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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第14回【前編】2024制度改正審議のポイント

2022/10/06 カテゴリ: 介護保険法改正

令和6年度介護保険法改定の注目点

9月12日の審議に於いて、令和6年度介護保険法改定の論点の一つ、「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進」の、一巡目の審議が終了した。

今回の社会保障審議会介護保険部会に提示された厚生労働省の論点は、次の4つである。

1. 地域包括ケアシステムの更なる深化・推進

2. 介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進

3. 給付と負担

4. その他の課題

この論点に於いて注目しているポイントは5つである。

① 特別養護老人ホームの入所基準の在り方について。

② 適切なケアマネジメント手法の実効性の担保や業務負担軽減等の方策を含めた方策。

③ 科学的介護の推進に向けて、ケアの質の向上、自立支援・重度化防止等の効果に係るエビデンスの構築や、「データヘルス改革に関する工程表」に位置付けられた取組について、どのような仕組みが考えられるか。

④ 急性期・回復期リハビリテーションと生活期リハビリテーションの在り方と連携や、LIFE等の活用による高齢者リハビリテーションの推進、介護保険事業(支援)計画におけるリハビリテーションに対する取組と目標設定の促進について、どのような方策が考えられるか。

⑤ 市町村が、各地域における総合事業の在り方の検討。新型コロナウイルス感染症で通いの場の活動が自粛されていた状況から、活動再開や参加率向上を推進する方策。

特別養護老人ホームの入所基準の在り方と老健への影響

特別養護老人ホームは、2014年時点では待機者が50万人を超えていたが、2019年調査では29万人に大きく減少している。地域によっては、人材不足などを要因として、空床が発生して経営が悪化している施設も見受けられる。これは、2015年から特別養護老人ホームの入所要件が要介護3以上とされたことも要因の一つである。この時点では、待機者が50万人を超える現状で、本当に入所を必要とする重度者を優先的とすることからの変更であった。

しかし、今、待機者は大きく減少して経営状況の悪化する施設も出てきている。この点を踏まえて、特別養護老人ホームの入所要件を再び、要介護1以上とする論点が浮上している。これが実現し、別の論点である介護老人保健施設の多床室料の自己負担化も行われた場合、確実に長期滞在型の介護老人保健施設の経営を直撃すると共に、有料老人ホームなどの経営にも影響を与えることが予想出来る。

それは、どういうことか。
介護老人保健施設で、基本報酬の算定に於いて、その他型、基本型を算定している、所謂、特養化した施設は未だに多いのが現状だ。介護老人保健施設の自己負担額は、明らかに特別養護老人ホームより高いにも関わらず、この運営形態が維持出来る理由は、その地域に特別養護老人ホームが不足しているという点もあるが、特別養護老人ホームの多床室が全額自己負担であるのに対して、介護老人保健施設の多床室料には介護保険が適用されており、自己負担額としては、余り大差ないことが挙げられる。

この点について、介護老人保健施設の多床室料の自己負担化が実現した場合は、確実の特別養護老人ホームの自己負担額が安くなり、特別養護老人ホームの待機者が大きく減少して空床も生じている現状からも、入居者の特別養護老人ホームへの移動が起こるだろう。さらに、特別養護老人ホームが要介護1,2の軽度者であっても入居出来る改正が行われた場合、軽度者である事を理由として介護老人保健施設に入居している入居者の移動も想定しなければならない。この点については、有料老人ホームなども同様である。

介護老人保健施設の今後の施設経営という視点においては、基本報酬の算定に於いて、強化型、最終的には超強化型を目指すべきである。また、病院と在宅との中間施設であるという原点に立ち返って、短期集中型のリハビリテーションにおける成果を求めるべきであり、そのためにはLIFEの活用を積極的に行っていくことが重要だ。

ケアマネジメント手法の実効性の担保や業務負担軽減等の方策

令和5年度から、本格的にケアプランデータ連携システムが稼働する。これは、現在は紙ベースで印刷し、対面でのやり取りを基本とするケアプランや提供票をコンピュータのアプリケーションを通してのやり取りを行う為のシステムである。

懸念される個人情報漏洩などのセキュリティ・リスクについては、国保連合会への介護報酬請求時に利用する電子証明書を活用することで対応する。厚労省の試算では、人件費、印刷費、通信費、交通費など年間81万6,000円のコスト削減も期待できるとしている。

このシステムは、現在も存在するが、居宅介護支援事業所と担当事業所の双方で、システムを導入していることが条件であり、かつ、システム開発ベンダーによって規格が異なり、ベンダーが違うと、データのやり取りが出来ないなどの問題があった。今回は、その規格を統一しての再スタートとなる。ただし、導入コストや利用料金などがまだ未定の部分も多く、普及までにはまだ、紆余曲折も考えられる。

ただ、居宅介護支援事業所においては、平均年齢の高齢化も顕著な課題として浮上しており、令和3年度介護報酬改定で設けられた、逓減制の緩和措置も中々進んでいない。逓減制の緩和措置は、居宅介護支援事業所の基本報酬区分Ⅰの算定要件であるケアマネジャーの担当件数39件を5件増やして44件として、その収入増をケアマネジャーの処遇改善に充てる事を目的としている。しかし、その算定要件が、ICT化もしくは事務員の配置であり、結果的にケアマネジャーの負担増とそれに起因するケアの質の低下が懸念されているのも事実だ。ICT化にしても、チャット機能のアプリケーションや、タブレットを使った介護記録ソフト、AIを使ったケアプラン作成システムが想定されているが、居宅介護支援事業所に普及途上であり、高齢化が進むケアマネジャーにはハードルが高いことも事実であろう。

いずれのサービスにおいても、業務の負担軽減と効率化が大きな課題となっている。ICTの導入にしても、食わず嫌いな部分も多く見受けられる。時代の流れから取り残されないためにも、まずは導入してみて、馴染めなかったら止めると言った、軽い気持ちからのトライが必要といえる。

また居宅介護支援事業所の自己負担の導入も大きな論点となっている。

 

後編こちら:第14回【後編】2024制度改正審議のポイント

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