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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第18回【後編】2024年介護保険法改正の方向②

2023/02/13 カテゴリ: 介護保険法改正

前編こちら: 第18回【前編】2024年介護保険法改正の方向②

タスクシフティングと介護助手

次に、タスクシェア・タスクシフティングが今回の大きなキーワードとして浮上してきた。タスク=仕事、シフティング=移していく、移譲するという意味だ。特に介護施設の介護職員は、本来の介護の仕事以外に多様な業務を日常的に熟している。ベッドメイキング、掃除、配膳の手伝い、食器洗いなどの、間接業務である。このような仕事をやりながら、本来の介護職員の業務である入浴介助、排泄介助、食事介助を実施している。結果として、介護職員が何人いても足りないということになっている。介護職員がやっている間接的な業務を切り分けして、役割分担を明確にする必要が論点となった。それらを介護助手に移譲することで、介護職員の負担が大きく減少して、本来の介護業務に集中することができる。介護助手とは、地域の元気な高齢者や子育てが終わった主婦層、学生などを想定している。この介護助手という名称については高齢者とか子育てが終わった主婦層からの積極的な参画が促されるように、名称についても引き続き検討していくとされた。現在は、老健とか特養の介護施設を中心に、モデル事業としての検証作業が行われ、来るべき令和6年度改正で、人員配置の緩和措置や加算の算定要件に含める方向が出されている。また、介護助手の人材確保については、今後は社会福祉協議会やシルバー人材センターなどと提携しながら柔軟に対応していくとした。令和6年度以降、本格的にこの介護助手制度がスタートすると思われる。当初は介護施設を中心であるが、デイサービスやグループホーム等についても活用が可能ではないか。ただ、この介護助手についても、地域間格差が大きく、地方では元気な高齢者すら確保が難しいとの声も聞く。

なお、介護助手については、地域の元気な高齢者などを介護助手ではなく介護職員として雇用すれば良いという声も聞こえるが、それはまったく違う。介護という仕事は、向き不向きの適性がある。いくら優秀な者でも介護の仕事が向かない方が多くいる。介護の仕事は、特に、人と人とのコミュニケーション能力が重要である。人との付き合いが好きな方でないと務まらない仕事だ。人との付き合いが苦手な者は、介護の仕事についても、1、2週間で退所してしまう。介護の仕事は適正の問題が大きく、誰でも良いというわけではないのだ。しかし、人付き合いやコミュニケーションが苦手な場合であっても、ベッドメイクとか掃除とか配膳などは出来る。また、介護助手として雇用した者が、介護職員として適正があると判断されれば、介護職員に引き上げていけば良いのだ。介護職員の確保策としても、介護助手というのはとても重要なキーワードになってきた。介護助手制度の導入で、介護施設や特定施設の人員配置基準である三対一配置を、四対一配置に緩和することも検討が進められている。この論点も、今後の介護報酬改定審議の中で明らかになっていく。

第211回社会保障審議会介護給付費分科会資料 令和4年7月5日(火)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000961063.pdf

電子申請システムとICT化の加速

訪問介護は人手不足が顕著で、有効求人倍率が15倍という異常な状態である。2040年には69万人の介護職員の不足が見込まれており、在宅サービスの人材確保が急務となっている。またICTの活用も念頭においての検討も必要である。今回、在宅サービスにおける管理者の常駐の規定の見直しが論点となった。管理者は最初から最後まで事業所に居る必要は無く、場合によっては在宅ワークでの対応が可能とされた。今後の介護報酬改定審議に於いて、管理者の常駐配置要件の見直しが検討される。ただ、現実的には、訪問介護などの管理者の多くは他の職種と兼務しているので、どこまで効果があるかは疑問である。どちらかというと、デジタル庁への配慮と言った性格が強い論点に感じている。

文章負担の軽減措置としては、申請関係を電子申請にすることが示されている。そのため、地域毎に独自に作成されている提出書類の様式一本化を国は進めている。標準様式を示して、切り替えが完了した自治体から電子申請システムに移行している。今後はさらに、システム利用を原則化することで、令和7年度までに、自治体に対して制度上で義務化するとした。この電子申請はさらに加速する。電子申請システムもICT化の一つである。今後は、コンピューター苦手だとか、無理などと言っている時代ではなくなっている。ICT化は、今後は更に加速する。

介護事業所の指定申請等のウェブ⼊⼒・電⼦申請の導⼊、文書標準化
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000971957.pdf

今回の制度改正ではないが、今年4月から ケアプランデータ連携システムがスタートするということは周知の事実である。ケアマネジャーは、毎月毎月、利用者の提供票をコンピューターで作成して、担当事業所に紙で印刷して渡している。担当事業所は、ケアマネジャーから届いた提供票を管理ソフトに入力したりして活用する。一月が終わったら、担当事業所は提供票に実績を記載して担当のケアマネジャーに紙ベースで戻す。結果、ケアマネジャーの手元には、月初に提供票が100枚近く届くことになる。利用者が30人いて、各利用様に3つの事業所を位置づけていたら90枚の提供票が返ってくる。この100枚の提供票を、給付管理ソフトに手入力している。この作業だけでも2〜3日かかっているのが現状だ。連携システムを使う事で、ケアマネジャーはPCの画面上で提供票を入力し、入力が終わったら国保連合会のシステムを使って担当事業所に電子データとして提供票を送る。担当事業所は届いた電子データを自分の管理ソフトなどに取り込むだけだ。ひと月が終わったら担当事業所は、画面上に実績を打ち込み、担当ケアマネジャーに電子データで送る。ケアマネジャーは担当事業者届いたこの電子データを給付管理ソフトに落とし込むだけで作業を終わる。すなわち、従来の手入力の部分が双方で無くなる。入力ミスでの返戻リスクも無い。ケアプランデータ連携システムが導入されることで、今まで3日程度かかっていた提供票の入力作業が、1日もかからないという。圧倒的に業務は簡素化される。多くの意味で、ICTシステムへの期待は加速している。

社会保障審議会 介護保険部会(第105回)   令和4年12月19日 参考資料3
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001025605.pdf

以上が「2024年介護保険法改正の方向②」となります。

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