コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

令和6年度介護報酬改定審議の動向

2023/12/05 カテゴリ: 介護保険法改正

令和6年度の介護報酬改定審議は最終ラウンドに移った。12月中旬のとりまとめまでラストスパートの段階である。今回の介護報酬改定では、メリハリのある改定がキーワードとなっている。単に新たな加算を創設したり、介護報酬単位を引き上げるのでは無く、重要な項目を引き上げるとともに、重要性の薄くなった項目を引き下げることでバランスを取っている。このため、従来通りの加算算定を継続した場合、収入が減少するといったことが起こる。

【ポイント1】定期巡回サービス、小規模多機能型、看護小規模多機能型

10月23日は、定期巡回サービス、小規模多機能型、看護小規模多機能型などが論点に上がった。まず、3つのサービスに共通する「総合マネジメント体制強化加算」が基本報酬に包括される方向が示された。これも介護報酬の簡素化の一環であるが、サービスを提供する事業者側からは、戸惑いの声が上がった。月に1000単位という大きな加算である。過去の包括化の事例を見ても、必ずしも現行の報酬に1000単位が乗ることは無いのだ。実質的に減収に繋がった事例が大部分である。さらに、区分支給限度額から除外されている加算であることだ。その理由は、福祉用具貸与などを併用する利用者に限度超過のリスクがあることにある。今回、基本報酬に包括された場合には除外の特例にはならない。限度超過のリスクが現実化することへの懸念もある。しかし、11月10日に公開された介護事業経営実態調査結果では、驚くべき数字を示していた。定期巡回サービスの収支差率が11.0%と、平均値の4.5倍であったのだ。小規模多機能型、看護小規模多機能型も3.5%〜4.6%と平均を大きく上回っている。これによって、この3サービスの基本報酬を引き下げた上で、総合マネジメント体制強化加算の包括化が行われるのではないかという懸念が表面化した。

その他にも、認知症加算の上位区分を設ける代わりに、現行の加算区分を減額する。上位区分の算定要件を満たせない事業所は減収となる。新区分の報酬を下位区分を減額する事で賄うのだから、トータルでは変わらないという手法である。この手法は、前回の令和3年度改定でも多用された。入浴介助加算などである。しかし、上位区分の算定率が10%に満たない状況で、結局は加算の単位が減額されただけというのが実態である。このように、介護報酬の簡素化、人員基準の緩和という名の下に、加算の基本報酬への包括化と加算単位の減額の方向性が出たことから、令和6年度介護報酬改定は、決して楽観視出来ないことが分かった。

【ポイント2】通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイ

10月26日には、通所介護、通所リハビリテーション、ショートステイなどが議論された。この中で、通所介護の個別機能訓練加算に修正が提案された。機能訓練指導員の人員配置基準の緩和である。区分Ⅰ(ロ)という高い報酬単位の区分では、機能訓練指導員の配置が二名体制であり、かつ、一名は常勤専従で勤務時間のすべてで機能訓練指導員として配置が必要である。しかし、現実的には、勤務時間を通じて機能訓練を実施することは無いとして、機能訓練の時間帯だけの配置に緩和することが示された。しかし同時に、非常勤配置で人件費が下がるという理由で、報酬単位の減額も示された。これも事業所にとっては減収に繋がる。また、人員基準で非常勤となったからと言って、常勤で雇用契約した職員を非常勤として勤務時間を減らすことも出来ずに、その人件費は持ち出しとなるだろう。

通所リハビリテーションでは、入院先の病院から退院後、速やかな利用に結びつけるための施策が盛り込まれた。意見を求める医師に、入院先の医師が追加となり、入院先のリハビリテーション計画書を参考に計画書を作成するなどである。また、大規模減算の縮小が打ち出されて、大規模Ⅰ―Ⅱと通常規模の格差を縮める方向だ。これによって報酬面での大規模化の不利を払拭して、大規模化を推進する方向となる。同時に、小規模の報酬が引下げられることが懸念される。

通所介護、通所リハビリテーション共通の入浴介助加算の区分1の算定要件に、入浴技術研修の実施が加わる方向だ。これは、前回の報酬改定で下げすぎた加算単位の修復が目的と思われる。引き上げるための方便が研修の手間への評価である。従前の50単位に戻ることはないが、3〜5単位のアップは期待出来るだろう。また、入浴介助加算区分2において、利用者の居宅訪問で介護職員の訪問を認める方向が示された。しかし、これはあくまでもカメラマン的な位置づけでの訪問である。居宅の浴室の状況をビデオやTV電話で事業者の医師等に伝えて、医師等が評価する。介護職員の評価は認められない。これで算定率が低い区分2の算定率が上がることは期待出来ないだろう。

また、積雪や大雨などによって道路が渋滞するなどして送迎が遅れて、結果としてサービス提供時間が計画より短くなった場合も、やむを得ないとして当初の計画時間での請求を認めることが示されている。

ショートステイでは、看取り介護加算が創設される。また、長期滞在者の基本報酬を特養並に引き下げる事も示されている。

第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料
【資料1】通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護[3.3MB]

【ポイント3】訪問介護、訪問看護、居宅介護支援

訪問介護においては、特定事業所加算の重度者要件に看取り期の者を加えること。現在、5区部ある特定事業所加算区分を減らす事が示された。また、同一建物減算の強化が打ち出されて、同一建物に居住する利用者の割合などに応じて、段階的な減算を行う。これによって、一定の高齢者住宅の利用者にのみサービスを提供している場合は、一層の減算率となり、収益が減少することとなる。

訪問看護は、専門性の高い看護師が、訪問看護の計画的な管理を行うことを評価する専門管理加算を創設する。緊急時訪問看護では、看護師等以外の職員も利用者家族からの電話に対応出来るとして、看護師等の負担を軽減する。また、24時間体制への取組を一層に評価する区分を設ける。療法士等による訪問看護の規制強化の方向は変わらない。

居宅介護支援事業所は、今回最大の改定となっていく。入院時情報連携加算の要件を、3日以内と7日以内の情報提供から、当日と3日以内に大きく短縮する。通院時情報連携加算の対象に、歯科医師を追加する。ターミナルケアマネジメント加算では、対象となる疾患を限定しないことで算定要件を緩和する。前回の改定で義務化された、前6か月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合などの利用者に対する説明義務を努力義務に改める。これによって、運営基準減算の対象から外れる事になる。特定事業所加算を算定出来ない要件の一つである運営基準減算を、算定出来ない要件から外す。また、毎月のモニタリング訪問については、利用者の同意を得てZOOMなどを活用する場合は、居宅訪問は2月に一回に緩和される。居宅介護支援最大の変更は、逓減制の緩和だろう。基本報酬区分Ⅰの担当件数を制限無く、44件までとする。また、ケアプランデータ連携システムを活用してる場合は、49件までに緩和される。同様に、予防ケアプランのカウントを、従来の二分の一から三分の一に緩和する。この措置によって、居宅介護支援への処遇改善加算の適用は見送られる。そのため、担当件数を増やして、給与を上げるとの見方も出来るため、業務負担とケアの質の担保が問題視されることとなった。さらに、居宅介護支援事業所への同一建物減算の適用も示されて、該当する事業所の収入ダウンが懸念されている。

第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料
【資料5】居宅介護支援・介護予防支援[4.8MB]

【ポイント4】来年2月からの6千円の処遇改善と処遇改善3加算の一本化

月6千円相当の処遇改善は、来年2月から実施される。その実施方法は、現在のベースアップ等支援加算への上乗せという形である。この措置は4ヶ月限定出る。それは、現在の処遇改善3加算が廃止となり、新たな処遇改善加算が創設されるからだ。この場合、現在の加算金額を下回ることはないとした。また、ベースアップ等支援加算の要件である、加算総額の三分の二以上を月給ベースで支給する要件も、配分率を見直して継続の方向だ。報酬区分は4区分程度になりそうである。現在の3加算も経過措置として、1年程度は同時並行で算定継続が可能となる見込だ。また、職場環境要件の内容は見直しとなる。

第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料
【資料6】介護人材の処遇改善等[2.7MB]

【ポイント5】介護老人保健施設

在宅復帰・在宅療養支援機能の強化が行われる。老在宅復帰・在宅療養支援指標の中で、入所前後訪問指導割合及び退所前後訪問指導割合に係る指標の取得状況を踏まえ、基準を引き上げる方向が示された。また、支援相談員の配置割合に係る指標においては、社会福祉士の配置を評価するとされた。特養の生活相談員は社会福祉士資格などを求められており、そのハードルは高い。しかし、老健の支援相談員の資格基準は、有る程度の実務経験程度である。この部分において、社会福祉士資格を求めると言うことは、かなりの意識改革であろう。これらの見直しに合わせて、各類型間における基本報酬において、更に評価の差をつけるとされたことから、下位区分のその他型から基本型の基本報酬が引き下げられ、上位区分の強化型、超強化型の基本報酬が引き上げられる可能性が高まった。

リハビリテーションマネジメント計画書情報加算において新たな加算区分を新設する方向である。短期集中リハビリテーション実施加算については、原則として入所時及び月1回以上の頻度で、ADL等の評価を行った上で、必要に応じてリハビリテーション計画を見直すとともに、その評価結果をLIFEに提出した場合の加算区分を新設する。同時に、既存の区分の報酬単位を引き下げる。認知症短期集中リハビリテーション実施加算では、認知症を有する利用者の居宅を訪問して、生活環境を把握することを要件とする。利用者の居宅を訪問しない場合については、報酬単位を引き下げる。ターミナルケア加算について、死亡日から期間が離れた区分における評価を引き下げ、死亡直前における評価を引き上げることで、安易に病院に移さず、最後まで老健で看取ることを求める。かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)については、現在の算定要件である入所前の主治医と連携して薬剤を評価・調整した場合に加えて、施設において薬剤を評価・調整した場合に報酬を引き上げる。その上で、入所前の主治医と連携して薬剤を評価・調整した場合には、さらに高く報酬を引き上げる。

退所時情報提供加算は、入所者が医療機関へ退所した場合で、生活支援上の留意点等の情報を提供した場合についても新たに評価する。初期加算では、老健の空床情報について、地域医療情報連携ネットワーク等のシステムでの定期的な情報共有や、急性期病床を持つ医療機関の入退院支援部門に対する定期的な情報共有等を行っている場合で、入院日から一定期間内に医療機関を退院した者を受け入れた場合について加算単位を引き上げる方向である。地域連携診療計画情報提供加算及び認知症情報提供加算については、算定率が著しく低いことを踏まえて、廃止の方向である。

第231回社会保障審議会介護給付費分科会資料
【資料2】介護老人保健施設[3.0MB]

【ポイント6】介護老人福祉施設

緊急時等の対応方針の見直しとして、配置医師の対応が困難な場合の緊急対応において、施設・配置医師・協力病院の3者でその役割分担等を協議して、緊急時等対応マニュアルに反映する。その上で、配置医師・協力病院の協力を得て、定期的な見直し(1年に1回程度)を行うことを施設に義務づける。配置医師緊急時対応加算については、配置医師が、日中であっても、通常の勤務時間外に急変等に対応するために駆けつけ対応を行った場合に報酬を引き上げる。透析が必要な入所者の送迎・付き添いでは、定期的かつ継続的な透析を必要とする入所者に、施設職員が月一定回数以上の送迎を行った場合について、新たな加算などを創設する方向である。

【ポイント7】特定施設入居者生活介護

夜間看護体制加算については、「夜勤・宿直の看護職員を配置している」場合と「オンコールで対応している」場合の評価に差を設け、オンコールの場合で報酬を引き下げる。入居継続支援加算は、たんの吸引等の医療的ケアを必要とする者の占める割合の計算に於いて、「膀胱留置カテーテル」「在宅酸素療法」「インスリン投与」についても新たに追加して、看護職員がこれらのケアを行うことを評価する。

【ポイント8】介護施設共通

特養・老健・介護医療院においては、1年間の経過措置を設けた上で、以下の要件を満たす協力医療機関を定めることを義務化する。

  1. ① 入所者の急変時等に、医師又は看護職員が夜間休日を含め相談対応する体制が確保されていること。
  2. ② 診療の求めを受け、夜間休日を含め診療が可能な体制を確保していること。
  3. ③ 該施設での療養を行う患者が緊急時に原則入院できる体制を確保していること。

この場合、複数の協力医療機関を定めることにより①~③を満たすとする方向である。特定施設と認知症グループホームについては、上記の①と②について努力義務とする。また、定期的(年1回以上)に、協力医療機関と緊急時の対応等を確認して、医療機関名等について指定権者(許可権者)に提出することを義務とする方向である。

特養、特定施設、認知症グループホームについては、医療機関へ退所した場合の情報提供にかかる加算を創設する方向である。

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