減算となる。これも3年の経過措置期間が設けられた。入所者全員への丁寧な栄養ケアの実施や体制強化等を評価する栄養マネジメント強化加算を新設し、低栄養リスク改善加算は廃止された。

通所系サービス等では、栄養スクーリング加算を見直し、介護職員等による口腔スクリーニングの実施を新たに評価する口腔・栄養スクーリング加算とした。管理栄養士と介護職員等の連携による栄養アセスメントの取組を新たに評価する栄養アセスメント加算を新設。

栄養改善加算においては、管理栄養士が必要に応じて利用者の居宅を訪問する取組を求めた。認知症GHでは、管理栄養士が介護職員等へ助言・指導を行い栄養改善のための体制づくりを進める栄養管理体制加算を新設した。

5. 入浴介助加算が激変

通所リハビリテーション、通所介護で激変となったのが入浴介助加算である。
従来、入浴介助加算は利用者に入浴頂く事で算定出来る加算で、実施する職員には資格も経験も求められない実施加算だ。ケアプラン上の一般的な目標は「身体を清潔に保つ」であり、通所介護などでも、施設で入浴をすることで自宅での入浴が不要となることで、その入浴をセールスポイントとする通所サービスも多い加算である。

また、今回の改定では従来は算定出来なかった部分浴も算定対象とされた。今回の改定審議でこの概念が180度変わった。すなわち、自宅での入浴が不要となるのではなく、自宅において自分で入浴を続けるためのリハビリテーション一環として入浴介助という方向である。お世話型の気持ちの良い入浴をして頂くのでは無く、利用者が自分で出来ることはすべて自分でやって頂き、介護職は見守り的援助を行う。個別入浴という考えに発展させて、療法士や介護福祉士が利用者の自宅を訪問して、利用者の自宅での入浴環境を確認して個別入浴計画を策定する。その計画に基づいて個別入浴によるリハビリテーションを実施する。今後は利用者のニーズを把握して、2つの区分を使い分けることが重要である。

6. 居宅介護支援の見直し

居宅介護支援では、特定事業所加算が大きく変わった。
従来の区分Ⅳは単独の加算に移行となり、新たな区分Aが創設された。それは、従来の区分Ⅲの算定要件である常勤ケアマネジャー二名体制のうち、一名を非常勤の常勤換算で1以上の配置を可能とする算定要件となっている。すべての区分に、必要時応じてケアプランに、インフォーマルサービス(保険外サービス)などを位置づけることが加えられた。

居宅介護支援の逓減制の変更も要注意である。
従来は、ケアプラン40件目から基本報酬は区分Ⅱとなり、40件以上のケアプランから報酬単位が半減される。この40件のボーダラインが45件に引き上げられた。ただし、それは一律の引き上げでは無く、一定の要件を満たした場合のみの措置となる。一定の要件とは、ICTの活用、もしくは事務員などを雇用していることである。ICTの活用は、Chat機能を備えたアプリをスマホに入れて情報共有していたり、タブレットを活用していたり、AIを活用してケアプランを作成していたりが要件となる。

この他にも、通院している利用者の件でケアマネジャーが病院と相談し、主治医から受けた助言などをケアプランに位置づけた場合の連携加算の創設、退院後に介護サービスを利用することを前提に担当予定のケアマネジャーがその準備を進めていたが、看取りの診断を医師から受けたり、退院することなく死亡した場合などの一定の要件を満たすことで基本報酬を算定出来るなど措置が導入された。地域包括支援センターが予防ケアプランを地域の居宅介護支援に外部委託を進めて連携を取ることを評価する委託連携加算などが新設された。

次回も引き続き、令和3年度介護報酬改定の検証を行っていきたい。

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