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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第19回 介護施設における多職種連携によるチーム介護と急がれるICT化

2023/03/10 カテゴリ: LIFE

介護サービスにおける他職種連携

デイサービスにおいて、個別機能訓練加算を算定しようとする場合、機能訓練指導員が個別機能訓練計画を作成するのでは無く、他の職種が連携して計画書を作成することが加算の算定要件とされている。また、3月に一度、モニタリングのために利用者の居宅訪問を実施するとき、この個別機能訓練計画の作成に関わった職員であれば、誰でも訪問を担当出来るとされている。このように、計画の作成や居宅へのモニタリング訪問を多職種が協力して実施することを多職種連携と言う。

介護保険制度に於いて、加算の算定要件の中で多職種連携が求められているものが多数存在する。介護保険の人員基準で、介護サービス毎の専門職の配置が定められている。デイサービスであれば、管理者、生活相談員、機能訓練指導員、看護職員、介護職員などである。この他にも必要に応じて管理栄養士や歯科衛生士などが求められている。また、間接的な職員として、送迎ドライバー、調理員、事務員など多くの職種が配置されている。これらのスタッフが協働してケア計画の策定に関わることで、多くの相乗効果が期待出来る。

多職種連携が求められる加算

多職種連携の実施では、多くの介護事業所では加算の算定要件であるから実施するに留まることが多い。また、多職種連携が算定要件であることを知らずに日常業務を行って、運営指導で指摘されることもあるだろう。介護事業で、意識して多職種連携に取り組んでいることは少ないようだ。多職種連携が求められる加算の一例として、デイサービスを中心に主な加算の算定要件を見てみる。

入浴介助加算Ⅱ(通所介護、通所リハビリテーション)

  • 医師等が利用者の居宅を訪問し、浴室での利用者の動作や浴室の環境を確認する。
  • 機能訓練指導員等が共同して、利用者の居宅を訪問し評価した医師等と連携して利用者の身体の状況や訪問により把握した利用者の居宅の浴室の環境等をふまえた個別入浴計画を作成する。

生活機能向上連携加算(通所介護、訪問介護など)

  • 理学療法士等の助言に基づき、事業所の機能訓練指導員等が共同してアセスメント行い、計画を作成する
  • 3ケ月に1回以上、個別機能訓練計画の進捗状況等について理学療法士等と 共同で評価する。

個別機能訓練加算(デイサービス、特養、特定施設など)

  • 機能訓練指導員等が利用者の居宅を訪問して利用者の居宅での生活状況(起居 動作、ADL、IADL等)を確認した上で計画を作成する。
  • 機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して、利用者ごとの個別機能訓練計画を作成する。
  • 3ケ月に1回以上の頻度で機能訓練指導員等が利用者の居宅を訪問し、利用者の居宅での生活を確認した上で、利用者又は家族に機能訓練の内容、評価や進捗状況を説明する。

栄養アセスメント加算(デイサービス、看護小規模多機能)

  • 管理栄養士等が共同して、利用者ごとの摂食・嚥下機能や食形態にも配慮しつつ、 解決すべき栄養管理上の課題の把握を行う

栄養改善加算(デイサービス、看護小規模多機能)

  • 管理栄養士とその他の職種の者(看護職員、介護職員、生活相談員など)が共同して、利用者ごとの栄養ケア計画を作成し、利用者又は家族の同意を得る。

科学的介護連携推進加算(訪問サービス以外)

  • LIFEへの提出情報及びフィードバック情報等も活用し、多職種が共同して、事業所の特性やサービス提供の在り方について検証を行う。

このようにデイサービス関連の加算一つを取っても、多くの加算に多職種連携が位置づけられていることがわかる。

多職種連携のメリット

ADLの評価指標であるバーセルインデックスを活用して利用者を評価するとした場合を想定する。OT、PT、STなどのリハビリ職だけで評価し、その結果を分析、検討すると、その専門職の視点のみでの解釈となる。介護職員、看護職員、生活相談員、管理栄養士、衛生士など、その利用者に関わる各職種が分析、検討に参加することで、各職種の視点での分析が加えられ、幅の広い解釈が可能となるだろう。同時に各職種の知見が拡がる。結果として、各職種のスキルアップ、レベルアップにつながり、ひいては施設、事業所のケアの質の向上に繋がっていく。LIFE加算では、その算定要件にフィードバック票の情報等も活用して多職種が共同し、事業所の特性やサービス提供の在り方について検証を行うことを求めているのはこのためである。これが多職種連携のメリットであり、目的である。

多職種連携の課題

多職種連携における最大の課題は、介護業界における慢性的な人材不足である。人材の確保が難しく、各職員が一人で何役も熟しているのが現状であろう。このような中で、各職種が集まってカンファレンスを行う時間が確保出来ないという事業所も多い。各加算の算定要件である多職種協働についても、事後報告に近い形で終わっているケースも多く見かける。しかし、それでは各職種の知見が拡がらない。結果として、各職種のスキルアップ、レベルアップにつながり、ひいては施設、事業所のケアの質の向上に繋がるというメリットが活かせないこととなる。コロナ禍に於いては、いかに短時間で効率的に業務を熟すかが改めてクローズアップされた。今、コロナ禍での特例措置であったインターネット会議のシステム利用が、通常で可能とするといった通知の変更が進んでいる。インターネット会議システムを活用することで、対面での会議における無駄話などの無駄が無くなり、時間を有効に使えるようになったとの意見も多くある。今までの対面での会議が、如何に効率が悪かったかの実証である。

今、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがサービス担当者会議を行う場合も、インターネット会議システムでの実施が可能となっている。その場合、諸々の事情で参加出来なかった参加者に対しては、照会して内容を通知し、意見を募ることで参加したと同様の扱いとなる。認定審査会も同様に日常の利用が可能となった。

各加算の算定要件である多職種協働においても同様の扱いが可能である。例えば、グループウェアやLINEなどにグループを作り、その中で検討を加えることで、それぞれの担当者は時間に縛られることなく、自分の都合の良い時間で意見を書き込むことが可能となる。また、他の職種の意見を読むことが出来るので知見が拡がり、各職種のスキルアップ、レベルアップにつながる。

LIFEを契機とした業務改革

LIFEを契機としてICTを導入することで、職員のこれまでの仕事のやり方が大きく変わった施設も多い。新しいノウハウの導入時には職員にも不安になる。この場合、専門職がしっかりとサポートできる体制を組むことが成功要因となる。これから導入する介護施設は、組織風土に定着するまでに、ある程度の時間が掛かるかも知れないが、2、3年後には当たり前として受け入れられるだろう。ICT化は、効率性、生産性を考える上で避けられない道であることの認識が管理者層に必要だ。対面を減らして、どこにいても会議ができるような形にすることも検討すべきだ。研修もYouTubeにビデオを落とし込んで受講させることで、何回も同じ研修をせず日勤夜勤でも、参加しやすくなり、全員に行き届くようになる。LIFEを上手く活用することで、意識して他の専門職と関わることが出来る。必然的に職員間のコミュニケーションの機会が増える。各職種は介護現場でも様々なことを実感しているが、他の専門職からの話を聞くことで刺激となり、介護計画などに反映されることは大きなメリットである。

このようにICT化は時代の流れから避けては通れない道であることは疑いようもない。しかし、同時に、PCウィルスやランサムウェアなどのセキュリティ・リスクが高まっていることを認識して、セキュリティ対策を取らなければならない。パスワードを強固なものに設定したり、アクセス権限を最小の範囲に限定することが重要である。また、定期的なバックアップを実施しすることと、職員への情報セキュリティ研修も実施する。それとともに、メールで情報交換するリスクを避けるために、グループウェアなどを取り入れる介護施設も急増している。コロナ禍によって、価値観が大きく変わった今、多職種連携とICTを組み合わせる事は必須であり、ワンランク上の情報共有が可能となることは間違いない。

ICTやLIFEの活用は業務の標準化から

折角、ICT化を進めているのに、職員の負担が増えているといった事例を見かける。介護ロボットも同様で、多額の経費を掛けて導入した介護ロボットが利用されずに倉庫に眠っている施設を見かける。その原因として、導入時の説明を、管理職が中心として聞いているケースに多い。管理職が代表してレクチャーを受けて、後で一般職員に伝えるなどの対応である。実際に機材を利用するのは現場の職員である。管理職からの又聞きでは十分に伝わらないし、質問があっても出来ないであろう。また、管理職は、常に現場の状況に目を届かせることは不可能で、さらにコロナ禍で感染対策に思考を注がざるを得ない状況が続いている。中々、現場の状況にまで目が届いていない。ICT化が中々定着せず、十分な活用がされていない要因として、介護施設内に業務マニュアルなどが整備されていないことに行き着く事が多い。さらに、導入のレクチャーを受けた担当者の移動や退職等で、後任者に十分な引継ぎがされずに正しい業務手順を把握できない状況に陥るという悪循環である。

この対策として、業務標準化の一環として業務マニュアルの作成することは非常に重要である。施設の各部署で帳票監査を行って問題点をピックアップし、その改善を行うと共に、最終的には業務マニュアルに取りまとめて標準化する。また、可能な限りICT化を実現することも必要だ。ICT化で重要なのは、そのゴールとして職員が楽になり、本来の業務に集中出来ることを伝える事にある。職員は上からの押しつけであると捉えた場合は、それを負担としか感じない。しっかりと職員とコンセンサスを取って、労使の合意の元に進めることが重要である。労働人口が減少し、2040年には介護職員が69万人不足すると予想される中、いち早くICTを導入し、業務を標準化しつつ、多職種協働を進めることの重要視が年々増している。

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