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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第2回 LIFEフィードバック活用が差別化を拡大

2021/11/18 カテゴリ: LIFE

1.トラブル多発の船出

4月から運用が開始された科学的介護情報システム(LIFE)は、初日からシステム障害で運用がストップした。その原因は、想定以上のアクセスが集中したためとされている。システムがパンクするほど、多くの介護施設、事業所がLIFEに取り組んでいることを意味する。その後もトラブルも多く、LIFE鬱という言葉も聞こえている。
しかし、LIFEには将来性を大きく感じることも事実だ。LIFEのデータ提出は、トラブル多発の影響で、特例措置として4月から6月分については8月10日までに提出を認めていた。そのため、7月後半よりデータ入力に掛かり、何とか10日の提出に間に合わせた施設、事業所も多い。
今後の焦点は、7月提出月分までのデータを分析したフィードバックである。今後、フィードバック内容を順次拡充していく予定とアナウンスされている。提供されるデータは、当初はPDF形式のみと言われていたが、Excel形式のデータも選択できるという。それであれば、自分たちでデータ加工できるので活用の幅が拡がる。VISIT,CHASE時代に指摘されていた、データ提供のための手入力の問題は、介護記録ソフトを導入することで自動化された。 介護記録ソフトの導入には、その購入費用と共にタブレットの購入やWi-Fi環境の整備などの設備投資が必要となるが、地域医療介護総合確保基金を活用したICT 導入支援制度を活用できる。購入費用の四分の三を下限として補助されるため、費用負担は大きく軽減される。
今後は、LIFEから提供されるフィードバックデータを如何に有効に活用するかが重要な課題となっている。

2.LIFE委員会を編成すべき

これからは、LIFEのフィードバックの活用次第で、介護施設、事業所間のケアの質の格差が拡大していく。
しかし、フィードバックの分析と活用は容易ではない。特に小規模な事業者には専門職が少ないこともあって困難を極めるだろう。フィードバック基本的な構成は、ADL値などの項目毎に、提出データの時系列での変化をグラフで示される。そこにLIFEの全国平均値が比較対象として提示される。
この漠然としたデータを職員で共有して、その活用を検討する。各部署の専門職が、それぞれの立ち位置でフィードバックされた情報を用いて、その変動要因の分析と今後の対応策を検討することになる。それを上手く機能させるためには、多職種が連携して、利用者の更なる状態の改善に取り組むための「LIFE委員会」の編成と定期的な委員会の開催が必要となる。このLIFE委員会のレベル格差が、将来的に事業者間格差となっていくだろう。
とは言っても、委員会には相当の時間が取られる。実務的には、委員会に参加する前に、各職種の専門分野の観点でフィードバックを分析、検討した上で、LIFE委員会に参加する事となる。LIFE委員会では、各部署での検討に加えて、多職種共同で更なる分析と検討を加えていくことになる。そうした場合、単に現在の日常業務に委員会を乗せてしまうと、業務量が増えて残業も嵩む。現在の業務を見直して、効率化を実現した上でLIFE委員会を編成することになる。その効率化のためには、ICT化の促進や見守りセンサーの導入なども検討すべき時期に来ている。

3.フィードバックの中身

LIFEのフィードバックは、ADL値点数の改善推移などでは、時系列の利用者データを棒グラフで表し、LIFEでの全国平均値が折れ線グラフで表される。
排尿・排便などの施設全体の状況では、全介助・一部介助・見守り・自立の割合を、全体を100とした棒グラフで、時系列の横並びで表し、左側にLIFEでの全国平均値が棒グラフで表される。このグラフを、各専門職の立ち位置で分析して検討委員会に持ち寄る。例えば、4月では全介助が20%、7月が15%、10月が20%とした場合、この変動の原因を探求して改善に繋げていく。また、全国平均値は23%とすると、全国平均より全介助は少ないという結果であることがわかる。
すなわち、LIFEの活用のポイントは、この時系列の推移グラフなのである。 利用者毎、施設毎の時系列の推移の積み重ねが、財産であり、独自のエビデンスとなっていく。このフィードバックを利用者・家族に渡して、改善の成果を確認頂く事も可能であり、リハビリテーション会議での活用も想定される。この時系列データの積み重ね期間が長いほど、他の施設との差別化に繋がるだろし、そのデータ格差は簡単には追い越すことが出来ない。これが、LIFEを早期に活用すべき理由だ。
フィードバックデータをPDCAのマネジメントサイクルの中で有効に活用することで、ケアの質が向上し、成果や結果が伴うことで利用者満足が向上する。利用者満足が向上することで、職員のモチベーションも上がり、職員満足度が向上する。特に、フィードバックによって、その成果が見える化される。職員は、自分のサービスの成果を、データを通しても実感出来ることとなる。職員満足度が上がることで、定着率がアップし、人材募集も容易になるだろう。やはり、LIFEを活用することのメリットは大きいものがある。

出典:居宅・施設系サービスにおけるCHASEを介した科学的介護に資するデータの収集・活用に関する調査研究事業 報告書 三菱総合研究所

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4.データ提供の頻度とその方法

実務面では、LIFEへのデータ提供は、基本的に少なくても3ケ月毎または6ヶ月毎の提供頻度であるが、新規利用者は提供開始月にデータを提出しなければならない。
科学的介護推進体制加算では、サービスの利用終了者は、最終のサービス提供月のデータを提出する。よって、通常の提出月の中間月にデータを提供した場合、6ケ月毎とした場合の次回以降のデータ提出月は、全体の6ケ月サイクルと異なる提出月となる。そのため、毎月、何らかの利用者データを提出することとなる。これでは、実務管理が大変であるし、提出漏れも生じるだろう。この場合、新規で利用開始月もデータ提出した利用者も、通常のサイクルでのデータ提出月に、再度提出することで問題は解決する。データ提供は、少なくても6ケ月毎であるから、何も問題は無い。これを徹底することで、中間月にデータを提出するのは、新規利用者と利用終了者だけとなる。
個別機能訓練加算やリハビリテーション・マネジメント加算は、個別機能訓練計画の新規作成時、変更時で、少なくても3ケ月に一回である。この時、誤解が多いのは、LIFEへのデータ提出の度に、計画も見直さないとならないという思い込みや、ケアプランの見直しの度にLIFEにデーター提供しなければならないという誤った考え方だ。LIFEのデータ提出は、計画書を見直した場合に提出するが、3ケ月の間で見直しが無い場合は、提出月時点での計画書を単に提出すれば良い。データ提出月に計画も見直すだとか、計画の見直しに合わせてデータ提出月を設定するなどは必要無い。
また、LIFEデータベース関連の加算単位は、見た目は決して高くは無い。しかし、この報酬単位は、毎月の算定であることを勘案しなければならない。データ提出の頻度は、多くの加算では、3ケ月毎である。今回の報酬改定で創設された科学的介護推進体制加算は、6ヶ月毎の提出だ。一回に換算すると、40単位×6ヶ月で240単位の加算となっている。これまでは、一回の報酬単位での算定であったものが、月額に変更されたために、一見低い報酬に見えているだけである。
いずれにしても、加算毎に異なるデータ提出をシステム的に管理するためにも、介護記録ソフトを活用してICT化を進めることが重要となる。

5.LIFEへの提出と活用が、今後の加算算定には必須

令和3年度介護報酬改定において、リハビリテーション・機能訓練、口腔ケア、栄養改善に関連する新設の加算のすべてにLIFEデータベースへの提出と活用が算定要件に組み込まれた。新設の加算では算定要件として位置づけられ、既存の加算についても新たな算定区分が設けられた。すなわち、LIFEへの提出と活用が、今後の加算算定には必須となってくる。今後新設される加算はLIFEを活用しないと算定出来なくなる可能性が高い。既存の加算についても次回改定では算定要件に組み込まれる可能性も捨てきれない。現に、既存の加算であるADL維持等加算、褥瘡マネジメント加算、排泄支援加算では算定要件となった。
そして、LIFEというエビデンスが確立することのメリットも大きい。今までは全国標準のエビデンスが無かったために、自分たちの提供する介護サービスの評価が主観的で比較対象が無かったために、その施設、事業所の言い分を受け入れるしか無かった。LIFEが軌道に乗ると、全国標準の比較対象が出来る。それによって介護サービスの評価の標準化が進む事が期待出来る。利用者、家族も優良なサービスを提供する施設、サービスを提供する事業所を選ぶことが出来るし、標準に届かないサービスを提供する施設、事業所は淘汰されていくだろう。

6.自立支援に資する取組が明確にクローズアップされた

リハビリテーション・機能訓練、口腔ケア、栄養改善の自立支援に資する取組が明確にクローズアップされた。それに伴って、OT,PT,STといったセラピスト、管理栄養士、歯科衛生士の役割が明確になっており、特に管理栄養士の役割が大きく拡大された。今回新設された算定要件は、LIFEデータベースに、利用者のリハビリテーション・機能訓練、口腔ケア、栄養改善、認知症などのデータを提供する。その後、LIFEデータベースから提供されるフィードバックデータを活用して、ケアプランやリハビリテーション計画などを見直してケアの質の向上に繋げるPDCDサイクルの活用プロセスを評価する加算である。この加算の算定のための様式は、非常に細かい記載が求められる。今後の実地指導では、その記録等も確認される事となる。
いずれにしても、従来の機能訓練に加えて、口腔ケア、栄養改善、認知症などへの取組も重要となった。しっかりとした医療介護を提供する施設、事業所が評価されていく仕組みとなることが期待される。

7.将来の成功報酬導入の布石

次回の介護報酬改定では、LIFEによって構築された評価指標に基づく、何らかの成功報酬の導入が現実化するのではないか。医療のDPCデーターベースとの連携も行われる予定である。通所リハビリテーションは、今回先送りされた3段階の月額包括報酬体系に移行するのではないか。その時は、評価指標としてLIFEをベースとしたエビデンスが導入されることになるであろう。今回は見送られた訪問サービスや居宅介護支援での活用も、検討が始まっている。LIFEによって新たな時代が幕を開ける、といっても過言ではないだろう。

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