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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第9回【前編】実地指導から運営指導へ、そのチェックポイント。

2022/05/19 カテゴリ: 実地指導

1. 実地指導から運営指導へ移行

2022年度から、実地指導の見直しが行われた。従来の実地指導の名称を、「運営指導」と変更して、①介護サービスの実施状況指導 ②最低基準等運営体制指導 ③報酬請求指導が中核とする。

その実施頻度は、原則、在宅サービスは、指定等の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上実施し、施設サービス・居住系サービスについては、3年に1回以上の頻度とする。この辺りは、現在の実施指導とあまり変わらない。

3年目となるコロナ禍に於いて、地域で感染者が拡大すると指導が延期又は中止となっている。感染者が落ち着いた時点で2時間程度の指導を行い、1日に2件以上の指導を実施するパターンが一般化した。実際に実施指導が予定されていた介護施設が、実施の前日に連絡が入って延期となっている。次回の日程は、文書では無く、電話で通知するとされた。感染が落ち着いたら、即日で指導が実施されることが想定されるため、常に準備をしていなければならない。

2. オンラインによる運営指導の実施

今回の改正では、オンライン会議システム等を活用することが可能である旨を通知に明記するとした。

これによって、ZOOMなどを活用した運営指導が行われることが具体化する。オンライン指導であれば、対面では無いためコロナ禍の感染拡大期でも指導の実施は可能となる。しかし、施設側のICT化、電子データ化の進捗と関連するため、対象となる施設、事業所は限定的だろう。関係書類をPDFなどの電子データで保管していることが前提となり、事業者側で、システム上で書類を共有することでPCのディスプレイを通しての指導が可能になるからだ。

その実現のためには、介護記録ソフトなどによるICT化の普及も課題となってくる。このオンライン会議システム等を活用した運営指導は、すでに地域によっては実施されている。対面での実施と異なって、あまり突っ込まれることは無いと言う。その点では、施設側の心理的な負担は減るかも知れない。

3. 全サービスに標準確認項目と標準確認文書

今回の運営指導への変更は、2019年に発出された「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針」が重要なポイントである。

運用指針のポイントは、通知の中で示された別紙「標準確認項目」及び「標準確認文書」に基づいて実施されることだ。従来は、訪問介護、通所介護、介護老人福祉施設、居宅介護支援事業所、認知症対応型共同生活介護、介護老人保健施設、訪問看護の7種類のサービスのみであったが、3月31日に発出された「介護保険施設等運営指導マニュアル」で全サービスが網羅された。

ここに記載された確認項目と文書以外は、実地指導では見なくても良いとされている。現地での提供記録等の確認は、原則として利用者3名以内となっている。居宅介護支援については、原則として介護支援専門員1人あたり利用者1名~2名の記録等を確認する。確認文書は、原則として実地指導の前年度から直近の1年間である。

なお、この運用指針で示された内容は、指定基準である人員基準、設備基準、運営基準、すなわち厚生省令第37号、第38号、第39号、第40号に関するものである。この指針とは別に、介護報酬に関する確認作業は、従来通りに行われる。そのため、加算などについては、算定要件をしっかりとチェックして遵守する必要がある。

4. 内部監査システムの構築が急務

また、同マニュアルに於いて、自己点検シートと要件シートも提供された。これらを活用して、内部監査体制を強化すべきである。

介護サービスは、規模の利益を追求するのが基本的なビジネスモデルだ。事業規模の拡大に気を取られて、基本的なコンプライアンス対策が後手後手に回っていることも多く見かける。早期に内部監査システムを構築して、運営指導を前提とした定期的なチェック体制を構築することが重要だ。

内部監査システムの構築では、第一段階として、現時点でのコンプライアンスチェックを外部の監査人によって実施し、問題点や監査のポイントを把握する。その現状確認と分析を行った上で、監査マニュアルとチェックリストを作成する。また、内部監査のみだと、どうしても身内意識もあって遠慮も出てくる。よって、年に1回から2回は、外部からの監査チェックを実施することも大切だ。ぜひ、コンプライアンス部門の設置を実施して頂きたい。

5. 有料老人ホーム等の併設事業者は特に注意を

オンライン指導が始まると言っても、重要なチェックポイントは、対面での施設の視察である。

複数の介護サービスが併設されていたり、有料老人ホームなどを持つ法人の場合は特に注意が必要だ。主に職員の兼務状態が問題視される。慢性的な人材不足の中で事業を運営しているために、一人の職員が何役も担当しないとならない。それが、職員の配置状態を曖昧にさせる。

行政側は、介護サービスと有料老人ホームの業務を兼務する場合でも、午前中は介護サービス、午後は高齢者住宅の業務といった明確な区別を求める。しかし、実際の勤務形態は、介護職員と施設職員としての勤務がごった煮状態の場合が多い。

この辺りは、人材不足中で仕方ないという甘えが原因だ。許認可事業である介護サービスは、厳格に人員基準等に準拠した経営が求められる。また、訪問介護事業所は、実際は有料老人ホームの中に実質的な事務所があるケースも多くある。この場合、実態が問われるために、届出以外の場所が実質的な事務所と見なされた場合、行政処分が下されるケースもある。

また、ケアマネジメントプロセスの理解がなく、日常の業務を行っているケースも多いようだ。アセスメントシートが初回のみであったり、サービス提供記録が抜けて居たりである。

6. コロナ禍の特例措置も今一度、再確認を

令和2年度以降は、コロナ禍特例措置などもあって、法令の解釈での複雑さが更に増している。コロナ禍特例措置を使っている場合は、その根拠となる記録が特に重要となるために、再チェックをしておくべきだ。特例はあくまでも特例であって本来の基準では無い。

介護サービスは、規模の利益を追求するのが基本的なビジネスモデルだ。事業規模の拡大に気を取られて、基本的なコンプライアンス対策が後手後手に回っていることも多く見かける。早期に内部監査システムを構築して、運営指導を前提とした定期的なチェック体制を構築することが重要だ。

しかし、特別措置の長期化によって慢性化し、都合の良い解釈や拡大解釈を行って居ないだろうか。受講が義務化されている研修等を、コロナ禍を理由に参加しなかったり、加算の算定要件で必要な定期的な居宅訪問などを行っていないケースが見受けられる。しかし、これらの特例は実施しなくても良いのでは無く、やむを得ない場合にのみ認められることを再認識すべきだ。

この件を指摘されての介護報酬の返還指導が増えている。さらに、介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算の算定要件が毎年のように変わっている。従来とは算定要件が大きく異なるため、今一度の再確認が必要だ。

 

次回は、「標準確認項目」及び「標準確認文書」の主なポイントを解説します。

 

後編こちら:第9回【後編】実地指導から運営指導へ、そのチェックポイント。

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