小濱介護経営事務所 小濱道博代表の「経営をサポートするナレッジコラム」

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2027年介護保険制度改正への動向

2026/03/16 カテゴリ: 介護保険法改正

2025年12月25日、介護保険部会に於いて2027年介護保険制度改正への意見が取りまとめられた。

ケアプランの有料化と一部老人ホームの登録制移行

かねてより議論されてきた居宅介護支援事業所が作成するケアプランの有料化、すなわち利用者からの自己負担1割の徴収について、ついに一部の類型において導入されることが決定した。対象となるのは、新たに登録制へと移行する一部の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居者である。これらの施設は、要介護3以上の入居者が一定割合を超えている、あるいはパーキンソン病専門やホスピス型といった医療的ケアを重点的に提供している施設が該当する。なぜこれらの施設に限ってケアプランが有料化されるのか。その背景には、介護付き有料老人ホームなどの特定施設との公平性を図るという国の論理がある。特定施設では、基本報酬の中にケアプランの代金が含まれており、利用者は実質的に自己負担を支払っている。それと同じような手厚いサービスを提供している住宅型有料老人ホームの入居者が、ケアプランの作成を全額公費で賄っているのは不公平であるという。対象となる登録型老人ホームの入居者については、ケアプランが1割負担となる。同時に、これらの入居者を担当するケアマネジャーには、ケアプランの作成だけでなく、施設の相談員と連携して生活相談を行うことも義務付けられる。業務負担が増える分、報酬単価は高く設定される見込みであるが、ケアマネジャーにとっては、対象利用者が1人でもいれば新たに毎月の請求業務や集金業務が発生することになる。

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622728.pdf

過剰請求問題への対策と老人ホームへの規制強化

ケアプランの有料化と密接に関わるのが、一部の老人ホームに対する規制の強化である。近年、難病患者や医療的ケアが必要な高齢者を集めた特定の老人ホームにおいて、訪問看護の過剰な請求が行われている問題がメディア等で大きく報じられた。また、施設運営会社の突然の倒産により、入居者が路頭に迷う事件も発生した。こうした事態を重く見た国は、これまでは単なる届出制であった老人ホームの枠組みを見直す。医療的ケアを中心とする施設や、重度者が多い施設については、届出制から厳格な登録制へと移行させる。登録制になるということは、人員基準、設備基準、運営基準といった厳密なルールが設定され、それを満たさなければ事業の運営自体ができなくなることを意味する。さらに、6年ごとの更新制が導入され、定期的な運営指導や行政による監査、財務諸表の提出と公表が義務付けられることとなる。これは実質的に、指定を受けていないだけの介護施設として行政の強い管理下に置かれるということである。加えて、入居者を囲い込む行為への対策も強化される。老人ホームへの入居条件として特定のケアマネジャーへの変更を強制したり、指定のケアマネジャーを利用すれば入居費用を割り引くといった特典を設けたりする行為は全面的に禁止される。ここまでがんじがらめの規制が敷かれるのであれば、いっそのこと特定施設の指定を受けて介護付き有料老人ホームに転換したほうが経営が安定するという見方も広がっており、実際に転換を図る事業者も出てきている。

自己負担2割対象者の拡大と特例措置の導入

介護保険の利用者負担は原則1割であるが、所得に応じて2割や3割の負担が求められている。現在、単身で年金収入が280万円以上の高齢者が2割負担以上の対象となっており、これは利用者全体の約20パーセント、およそ5人に1人の割合に相当する。国は、医療保険の自己負担2割の対象者が全体の約30パーセントであることを理由に、介護保険でも同様に3人に1人を2割負担の対象とするべく、基準の引き下げを検討している。具体的には、現在の年金収入280万円以上という基準を、230万円以上へと一気に50万円も引き下げる案が浮上している。高所得者の負担を増やすのであれば理解も得やすいが、この案はこれまで1割負担であった比較的所得の低い層を直撃する。同じ介護サービスを利用しても、支払う金額が突然2倍に跳ね上がることになるため、深刻なサービス利用の控えが起こることが強く懸念されている。この影響を和らげるため、国はいくつかの特例措置を設ける方向で調整を進めている。第一に、2割負担に引き上げられた際の負担増額分に上限を設けるというものである。例えば、自己負担の増加分を最大7000円までに抑え、それ以上の支払いを求めない仕組みである。第二に、金融資産による判断である。将来の老後資金として2000万円が必要と言われる時代において、いくら年金収入が基準を超えていても、預金残高が700万円以下しかない高齢者については、特例として1割負担に据え置くという救済措置である。預金がない人にまで負担増を強いることは過酷であるという配慮から生まれた案であるが、この特例を導入することで行政側には新たな負担が生じる。通常、6月に確定する住民税の情報をもとに8月から自己負担割合を見直しているが、預金残高の確認作業に時間を要することを考慮し、見直しの時期を8月から10月へと2ヶ月遅らせることも併せて検討されている。これらの自己負担2割拡大の案については、2025年末の段階ではいったん結論が先送りされた。しかし、これは決して白紙になったわけではない。2026年の春に行われる診療報酬の改定で高齢者の医療費負担が増加するため、介護費用の負担増まで同時に行うと国民の反発が強まることを避けたに過ぎない。結論は今年、2026年の年末までに出されることになっており、現在の政治状況を鑑みれば、基準の引き下げが実行される可能性は極めて高いと予想される。

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622728.pdf

介護施設の多床室負担と補足給付の細分化

施設サービスに関しても、利用者の負担を地道に引き上げるような見直しが予定されている。一つ目は、介護老人保健施設や介護医療院における多床室、いわゆる4人部屋などの室料負担の全額自己負担化である。これまで一部の類型においてはすでに自己負担が導入されているが、それ以外の基本型などの老健や医療院についても、室料を利用者に全額負担させるかどうかの議論が行われている。これについても、導入後の影響を1年間検証した上で、今年2026年の年末までに最終的な結論が下される予定である。二つ目は、介護施設に入所した際の食費や居住費といったホテルコストに対する行政からの補助、いわゆる補足給付の見直しである。現在、補足給付は所得に応じて段階が分かれており、第1段階の生活保護受給者から、第4段階の国民年金受給者まで、補足給付が設定されている。このうち、対象者が最も多い第3段階は、年金収入80万円と120万円を境にして2つの区分に分かれているが、次回の改正ではこれをさらに細分化し、4つの区分にする方針が決定している。あえて第3段階だけを細かく分ける意図は、段階の境目にいる対象者から少しでも多くの自己負担を徴収することにあると見られている。

地域間格差への対応と中山間地における制度の柔軟化

深刻な介護人材の不足は、地域によってその現れ方に大きな違いをもたらしている。都市部では事業所同士による限られたヘルパーの激しい奪い合いが起きている一方で、若者の流出が進む過疎地域、いわゆる中山間地では、そもそも事業所で働く人材を確保することが不可能な事態に陥っている。その結果、訪問介護事業所が一つも存在しない自治体が全国で100以上も確認されており、一つしかない自治体を含めると400近くに達している。介護保険料を毎月徴収されながら、いざという時に利用できる介護サービスが存在しないという状況は、保険制度そのものの根幹を揺るがす重大な問題である。この危機的な事態に対応するため、次回の改正では都道府県を都市部、一般、中山間地の3つのエリアに明確に分類し、それぞれの地域事情に合わせた柔軟な制度運用を認めることとした。特に大きな変革となるのが、中山間地に対する人員基準の緩和措置である。これまでは、訪問介護事業所を運営するには最低2.5人の介護職員を配置しなければならず、これを下回ると報酬が3割もカットされる人員基準欠如減算という重いペナルティが課せられていた。しかし、人材がいない地域でこの減算を適用することは、事業所に廃業を宣告するに等しい。そこで中山間地においては、この人員基準を下回った場合でも特例として減算を適用せず、まずはサービス提供の継続を最優先とする方針が打ち出された。さらに、事業所の垣根を越えた職員の相互乗り入れも認められる。例えば、朝夕の忙しい時間帯に訪問介護の職員が足りない場合、日中がメインであるデイサービスの職員が訪問介護を手伝うことが許可される。逆に、日中に訪問介護の職員がデイサービスを手伝うことも可能となる。それでも事業の継続が困難な場合には、周辺の自治体から事業所にサテライト出店を依頼するという第二段階の対策が用意されている。そして、最終手段として、自治体自身が委託事業という形で地域住民などを活用し、介護保険の枠組み外で訪問サービスや通所サービスに類似した独自の事業を展開する。財源は介護保険から拠出されるものの、もはや本来の介護サービスとは呼べない形での提供となる。これは決して一部の限界集落だけの話ではなく、県庁所在地などの主要都市であっても中山間地と同等の扱いを受けるケースが出始めており、一般の市町村もいずれ同じ道をたどることを見越した準備が求められている。

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001622728.pdf

ケアマネジャーの更新講習廃止と新たなオンライン講習の義務化

介護保険制度の要であるケアマネジャーの資格制度についても、抜本的な見直しが行われる。ケアマネジャーの間で長年の負担となってきた、5年ごとに受講しなければならない更新講習制度が、ついに廃止されることが決定した。これまでは、多額の費用と長時間の拘束を伴う更新講習を受けなければ資格が失効してしまう仕組みであったため、現場からは改善を求める声が強く上がっていた。しかし、更新講習が廃止されるからといって、手放しで喜べる状況ではない。更新講習がなくなる代わりに、新たに毎年7時間程度の講習を受講することが義務付けられるからである。実質的には、5年に1度のまとまった講習を、毎年少しずつ分割して受けさせる仕組みへと移行したに過ぎない。毎年受講料が発生し、手続きの手間もかかるため、見方によってはかえって負担が増すという声も少なくない。この毎年の講習は、すべてオンラインで実施されることになっている。オンラインであれば会場に足を運ぶ必要がなく、手軽に受けられると思うかもしれないが、国が想定しているオンライン講習は非常に厳格な管理体制が敷かれたものである。事前にスマートフォンなどで自分の顔をあらゆる角度から撮影してシステムに登録させ、運転免許証などの身分証明書と照合して本人確認を徹底する。そして受講当日は、常にカメラをオンにしておかなければならず、一定時間ごとに顔を動かすよう指示されるなど、人工知能による常時監視が行われる。画面から顔が外れたり、居眠りをしたりしていれば、即座に受講が無効と判定される厳しい仕組みである。従来の会場での講習であれば、後ろの席でこっそり眠っていてもやり過ごせたかもしれないが、これからのオンライン講習ではそのような誤魔化しは一切通用しない。時間や場所の制約は減るものの、受講態度の管理という点においては過去に類を見ないほど厳しい講習制度が始まるのである。

ケアマネジャーの受験資格緩和とシャドーワークの切り離し

ケアマネジャーの大きな問題が、深刻な人材不足と既存のケアマネジャーの高齢化である。制度発足当初は他職種からの参入も多く、多くのケアマネジャーが誕生していたが、後に受験資格が介護福祉士等の国家資格取得後、実務経験5年と厳格化されたことにより、合格者数が激減した。その結果、若い世代のケアマネジャーが育たず、現場では80代になっても後継者がいないために現役を続けざるを得ないケースも発生している。この状況を打開するため、次回の改正では受験資格の緩和措置が講じられる。現在5年とされている介護福祉士等の実務経験要件を3年に短縮し、より早い段階で試験に挑戦できるようにする。さらに、診療放射線技師など新たに医療系の5つの国家資格を受験資格の対象に加えることで、人材の裾野を広げようという試みである。

今後の動向と対策の重要性

ここまで、2027年度介護保険制度改正の主要なポイントについて解説してきた。次回の制度改正は、過去に例を見ないほどの広範囲かつ抜本的な見直しが含まれる大改定となる。訪問介護の市町村移行案こそ一時的に先送りされたものの、ケアプランの有料化に向けた第一歩や、自己負担2割の対象拡大、老人ホームに対する厳格な規制強化など、利用者と事業者の双方に多大な影響を与える決定が次々と下されている2027年4月の改正法が施行されるまでに残された時間は決して長くない。介護事業者は、今年度から始まる報酬改定の議論を毎月のように注視し、最新の情報を的確に捉えながら、激変する制度の荒波を乗り越えるための対策を今すぐに行動に移していく必要がある。

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参考URL

社会保障審議会介護保険部会意見書概要

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