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コンサルタント小濱道博先生の「経営をサポートするナレッジコラム」

第16回 コロナ禍3年目の介護事業経営

2022/12/02 カテゴリ: 介護保険法改正

日常への回帰が始まった

厚生労働省は、コロナ禍の特例を順次廃止する方向を示している。コロナ禍が始まって、3年が経過して、多くの制度上の特例が設けられた。運営指導での指摘に対しても、コロナ対策を理由に挙げることで何とか乗り切ったという経験をお持ちの事業者も多いのではないか。そのような時間が長期化し、どこまでが通常の基準で、どこが特例措置なのかが分からなくなっているのが現状であろう。そろそろ、そのような時間が終わり、日常への回帰が始まっている。

2020年3月以降の収入が大幅に減少

コロナ禍の問題が表面化した2020年3月以降、実際に多くの介護施設等でも、併設の在宅サービスやショートステイの利用者が激減し、未だに回復していないという声も多い。外部との面会規制の対応をしている介護施設では、家族と面会を巡るトラブルも起きている。家族からしてみれば、社会全体での行動規制がなくなった今、介護施設側の対応が理解できなくなってきている。しかし、第八波への突入が現実化してクラスター件数も急増しているため、おいそれとは面会を自由にすることが出来ないのが現実だ。このあたりが、高齢者を顧客とする介護サービスの特殊性が伺える。制度上の緊急融資などを受けている場合、その返済の開始時期が近づいている。

コンプライアンスリスクの排除が第一となる

コロナ禍対策で重要な点はコンプライアンスの徹底であった。厚生労働省からは、37度5分以上の職員、在宅利用者や家族、搬入業者などは、施設内に入れない旨の通知が出されていた。しかし、施設内ではシャットアウト出来ても、家族感染が中心となった今、コロナゼロ対策は難しくなっている。実際に職員の家族が通う学校で感染者が増えていて、その職員自体は高熱などの症状は無いものの、経過をみるために欠勤させるか否かで大きく揉めた施設もあった。コロナ禍対策での問題は、仮に施設内で感染者が出た場合の責任の所在である。最悪の状況として、施設内で感染死亡者が出たときを想定して、後日の行政監査や裁判沙汰に備えた対抗要件を施設全体でリスク管理しなければならない。その時に重要となるのは、行政通知での指示通りに実施した記録である。すべての関係者に対して、一定以上の熱の有無を確認した記録を日々、確実に記載し続ける事が重要になる。それは、職員の健康確認記録であり、外来者の受付簿であり、在宅サービスの送迎記録などである。職員が高熱や子供の世話を理由とした欠勤での賃金の支給の有無も、就業規則と照らし合わせて確実に対応しなければならない。曖昧な対応では、職員に不信感が生まれる。正しい情報の提供と、その内容を職員に理解させるための噛み砕いた解説も重要である。

人材確保と労働環境の整備の重要性

介護業界は、慢性的と言っても良い深刻な人材不足が続いている。その結果、即戦力を求め、雇用即現場業務というスタンスが一般化した。専門職が大勢を占めているため、職人気質が高く、人の育成には不得手な部分がある。その結果、人が育たずに定着率が低く、人の移動が激しい業界とも言える。しかし、これまでと同じスタンスを繰り返す限り、人は定着しない。コロナ禍が落ち着き、他の産業が復興してきたときには、大量の離職に繋がることも考えられる。コロナ禍での小中高の一斉休校では、保育所などを併設出来ている介護施設が雇用面で強いことが浮き彫りとなった。保育所や職員対象の託児所などの併設は人材確保の意味でも重要な差別化となる。事業規模的に設置が難しい場合も、近郊の施設や事業所と共同で運営するなどの工夫次第で対応出来るであろう。他の産業に人材を採られる前に、介護業界が働く子育て世代にとって働きやすい職場である事をアピールすることも重要となっている。

コロナ禍の直撃を受けた令和3年度介護保険制度改正

コロナ禍が猛威を振るい始めた2020年3月。改正介護保険法、社会福祉法、老人福祉法などを含む改正法案「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律(案)」が通常国会に提出された。しかし、当時の国会はコロナ一色となっており、衆議院本会議で法案が取り上げられたのは、5月12日であった。そして5月26日の衆議院本会議で可決。5月29日より、参議院で審議が開始されたが、わずか一週間程度の審議を経て、6月5日参議院で可決されて成立している。世紀の大事件であるコロナ禍は、介護保険法の審議にも影響を与えたことになる。その結果、多くの論点が、令和6年度改正に先送りされた。介護保険料の負担年齢を40才から30才に引き上げること。居宅介護支援の利用料金の自己負担一割化。自己負担2割の対象を現在の5人に1人の割合から、4人に1人の割合に拡大すること。介護老人保健施設などの多床室料を全額自己負担とすること。訪問介護と通所介護で、要介護1〜2の軽度者を市町村事業に移行すること。これによって2021年度の介護保険法改正は、一気に関心事から外れた印象が強い。

令和3年度介護保険制度改正は、令和6年への布石が詰まっている

介護保険制度改正は、これまでの2025年を見据えたものから2040年を見据えたものに移行した。令和3年度介護保険制度改正は、令和6年への布石が詰まっている。それは、要介護1〜2の軽度者を市町村事業に移行するための住民主体の通いの場の充実策とポイント制によるボランティアスタッフの確保策。8050問題の相談窓口を、地域包括支援センターに委任する、重層的支援体制整備事業の創設。社会福祉法人を中心とした協働化策である、社会福祉連携推進法人の創設。将来の要介護軽度者の総合事業以降を見据えた、総合事業利用の要介護者への拡大。介護施設経営を直撃する補足給付要件の見直しと資産基準の見直し。高額介護サービス費の所得基準への移行などである。先送りのイメージとはほど遠い、多くの先を見据えた改正が盛り込まれた改正であった。先送り項目も廃案になったのではなく、単なる先送りである。すべての論点は、現在行われて居る、令和6年介護保険法改正審議の論点として復活している。そして、その多くが実現する可能性が高まっている。

外出自粛でフレイルリスクが増大した

2014年に日本老年医学会が提唱したフレイルは、「虚弱」を意味して、健康な状態から要介護へ移行する中間の段階を言う。フレイルは身体機能の低下だけでなく、うつ病などの精神面や、認知機能の低下にも影響を及ぼす。コロナ禍の影響で、外出を極端に自粛する高齢者が急増した。筋力の低下によって活動量が減り、疲れやすくなるために更に活動量が減るという、マイナスのスパイラルに入る。動かないために空腹とならず、食事量が減って低栄養状態になる。外部との接触が減ることから、認知症リスクも増える。コロナ禍が終息する頃には、要介護状態となる高齢者の急増が懸念されている。コロナ禍の影響で「通いの場」の活動が自粛されて、高齢者の外出・運動や社会的交流の機会が減少していることを踏まえて、屋外におけるプログラムや通いの場に通うことができない高齢者への訪問型の支援など感染防止に配慮した支援が望まれる。また、この点について、新たなビジネスチャンスが生まれつつある。

出典:第101回社会保障審議会介護保険部会 令和4年11月14日(月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001011997.pdf

ICT化の急激な普及と拡大

コロナ禍によって、社会保障に新たな課題が出てきた。オンライン診療やオンライン面会等の非接触サービス提供を促進するため、介護施設などでのタブレットやWi-Fi等の導入支援を強化するための補助が実施された。コロナ禍で会議の方法が大きく変わった。対面での飛沫感染リスクのため、一般企業の多くが取り入れたテレワークは、介護サービスでは実現性が乏しく、ICT化が遅れる傾向にある。業務の引き継ぎや申し送りは、どうしても口頭での指示が多くなる。しかし、他の事業所との打ち合わせについては、複数人で集まることへの感染リスクもあって実施することが困難になっている。また、利用者の自宅で実施するサービス担当者会議なども同様である。その為、必然としてインターネット会議のシステムを利用する傾向が一気に拡大した。現在、無料で手軽に使えると言うことで、介護サービスの間で使われるインターネット会議システムはZOOMが多いようだ。会議の様子はビデオ収録出来るので、会議禄として記録を残すことも出来る。ZOOMの無料版は、利用時間の制限がある。利用開始後、40分で接続が途切れる。この時間制限によって、会議での無駄話やスタート時間の遅れが無くなり、時間を有効に使えるようになったとの意見も多い。今までの対面での会議が、如何に効率が悪かったかである。コロナ禍の影響で、ICT化の時計が10年進んだ。

出典:厚生労働省事務連絡令和2年5月15 日 高齢者施設等におけるオンラインでの面会の実施について
https://www.mhlw.go.jp/content/000631175.pdf

業務の効率化志向とICTがマッチングした

コロナ禍に於いては、いかに短時間で効率的に業務を熟すかが、改めてクローズアップされた。それは、日常的なケアも、計画書や記録の作成などの間接業務も同様である。紙の記録を、改めてコンピュータに打ち込み直すという二度手間は大きな時間ロスであり、職員の負担でもある。LIFEの普及もあって、介護記録ソフトの伸びが著しい。来年からスタートするケアプランデータ連携システムも同様の効果があり、特にケアマネジャーからの期待が大きい。今まで、3日掛けていた給付管理ソフトへの提供表データ入力が不要となるため、2日ほどの時間短縮になるという。インカムの普及も、対面での会話の機会を減らすと共に、施設内の移動時間の大幅な短縮に繋がる。

出典:第99回社会保障審議会介護保険部会 令和4年10月17日(月)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001001183.pdf

今後の介護事業は、新しい景色を見ることが出来るかがポイント

コロナ禍によって、価値観が激変した。当たり前のことが、当たり前でなくなったのだ。今、一番やってはいけないことは、今までこうだったという固定概念に縛られることである。古い固定概念に縛られること無く、新たな取り組みに対応出来る柔軟な思考が求められている。コロナ禍で明らかになったのは、介護業界は、国が補助金、慰労金、基準の緩和等、あの手この手を屈指して国が守ってくれたことである。これは一般産業では考えられない。廻りを見たときに、今をチャンスと捕らえて事業拡大のための行動に移している経営者が多いことに気づく。新しい可能性の芽は、至る所に出始めている。新しい景色を見ることが出来るかがポイントとなる。攻めの姿勢の経営者は、いつの時代でも強いものである。経営者に求められるのは、守りでは無く攻めの姿勢だ。攻撃は最大の防御だからである

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