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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

令和六年度介護報酬改定における加算算定のポイント

2024/04/04 カテゴリ: 介護保険法改正

令和六年度介護報酬改定も解釈通知とQ&Aが派出され、一段落の感がある。今後は5月10日の4月分介護報酬請求を完全な形で行うための最後の確認期間となる。今回は、主な加算の改定状況を踏まえて、その意味を総括する。

訪問介護は特定事業所加算の算定が明暗を分ける

訪問介護は基本報酬が2%以上も引き下げられた。通常の場合、介護報酬単位が引き下げられた場合の対応策として稼働率のアップと加算算定を進めるのが定石である。しかし、訪問介護は有効求人倍率が15倍を超えており、圧倒的なヘルパー不足の中で、稼働率のアップは容易ではない。他の介護サービスであれば、加算を算定する事でマイナス分をリカバリーすることが考えられる。しかし、特に訪問介護は、加算の種類が最も少ないサービスである。そのような状況下で、唯一の可能性が特定事業所加算の算定である。その中でも、区分Ⅳは3%の加算率であり、この区分を算定することで基本報酬のマイナスは補填できる。算定要件も、会議や研修の実施といった基本要件を満たした上で、サービス提供責任者を規定よりも1名多く配置することが加わった。従来の勤続7年以上の介護職員が30%以上という算定要件とのいずれかを満たすことで算定が可能となる。この勤続年数もQ&Aにおいて、同じ法人内であれば、他の介護サービスでの介護職員としての勤務年数を通算できるとされたため、算定しやすくなったといえる。ただし、すでにこの加算を算定済みの場合はマイナスは補填は不可となり、厳しい事業所運営を強いられる。しかし、もともと特定事業所加算の算定割合が少ないという事実から、多くの訪問介護の経営環境が改善する可能性は高いのではないか。

加算の上位区分が設けられた意味

定期巡回サービスの基本報酬がマイナス4.4%と最大規模のマイナスとなった。基本報酬の月額単位としては700単位前後のマイナスである。過去に於いて、ここまでのマイナス査定は平成27年度の小規模デイサービス以来である最大規模のマイナスとなった。そのような中で、総合マネジメント体制強化加算に上位区分が設けられた。もちろん、新たなる算定要件というハードルを越えないと算定できない。その上位区分は200単位のプラスとなることから、この算定は必須となっている。では、この200単位はどこから持ってきたのか。それは、既存の区分1000単位を800単位に減額して付け替えたのだ。この手法は、他の加算でも多く見受けられる。今回の報酬審議において、メリハリという言葉が何度も語られている。今回の介護報酬はメリハリの改定である。どこかを引き上げたら、どこかを引き下げる。これがメリハリである。基本報酬が700単位下げられた中で、この上位区分を算定することでマイナスは500単位に軽減される。しかし、上位区分を算定できない場合は、マイナスが900単位に増大する。今回の加算算定では、同じサービス内での二極化が拡大することとなる。算定基準というハードルを越えられない場合、事業収益が大きく減少することとなる。今回の報酬改定では、明らかにレベルアップが求められている。この上位区分については、訪問看護の初回加算、特定施設の夜間看護体制加算、老健の初期加算やリハビリテーション・マネジメント計画書情報加算、短期集中リハビリテーション実施加算、かかりつけ医連携薬剤調整加算、多機能型の認知症加算、通所リハのリハビリテーション・マネジメント加算などに設けられている。

大きく算定要件の変わった居宅介護支援

居宅介護支援では、ターミナルケアマネジメント加算の対象疾患に制限が無くなった。これまでは末期ガンのみが対象であったので、算定対象が大きく拡大したことになる。同時に特定事業所医療連携加算の算定要件において、ターミナルケアマネジメント加算の算定回数が、これまでの5回以上から、一気に15回以上にハードルが上がった。いくら対象疾患が緩和されたとは言え、年間の算定回数15回は非常に厳しいと言える。確実に小規模事業者は算定が困難となった。ケアマネジャーの在籍人数が多い大規模事業所でない限りは難しいと言える。

入院時情報連携加算は、既存の情報提供期日が3日以内(200単位)と7日以内(100単位)であった算定要件を、当日中(250単位)と3日以内(200単位)に短縮した。新たな報酬区分はどちらを算定すべきか。これは圧倒的に当日中(250単位)である。報酬単位以前に、算定しやすくなっている。それは、入院日以前の情報提供が可能となったことだ。現在の算定要件では、入院日以前の情報提供は不可である。体調急変による緊急搬送でなければ、通常は持病関連での入院であり、一週間前以前に入院日は設定される。その間に情報提供すれば良いのであるから余裕を持った対応ができる。何らかの理由で入院日前の情報提供が出来なかった場合は、3日以内に切り替えれば良い。

通院時情報連携加算は前回令和3年度改定で創設された。利用者が病院に通院するときにケアマネジャーが同行訪問し、主治医師と情報交換することで50単位が算定できる。この通院対象に歯科医師が追加された。来年度からケアマネジャーの法定研修カリキュラムが変更となる。誤嚥性肺炎マネジメントが大きく取り上げられる。高齢者の死亡要因で誤嚥性肺炎は高い確率である。その予防においては口腔ケアが重要である。しっかりとケアプランに口腔ケアを位置づけることが求められ、歯科医師との連携も重要であることが示された。

リハビリ、口腔ケア、栄養改善の一体的な提供とLIFE関連加算

訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、介護施設では、リハビリテーション、口腔ケア、栄養改善の一体的な提供が大きく位置づけられた。リハビリテーション・マネジメント加算、短期集中リハビリテーション実施加算、リハビリテーション・マネジメント計画書情報加算、特養での個別機能訓練加算などである。LIFEが始まって以来、この一体提供が重要度を増していた。特にリハビリテーションと栄養改善は密接な関係にある。今後は、リハビリテーションに偏ることなく、口腔ケア、栄養改善への取り組みが急務となっている。そして、介護施設では、退所時栄養情報連携加算が創設されて、特別食および低栄養状態と診断された利用者の栄養管理情報を退所後の主治医や施設の栄養士に提供することとなった。また、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションでは、理学療法士等が、医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する退院後共同指導加算が創設されている。

新興感染症への対応と認知症加算の見直し

コロナ禍は過去のものとなり、新たな未知のウイルスへの対策として、高齢者施設等感染対策向上加算と新興感染症等施設療養費が創設された。コロナ禍の3年間の完成を踏まえて、日頃からの感染対策を求めるとともに、新たなウィルスによるパンデミックが発生した場合も可能な限り入所者を入院させずに施設内で療養することを評価する。

認知症に関しては、ほとんどの加算の算定要件が見直された。新たな加算として、グループホーム、介護施設を対象に、BPSD(行動心理症状)を予防する観点からチームケアに取り組むことを評価する認知症チームケア推進加算が創設されている。これは基本的に、プロセス評価の加算であるために、アウトカムは求められない。

介護職員等処遇改善加算と職場環境等要件の見直し

6月からは、現行の介護職員処遇改善3加算が廃止となり、新たに創設される介護職員等処遇改善加算に一本化される。特例として、令和6年度末(令和7年3月)までは、区分Ⅴが設けられて、処遇改善加算Ⅲ区分を算定するなどで、すぐには新加算の要件をクリア出来ない場合の措置とされている。ポイントは、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップとすることである。この新加算の算定率には、2年分の賃上げ分を含んでいる。そのため、6月に移行した段階で算定率は現行の3加算と2月からの支援補助金を合計した加算率より高く設定している。この増加分は、6月から前倒しで支給しても良いし、令和7年度に繰り延べて7年度に支給しても良いとされている。しかし、繰り延べは2つの問題を抱える。一つは、繰り延べて増額した部分の賃金相当分が令和8年度以降の加算で補填されないこと。すなわち、8年度以降は自腹となる。2つ目は、繰り延べした部分の収益は令和6年度の収入となり、法人税の課税対象となることだ。厚生労働省は、この税金対策として、賃上げ促進税制の活用を挙げているが、一般的ではない。それらを勘案すると、6月から前倒しでの支給がベストの選択といえる。

介護職員等処遇改善加算の算定要件である職場環境等要件では、生産性向上のための業務改善の取組を重点的に実施すべき内容に改められている。それは、業務改善委員会の設置、職場の課題分析、5S活動、業務マニュアルの作成、介護記録ソフト、見守りセンサーやインカムの導入、介護助手の活用などである。この要件は、令和7年度からの適用であるが、小規模事業者にはハードルが高く、特例措置が設けられている。しかし、施設系を中心に生産性向上を求める方向は強化されていて、業務改善やICT化に先進的な取り組みを行う介護施設等を評価する生産性向上推進体制加算が創設され、この加算を算定することで職場環境等要件の生産性向上の部分をクリアするとされている。

業務継続計画未策定減算と高齢者虐待防止措置未実施減算

令和6年4月より、BCP作成と高齢者虐待防止措置への未対応事業所には減算が適用される。BCPは特例措置があり、基本的には令和7年4月からであるが、虐待防止措置は4月から適用される。業務継続計画未策定減算は、施設系は3%、その他のサービスは1%。高齢者虐待防止措置未実施減算も1%である。注意すべきは、BCPの義務化は令和6年4月であることには変わりはないという事だ。減算とならなくても、運営指導で運営基準違反として指導対象となる。やはり、BCPの作成と高齢者虐待防止措置は年度内に完了しておくことが必要だ。また、業務継続計画未策定減算の算定要件に、当該業務継続計画に伴い必要な措置を講ずること、が示されている。

高齢者虐待防止措置未実施減算は、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、専任の担当者の設置の4つを実施して居ない場合に減算となる。こちらの特別措置は福祉用具関連だけであるため、令和6年4月からの減算適用となる。さらにQ&Aにおいて、委員会、研修、訓練は、少人数の事業所も免れないとされた。1人ケアマネジャーの事業者や少人数の事業所は、他の事業所との共同開催などを模索することが求められることとなった。

訪問介護と居宅介護支援への同一建物減算

同一建物減算は、訪問介護が強化され、居宅介護支援に創設される。訪問介護は、新たに12%減算の区分が創設される。前6ヶ月の提供件数の内、同一敷地内または隣接する建物に居住する利用者が90%以上である場合に適用となる。前6ヶ月のカウントは令和6年4月からであるため、減算の開始は11月からとなる。居宅介護支援は5%の減算となった。事業所の所在する建物と同一敷地内、または隣接する建物に居住する利用者は、1名から減算。同一建物に居住する利用者が20人以上である場合に適用となる。5%の減算率は、段階的であると思われる。次回の改定で訪問介護同様に10%に引き上げられる可能性が高いといえる。

身体拘束廃止未実施減算

ショートステイと多機能型に、身体拘束廃止未実施減算が適用される。経過措置は1年である。身体拘束に掛かる委員会の開催、指針の整備、それに基づく研修の実施である。訪問サービス、通所サービス、福祉用具、居宅介護支援については、減算にはならないが、緊急やむを得ない場合の身体拘束について、記録の作成が義務化された。記録に内容は、身体拘束の態様、拘束時間、その間の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由である。この四点を、拘束を行う度に、利用者毎に記載しなければならない。また、今回、減算から外されたこれらのサービスも、次回改定で減算となる可能性が高い。

加算とは何か

これまで、介護事業者の中には加算の算定から敢えて避ける風潮があった。それは、加算の算定によって利用者の自己負担が増加すること。担当のケアマネジャーが加算の算定の少ない事業者を優先とする傾向があったことなどが理由である。しかし、令和6年度介護報酬改定において、基本報酬の引き上げが叶わなかった現実から、これからの収入確保は加算算定が重要なテーマとなっていくことが明らかになった。そもそも加算とは、国が介護事業者に求めるハードルに報酬をつけたものだ。加算をより多く算定する事業所は、国の求めるレベルの質の高い事業所と評価される。加算算定が出来ない事業所は、国の求めるレベルに達していない質の低い事業所だという事を理解する必要がある。

資料出典

第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料令和6年1月22日(月)
【参考資料1】令和6年度介護報酬改定における改定事項について[5.8MB]

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