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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第24回 LIFEのフィードバック活用の課題とは?

2023/08/08 カテゴリ: LIFE

提供が始まった利用者別フィードバック票

LIFEのフィードバックは、6月30日より事業所別、利用者別、加算別フィードバック票の提供がスタートした。これによって、加算算定の為には、本格的にフィードバックの活用が必要となった。この活用方法は各事業所のノウハウとなり、時系列のデータ資産として積み上げられていく。ひいては、事業者間の格差を拡大し、差別化が加速する要因となっていくことになる。今、しっかりとフィードバックの活用に取り組む事が重要な経営課題となった。

LIFE(科学的介護情報システム)とは、厚生労働省が運用する介護情報データベースのことである。LIFEは「根拠(エビデンス)に基づく介護」という概念を指し、科学的な根拠に基づいた介護を促進するために開発された。LIFEは、介護サービスの質の向上を目指している。具体的には、介護事業者がLIFEに介護実施計画や介護結果を提出し、それを厚生労働省が収集・分析することで、科学的な根拠に基づいた介護の実践と評価を行うことが可能とされている。

LIFEの利用方法は、主に以下のステップで行われる。

① データの提供: 介護事業者はLIFEに介護実施計画や介護結果などのデータを提出。

② フィードバックの確認: 介護事業者はLIFEから提供されるフィードバック情報を確認し、介護の改善や評価に活用する。

③ PDCAサイクルへの活用: 提供された情報やフィードバックを基に、介護事業者はPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回し、介護の質向上に取り組む。

LIFEの利用にはさまざまなメリットがある。例えば、介護報酬の加算や介護サービス品質の向上などが挙げられる。また、LIFEのデータは介護全体の大きな財産となり、介護政策や研究に活用されることも期待されている。

さらに、令和6年度はケアマネジャーの法令研修が改正される。今後は、根拠のある支援の組み立てが求められ、その基盤として適切なケアマネジメント手法と科学的介護(LIFE)等を学ぶ内容が組まれていくことになる。LIFEについては、令和6年度介護報酬改定に於いて、居宅介護支援への加算が創設されることが検討されている。将来は、サービス担当者会議において、担当事業所毎の利用者別フィードバック票を共有して検討し、必要に応じてケアプランに反映するといったPDCAサイクルの推進が求められるであろう。その場合、LIFE活用を行っていない担当事業所が取り残される可能性も出て来る。ケアマネジャーに対して、根拠のある支援が求められたことで、エビデンスの一つとしてのLIFEの位置づけが強化されることは間違いない。

LIFEのフィードバックの現状とPDCAサイクル

LIFEは、介護事業所に対して提供される科学的介護情報システムであり、令和3年度から本格的に導入が行われた。LIFEのフィードバックは、介護事業所が提出したデータを集計し、全国の介護事業所に提供されている。現在の事業所別フィードバック票では、利用者の身体状況などのデータが全国平均と比較されて介護事業所に返されている。具体的なフィードバックの内容としては、要介護度や年齢階級別の内訳、日常生活自立度の件数などが挙げられる。例えば、ある特養施設では、暫定版のフィードバックから利用者の要介護度が全国平均よりも高いことや、認知症高齢者の日常生活自立度において一部の支障を来す症状や行動が見られる割合が高いことが判明している。また、意思疎通の評価では自分から挨拶する割合が高くなっていることも報告されている。LIFEのフィードバックは、2023年4月分のデータ登録を集計時点とした事業所別フィードバック、利用者別フィードバックが6月30日より順次掲載となっている。

ここで問題となるのが、LIFE関連の加算の算定要件であるPDCAサイクルへの活用である。現状で、集計結果の信憑性が低い事もあって、LIFE関連の加算の算定要件であるPDCAサイクルへの活用については、「各事業所において、可能な範囲で御活用ください。」と留意事項に記されている。しかし、PDCAサイクルへの活用が加算の算定要件であるため、今後の運営指導においてLIFE関連加算の返還指導となるので注意が必要である。

PDCAサイクルへの活用とは、Plan(計画の策定)Do(サービスの実施)Check(評価指標を用いた評価)Action(共有と検討)のプロセスを廻し続けることである。LIFEに関連する全ての加算は、このプロセスを廻し続けることで算定出来る。問題は、このAction(検討)の部分である。このプロセスは、フィードバック票をダウンロードして、多職種で共有し、検討し、必要に応じて、計画に反映させることである。フィードバック票をダウンロードして、多職種で共有し、検討した記録が必要となる。よって、多職種が参加する検討会議などの中で、フィードバック票を多職種で共有し検討することで、その要件を満たすことになる。

フィードバック活用にはチームプレイで対応する

利用者別フィードバック票は、前回提出分との比較表での提供となっている。まず、利用者毎の現在の状況と時系列の推移を確認することから始まる。データ解釈時の注意点としては、指標の数値と変化は、必ずしもケアや状態の善し悪しを反映しないこと。利用者については、背景や介護サービスの利用目的、期間中に取り組んだ内容、入院や他のサービスの利用状況など、多様な要因が期間中の変化に関連する事などを担当職員間で理解しなければならない。その上で、利用者の変化や提供した介護サービスの取組状況を考慮して、検討会議などで結果を共有して検討し、介護サービスの改善、ひいてはケアの質の向上に繋げることが活用の目的となる。利用者別フィードバック票自体はあくまでも資料であって、それ以上でも、それ以下でも無い。なぜ、その評価指標の数字が変化しているのかを、直接にケアを担当している職員が、多職種で議論を行う必要がある。そこには、日頃から問題意識を持って、如何に介護のプロとして利用者に接してきたかが問われる。また、すべての職員が各評価指標の意味を知らないことには始まらない。

例えば、ADLの評価指標であるバーセルインデックスを活用して利用者を評価するとした場合、リハビリ職だけで評価、分析、検討するならば、その専門職の視点のみでの解釈となる。この時、介護職員、看護職員、生活相談員、管理栄養士、衛生士などが分析、検討に参加することで、各職種の視点での分析が加えられ、幅の広い解釈が可能となる。同時に各職種の知見が拡がる。結果として、各職種のスキルアップ、レベルアップにつながり、引いては施設、事業所のケアの質の向上に繋がっていく。これが多職種連携のメリットであり、目的である。

このように、LIFEの活用を上手く機能させるためには、多職種が連携して、利用者の更なる状態の改善に取り組む必要がる。多職種連携における最大の課題は、介護業界における慢性的な人材不足である。各職種が集まってカンファレンスを行う時間が確保出来ないという事業所も多いだろう。各加算の算定要件である多職種協働についても、事後報告に近い形で終わっているケースも多く見かける。しかし、それでは各職種の知見が拡がらないし、各職種のスキルアップ、レベルアップにつながり、引いては施設、事業所のケアの質の向上に繋がるというメリットが活かせない。コロナ禍に於いては、いかに短時間で効率的に業務を熟すかが、改めてクローズアップされた。コロナ禍においてインターネット会議システムを利用することが進んだ。その結果として、対面での会議における無駄話やスタート時間の遅れが無くなり、時間を有効に使えるようになったとの意見も多くある。今までの対面での会議が、如何に効率が悪かったかの実証である。

利用者の自己負担

LIFEが始まって2年弱の間、フィードバック票が暫定版であったことを理由に、LIFEのデータを提出するだけで、単に加算だけ算定するケースが大部分であった。ここでの問題は、利用者に加算として費用を負担頂きながら、何も利用者に還元してこなかったことにある。利用者別フィードバック票の提供が始まった今は、言い訳は通じない。しっかりと利用者にその成果を還元することが求められる。

LIFEは、主に利用者の状態やケアの実績に関する情報を収集している。収集したデータをもとに、施設・事業所単位/利用者等単位のフィードバック票が提供される。また、自施設・事業所の利用者だけでは無く、全国の利用者と比較した相対的な状況等を確認することができる。LIFEのフィードバックから見える利用者の状態やケアの実績に関する情報だけではなく、「どのような状態を目指していたか」「どのようなケアを行ったか」といった情報と合わせて解釈することが重要である。 フィードバック票を気づきの「きっかけ」として、職員間、また利用者や家族と話をすることで、より良いケアに向けた議論を行うことが可能である。

介護施設・事業所が一体となってケアの質の向上に向けた取組を実施していくことが必要である。 短期的な成果を目的とするものではなく、「利用者毎の状態や意向に基づくケア計画」→「ケアの実践」→「ケアの評価」→「評価に基づく計画の見直し」という一連の流れを継続して繰り返していくことを通して、中長期的にケアの質を向上させる。日々の多忙な業務の中で、中長期的なケアの質の向上の必要性を浸透させて、具体的な業務プロセスを構築して定着させるためには、経営者層と具体的な取組を行うミドル層の役割が重要となる。 しっかりと役割分担をして、施設内で周知させるべきだ。

介護従事者は、利用者に直接ケアを提供している。利用者の状態を評価した上で、各利用者の希望や要望をふまえて、適切なケアを提供していく役割を担っている。 全ての利用者が質の高いケアを受けることができるように、介護従事者は、バーセルインデックスなどの同じ評価指標を用いて利用者の状態の評価ができるようになることが先決である。そして、計画書等の情報やLIFEのフィードバック、日々の利用者との関わりを通して把握した情報を踏まえて、ケアの改善に取り組むことが大切となる。これらの役割分担の意味を理解して、定期的に共通の評価指標ですべての利用者を評価する。組織的なフィードバック票の活用の基盤を作らねばならない。

これらをやり続けることで、職員のスキルが確実にレベルアップする。その結果、介護施設全体のケアの質が向上する。利用者はより高いレベルのケアを受けることが出来る。LIFEの効果は、利用者、職員ともに満足度がアップすることにある。この点で、利用者に費用を負担頂き意味がある。

LIFEのフィードバック活用を促進する方法

① サービス担当者会議で活用する

利用者フィードバック票は、施設・事業所内だけの活用に留まらない。利用者や家族に渡して、近況の報告と今後の対応についてのディスカッションに活用出来る。前回データとの比較で、項目毎にアップダウンの矢印が示されているので、LIFE委員会で検討した内容などに基づいて説明を行う。科学的介護推進体制加算の利用者別フィードバック票では、数値や矢印がある事で、その理解が容易になる。エビデンスデータが提示されることで、その解説にも信憑性が増し、信頼性も高まる。また、サービス担当者会議でその利用者を担当する担当事業所間でも共有することで、エビデンスに基づいた検討が可能となる。その利用者が、デイサービスとデイケアを利用している場合、それぞれの検討結果と解釈を共有することで、より連携したケアが可能となる。フィードバック票を上手く活用することで、目標の達成に向けて、担当事業所間での連携も加速することが期待出来る。

② リハビリテーション会議で活用する

通所リハビリテーションで開催されるリハビリテーション会議に於いても、同様の効果が期待出来る。他の担当事業所の同席は最小限であるが、その分、利用者や家族に対して、より深い説明と理解が期待出来る。最近は、コロナの影響もあって、オンライン会議システムでの会議開催が増えて来た。画面上でフィードバック票を共有することで、利用者・家族にとってインパクトのある会議開催が可能となる。

③ 科学的介護提供体制加算の評価シートで読み取る

フィードバック票を活用する方法以外に、更に高いレベルでLIFEを活用する方法がある。ここでは、個人別データの活用方法を述べていく。科学的介護提供体制加算を算定している場合、令和3年4月から算定したとすると、令和5年8月時点では、令和3年4月と10月、令和4年4月と10月、令和5年4月の計5回の評価シートが利用者毎に存在している。それを、古い順から時系列に横に並べていく。利用者は高齢であるので、多くの項目に大きな変化は無い。しかし、一部の項目に変化があった場合には、他の評価指標を含めて多職種で検討していく。そうして、頭の中で時系列のグラフを描くことで、個人別のフィードバック票と同等の活用が可能となる。

④ 個人別の評価シートからLIFE活用を実践

例えばADLの数値を、今回の結果と過去のデータとで結果を比較する。そうすると、評価点数が横ばい、または減少が見て取れたとする。この場合、ADLに絞って検討すると、リハビリテーションの結果が出ていないのだから、リハビリテーション・プログラムを見直すと言う結論になる。しかし、BMIの数値を見ると、全国値よりかなり点数が低くて、低栄養状態であることが分かった。さらに、食事摂取量のデータを見ると、こちらも全国値より、かなり低いことが読み取れた。これらを、リハ職、介護職、看護職、栄養士などの多職種で検討した結果、この利用者は日頃から食事量が少なくて低栄養状態であるために、体力や筋力が衰えているとの結論に達した。そのために、リハビリテーションの成果が出ていないと判断した。この場合の対策は、食事量を増やして栄養状態を改善する事が優先されるだろう。その結果として、栄養状態の改善後も、ADLの点数が上がらない場合はリハビリテーション・プログラムを見直せば良い。このように、多職種が共同して評価項目を総合的に見ていくことがLIFE活用のポイントとなる。この方法を使って、個人データを活用する事で多くの情報を、多職種で共有して検討出来るようになる。フィードバック票が提供されるのは、LIFEにデーター提出してから数ヶ月後である。それを待っていては、時間のブランクが生じて、リアルタイムな対応が出来ない。評価した結果数値を素早く活用することで、更なる成果が期待出来る。また、職員のスキルも向上する。このような方法で、個人別のLIFE活用がフィードバック票を待たなくても可能である事に気づくことで、他の介護施設に先行して活用ノウハウを構築することができ、それは差別化に繋がっていく。

介護現場の業務効率化

フィードバック活用にはチームプレイで対応するのがLIFE活用のキモである。多職種が連携して、利用者の更なる状態の改善に取り組む必要がある。そのための検討会議などが必要となるが、人材不足が加速する昨今では中々、同一時間帯に各職種の担当者が集うにも限界があり、十分な時間の確保が難しいのが現状である。また、ランサムウェア対策などのセキュリティの問題もあって、安易な情報共有はリスクが高い事も問題である。ある施設では、LIFEの利用者別フィードバックの活用にグループウェアを使っている。これに、それぞれの担当者が空き時間を使って情報や意見を記載する。同時に資料なども添付しておく。この事前準備を行う事によって、検討会議の時間が短時間であっても内容の濃い会議を設けることが可能となる。会議後のフォローも容易である。利用者別フィードバックは個人情報でもあるので、メール添付などの方法では誤配や情報漏洩などのリスクが高すぎる。業務効率化とセキュリティ対策を同時に併せ持つグループウェアなどの活用も検討すべきである。

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