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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

介護職員処遇改善支援補助金と介護職員等処遇改善加算

2024/02/29 カテゴリ: 補助金

介護職員処遇改善支援補助金

昨年11月の臨時国会で成立した補正予算に組まれていた新たなる介護職員への処遇改善は、この2月より介護職員処遇改善支援補助金としてスタートしている。介護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を2%程度(月額6,000円)ベースアップするための措置を、令和6年2月から前倒しで実施する。補助額は、一月当たりの介護報酬総単位数(介護職員処遇改善加算および特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算の金額を含めた総額) に、サービス別交付率を乗じる。補助額については、同一の設置者・事業者が運営する他の事業所・施設の賃金改善に充てることができる法人一括処理が可能である。そのため、配分金額を決める際には、法人全体でやり繰りが可能となっている。ただし、人員基準上、介護職員の配置の無い、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、居宅介護支援、介護予防支援については対象外であるため、法人一括であっても、併設の居宅介護支援のケアマネジャーへの支給は出来ないので注意が必要だ。

資料出展:厚生労働省 令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001197900.pdf

介護職一人6000円の支給は困難

受給額の計算は、一月当たりの介護報酬総単位数に、サービス別交付率を乗じる計算方法であるため、実際には一人6,000円の支給は困難である。理由は、介護職員処遇改善加算などと同様に、月々の稼働率に左右されるからだ。稼働率が上がれば受給額が増え、下がれば減る。また、配分する対象職員数の違いでも、一人あたりの支給額は大きく変動する。職員の頭数が増えれば、一人あたりの支給額が減る。一人6,000円の支給が可能なのは、毎月の稼働率が100%に近く、介護職員の人員基準通りでの事業運営を行う場合で、その他の職員への配分を見送るケースに限られる。この点は、職員に十分に説明すべきだ。多くの職員は、6,000円の昇給があると思っている。これより少ない金額であった場合は、不満と共に経営に対する不信感が募る。将来的な離職に繋がっては元も子もない。

その他の職員への配分

現行のベースアップ等支援加算同様に、その他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めている。その他の職員の範囲は各事業所において判断する事になっている。すべての職員に支給する義務は無く、看護職員や相談員など、支給対象の職種は限定して構わない。本部の人事、事業部等で働く介護に従事していない職員の取扱いは、介護報酬の請求事務などを受け持つ本部の事務職員も支給対象となる。この補助金では、その他の職員への配分について、特定処遇改善加算にある二分の一ルールや、年収440万以上の職員に配分できないなどの制限は設けられていない。

事業所側の裁量に任せる形である。そのため、その他の職員にも配分を行う場合は、介護職員の処遇改善を目的とした補助金であることを十分に踏まえた配分を行う必要があり、その他の職員に過度な配分を行った場合、指導対象となる可能性があることに注意すべきだが、そのさじ加減には、特に規定は無い。一般常識の範囲内であれば問題は無い。

2月分からの賃金改善が給付要件

対象期間は、令和6年2月~5月の賃金引上げ分である。取得要件は、2月の時点で、ベースアップ等支援加算を取得している事業所である。ただし、4月からベースアップ等支援加算の算定が可能な場合は、先行して2月から支援補助金を受給できる特例が設けられている。受給要件は、令和6年2・3月分から実際に賃上げを行っている事業所とされた。ここで言う、2月分とは、2月に支給される給与、または、例えば、2月末締めで3月に支給される2月分給与、どちらでも構わないとしている。この部分については注意が必要だ。1月25日に示されたQ&A問2では、介護職員処遇改善加算の支払に合わせることが示されている。この意味を十分に理解しなければならない。2月請求分の処遇改善加算は3月に国保連合会に請求され、4月後半に振り込まれる。そのため、2月分の処遇改善手当を4月または5月の給与で支払う施設事業所が大部分である。この場合、補助金についても現行の処遇改善加算等と同じ扱いとするために、2月分の補助金を、2月遅れ又は3月遅れで、4月または5月に支給しなければならない。この点については、厚生労働省のチラシにも以下の文章が記載されている。「「4月分の賃金」を2か月遅れで6月に払う、といった対応も可能です。従来の加算分が2か月遅れなら、補助金も2か月遅れで支払うなど、職員への支払の月は加算と補助金で揃えてください。」

今回の支援補助金は、介護職員処遇改善加算の支払に合わせることが特に重要である。それは、6月から支援補助金が介護職員等処遇改善加算に転換するからだ。加算は、従来の支給サイクルを維持する。支援補助金が異なる支給サイクルであった場合は、数ヶ月の未支給の期間が存在してしまうからだ。処遇改善加算関連が2月遅れでの支給の場合は、支援補助金も2月遅れで支給しなければならないのだ。

3分の2以上を月額支給とする

賃上げ効果の継続に資するよう、4月・5月分の補助額の3分の2以上はベースアップとして、基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げに充てることが受給要件である。毎月支払われる手当では、支給が不安定な、夜勤手当や残業手当、休日出勤手当などは不可である。また、通勤手当や扶養手当、資格手当なども認められない。現実的には、処遇改善手当などの名目での支給が一般的だ。手当の場合、毎月支払われることが要件ではあるが、固定金額である事は求めていない。極端に言うと、月に1円でも支給していれば、毎月支給の要件は満たせる。ただし、結果的に総額で3分の2以上は満たす必要はあるが。また、就業規則(賃金規程)改正に一定の時間を要することを考慮して令和6年2・3月分を一括して3月に一時金としての支給が可能とされている。

3分の1未満を調整部分とする

4月・5月分の3分の2以上をベースアップに宛てることで、残りの3分の1未満の部分は賞与などの一時金で支給が可能である。しかし、補助金全額を毎月のベースアップに宛てることはお勧めしない。理由は、補助金の受給金額は稼働率で左右されるからだ。毎月のベースアップ部分は、感染症などの影響で稼働率が下がっても、減額することは難しく、結果的に事業者の持ち出しとなる。この補助金は、持ち出しでの自己負担を求めてはいない。何らかの理由で、稼働率が下がり補助金額が減額となった場合は、最終的に賞与支給分を減額する事で調整すべきだ。いずれにしても全体で、2月から5月分の4か月間の補助金の合計額を上回る賃金改善を行うことが必要である。

4月初めまでに計画書を提出

介護職員処遇改善支援補助金を受給するためには、処遇改善計画書を提出し、終了後に実績報告を提出する必要がある。提出期限は、Q&Aによって都道府県が適切に決めることとなっている。すでに東京都や大阪府は通知を出していて、その期限は4月前半とされている。現時点では、確定した日付は示されていないようだ。今後、詳細な通知が出されるが、他の都道府県も東京都と同様の対応になると思われる。ただし、異なる場合も想定されるために、こまめに都道府県のホームページをチェックすることが必要だ。また、自治体によっては紙の申請では無く、電子申請での受付となることに注意すべきだ。

6月からは加算で対応

この補助金は2月から5月の4ヶ月間だけの支給である。6月からは、新たに一本化される介護職員等処遇改善加算に含まれる事になった。5月までは補助金で有るため、利用者の負担は無い。6月からは加算になるため、利用者負担が発生する。また、計算方法が変わり、一月当たりの介護報酬総単位数(介護職員処遇改善加算および特定処遇改善加算の金額を差し引いた金額)となる。補助金では、介護職員処遇改善3加算の金額を含めた金額であり、加算では、差し引いた金額となる。そのため、加算率は、補助金より引き上げられている。なお、令和6年5月までは、実質的の処遇改善加算関連が4本存在する事となり、事務負担の増加が懸念される。

介護職員等処遇改善加算

6月からは、現行の介護職員処遇改善3加算が廃止となり、新たに創設される介護職員等処遇改善加算に一本化される。特例として、令和6年度末(令和7年3月)までは、現行の3加算の算定も可能とされているが、圧倒的に新加算の算定が事務負担の軽減に繋がる。ポイントは、「介護現場で働く方々にとって、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを行う。」と記された部分である。この新加算は、2年連続で加算率が引き上げられる予定である。すなわち、2年分の賃上げを補填する加算であるのだ。詳しい算定要件は今後に示される。4区分となって、現行の3加算の算定要件が簡素化されて算定の事務負担が軽減される。算定要件の簡素化という意味では、非常に歓迎すべき改定となっている。しかし、介護職員等処遇改善加算の算定要件である職場環境等要件では、生産性向上のための業務改善の取組を重点的に実施すべき内容に改められている。それは、業務改善委員会の設置、職場の課題分析、5S活動、業務マニュアルの作成、介護記録ソフト、見守りセンサーやインカムの導入、介護助手の活用などである。この新加算については、具体的な算定要件が待たれる。


資料出展:第239回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
【参考資料1】令和6年度介護報酬改定における改定事項について[5.8MB]

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